「気になる10代名鑑」の579人目は、弓月さん(18)。東京藝術大学で絵画を専攻し、油絵を制作しています。描くことが自分のアイデンティティだと信じ、小学生のときから藝大の受験を決めていたそう。オリジナルのキャラクターを通して歪んだ愛を表現したいと話す弓月さんに、作品へのこだわりや活動のきっかけについて聞いてみました。
弓月の活動を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れている活動は?
「東京藝術大学で、油絵具で平面作品を制作しています。大学では、いい意味で『変態』的に自分の絵にこだわりをもっている人がたくさんいるんです。それぞれがそれぞれの強みをもっているように、わたしには、わたしだけの愛を魅力的に表現できるという強みがあると思っていて。だから、刺激を受けつつも、まわりに流されず、自分の絵を追求して描き続けることできる。それが大事なんだと思わせてくれる環境なので、毎日が楽しいです。
また『峰内かな子』という、もうひとりの自分の視点から見た、『吉澤くん』というキャラクターをたくさん描いていて、自分の代表作になっているんです」
この投稿をInstagramで見る
Q2. 活動を始めたきっかけはなんですか?
「わたしにとって、絵を描くことは、自分の気持ちを発散する手段でもあったんです。小学生のころは吹奏楽部に入っていたのですが、強豪校だったのもあって練習が厳しくって……。わたしにとって恨みの象徴である針と糸を使った怖い絵をよく描いていましたね。
油絵の道に進もうと決めたのは、小学生のとき、レンピッカ展の帰り道で見たダ・ヴィンチの画集がきっかけです。休みの日には母がよく美術館に連れ出してくれていたのですが、ある日たまたま、その図録の表紙のモナリザの目に息を奪われて。自分と同じ人間がこれを描いたという事実に、思わず嫉妬しました。そのとき初めて、他人の作品に対して感情が動いた気がします。このときの感情がいまでも続いています」
Q3. 創作活動のテーマとなっていることはなんですか?
「誰もが心の中にもっている、“気持ちの悪い純愛”に寄り添える絵を描きたいとずっと思っています。『歪んでいる愛、みんな実はもっているでしょ?』……そうみんなに問いかけてみたいんです。
ピュアできれいで圧倒的な愛というものがいちばん上にありつつも、その下にある嫉妬や恨みのような、本気の恋には必ずついてくる感情は、否定されるべきじゃないし、むしろ愛おしいものだなと思っていて。それを表現することができればなと思っています。
こだわっているのは、赤という色ですね。赤って、勝利や生のエネルギーというプラスなイメージの反面、血や死という暗いイメージももつ、魅惑的な色だなと思っていて。この二面性が自分のテーマともよく合う気がして、よく赤を使っています。自分なりの愛の美学として表現したいので、多用しすぎてグロテスクになりすぎないよう気をつけています」
Q4. これまでに印象的な出来事はありましたか?
「オリジナルキャラクター『吉澤くん』を生み出したときです。
画塾に行っていたころに、自分らしさってなんだろうっていう悩みがあって、それが絵にも表れていたのか、先生にも認めてもらえず、落ち込んでいた時期が続いたことがありました。描きたいテーマも浮かばなかったときに、『吉澤くん』を描いてみようかと思いついて。それが突破口となって、わたしの表現の方向性が定まってきたんです。
『吉澤くん』を描くということは、恋愛のなかで生まれた色々な感情と向き合うことであり、それは幼稚で醜い気持ちを抱えていた過去の自分とも向き合うこと。やっぱり恥ずかしいし、思い出してつらくなることもありますが、それが自分の表現の肝になっているのだなと思います」
この投稿をInstagramで見る
Q5. 今後、やってみたいことは?
「まだ明確に動き出せているわけではないんですが、これからもこのテーマを追求して、画家やアーティストとして活躍したいなと思っています。
まずは展示を行って、自分のテーマと、それから『吉澤くん』をより多くの人に届けたい。将来的には平面だけでなく、さまざまなツールを使って、自分の表現したいことを常に創作する人物になるのが夢です」
この投稿をInstagramで見る
弓月のプロフィール
年齢:18歳
出身:東京都
所属:東京藝術大学 絵画科 油画専攻
趣味:リコーダーで童謡を吹くこと
特技:踊りを踊ること
大切にしている言葉:何も捨てることができない人には何も変えることはできないだろう
弓月のSNS
この投稿をInstagramで見る
★X
藝祭3日間、本当にありがとうございました!
初めての展示でドキドキでしたがあたたかい言葉をかけていただいてとても嬉しかったです。
今後とも、より良い絵を生み出せるよう精進いたします! pic.twitter.com/IUHyafJE2r— 弓月 | yuzuki (@pp71253137) September 5, 2023
Photo:Eri Miura
Text:Chihiro Bandome