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鬼才監督・ヨルゴス・ランティモスの後引くダークな映画5選。ゴールデングローブ賞受賞の最新作『哀れなるものたち』も紹介【映画アクティビストDIZのSCREEN BITE#16】

鬼才監督・ヨルゴス・ランティモスの後引くダークな映画5選。ゴールデングローブ賞受賞の最新作『哀れなるものたち』も紹介【映画アクティビストDIZのSCREEN BITE#16】

「10代のうちにたくさん映画を見て、インプットしておいたほうがいいよ」なんてよく言われるけど、過去作から新作まで、たくさんある作品の中から、どれを選べばいいかわからない……という10代に向けてスタートしたこのシリーズ。

21.3万人のTwitterフォロワーを持ち、「人生を豊かにする映画」を発信している映画アクティビストのDIZさんに、配信で見られる作品について、ひとかじり語ってもらいます。

今回は、観た人に強烈なインパクトを残すギリシャ出身の鬼才監督・ヨルゴス・ランティモスの特集。第91回アカデミー賞で主演女優賞を受賞した『女王陛下のお気に入り』や、「アカデミー賞の最有力候補の一角」と噂され、第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で金獅子賞に、ゴールデングローブ賞では作品賞と主演女優賞に輝いた『哀れなるものたち』などの話題作も続き、映画業界を席巻すること間違いナシの注目監督です。そんな話題作『哀れなるものたち』の公開にあわせて、その異色な世界に触れてみてはいかがでしょう。

一度観たら忘れられない鬼才・ヨルゴス・ランティモスの世界

映画アクティビストのDIZです。今回ご紹介したいのは、映画好きの中でジワジワと人気を博している、ギリシャの鬼才・ヨルゴス・ランティモス監督。突然得体の知れない狂気に放り込まれる緊張感、ぶっ飛んだ感性でこの世界を揶揄する独創的なセンスに、ハマってしまう人が続出しています。

2024年のアカデミー賞を賑わせるであろうエマ・ストーン主演の最新作『哀れなるものたち』も2024年1月に公開が控えていることもあり、「新たな映画の扉を開いてみたい!」というチャレンジャーな人に、強くオススメしたい作品をご紹介します。

籠の中の乙女

『籠の中の乙女』
デジタル配信中
DVD発売中¥4,180
発売元:彩プロ 販売元:TCエンタテインメント
© 2009 BOO PRODUCTIONS GREEK FILM CENTER YORGOS LANTHIMOS HORSEFLY PRODUCTIONS –
© XXIV All rights reserved

まずは、初めてヨルゴス・ランティモス監督の名を世界に知らしめた2009年の作品『籠の中の乙女』です。一見すると、ありきたりな家庭のほんわかドラマかと思いきや、観ているとジワジワとこの家族の異様さに気づいていくことでしょう。

この家族の子どもたちは、成人していても家の敷地外に出ることを許されず、ずっと壁の中で暮らしています。家族の絆を誰にも壊されたくない父親に、外の世界は危険だと教えられ育った子どもたち。何も知らずに成長していくが、次第に好奇心が芽生え、外の世界に惹かれていき、幸福だった家庭は、次第と崩壊の道へ……。

そこかしこに散りばめられた狂気がつながっていく緊張感。そして、絶対にそうなってほしくないラストへ、どんどんと突き進んでいく絶望感。「どの家族にも、それぞれのルールがある」と語る監督がつくった“胸糞家族ドラマ”から、まずはチャレンジしてみてはどうでしょう。

ロブスター

©︎2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

独身というだけで逮捕され、謎のホテルに収監される。そこでパートナー探しを強いられ、45日以内にパートナーを見つけなければ動物に変えられ、あとは人間に狩られる運命を辿るしかない……。そんな異様な近未来を舞台にしたSF映画です。

パートナーを見つけられず、独身者たちが集う恋愛禁止の森に逃げ出す主人公が出会ったのは、ずっと求めていた運命の人だったのです。どこへ行ってもルールに縛られる閉塞感に絶望する、そんな息苦しすぎる婚活サバイバル映画。恋愛していないと肩身が狭かったり、常に誰かといることを強要される社会への痛烈な皮肉が効いており、わたしは今作で、ランティモスワールドに一気に惚れ込みました。

極端すぎる奇想天外な設定だからこそ、現実世界を生きるわたしたちへの破壊的なメッセージ性が凄まじい。観る前と後では、これまでの価値観が変わってしまうような体験こそ、まさしく彼の作品の醍醐味だと思います!

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

©2017 EP Sacred Deer Limited, Channel Four Television Corporation, New Sparta Films Limited

次は、生まれて初めて映画館を途中で退出しようかと思ったほどのトラウマ映画をご紹介します。すべてのシーンが計算しつくされた絵画のように美しいのに、得体のしれない謎の恐怖に怯え震え続ける、地獄のような作品です。

美しい妻と健康な子どもたちとともに、豪邸で何不自由なく暮らす心臓外科医のスティーブン。医療ミスで殺してしまった元患者の息子を家に招き入れたことから、子どもたちが原因不明で歩行困難になるなど、不吉なことが次々と起こり始め、平和な暮らしが軋み出します。

幽霊や怪物のホラー映画の恐ろしさとはまったく違う、胃がよじれるほどの恐怖と狂気に打ちのめされたい……そんな人にオススメしたい、ランティモス監督にしかつくれないホラー映画。奇妙なカメラワーク、究極の選択に迫られた人間の心理、不穏な音楽。そのすべてがあなたを不安にさせ、地獄へと導くかもしれません。

女王陛下のお気に入り

© 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

第91回アカデミー賞で最多10ノミネート、そして主演女優賞を受賞し、世界的にその才能が認められた『女王陛下のお気に入り』。豪華絢爛な王室で、オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズというオスカー俳優たちが本気でぶつかり合い、権力と嫉妬が渦巻く女同士の三角関係を描く愛憎劇です。ランティモス作品の中では最も観やすい作品ですが、史実をもとにしつつ、自由でぶっ飛んだ解釈で、最後まで目が離せません。

特に、権力のためなら何でもする、召使いのアビゲイルを演じたエマ・ストーンに注目! これまでの印象をガラッと変え、さらに高みへと成長しており、ランティモス作品の特徴である人間の本性と歪みを浮き彫りにする物語の中でひときわ輝いています。次回作『哀れなるものたち』では主演に抜擢されているので、いま改めてチェックしておきたい映画です。

哀れなるものたち

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2024年1月26日(金)全国公開

2024年1月26日公開の最新作『哀れなるものたち』は、エマ・ストーンが主演だけでなく、プロデューサーも務めている、いまもっとも注目した作品です。すでに、今年の第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞を受賞しています。

主人公ベラは、不幸のあまり自ら命を絶ちますが、天才外科医に遺体を拾われ、自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生。外見は大人、中身は赤ちゃんになったベラは、驚異的な成長を遂げて、飽くなき世界への探究心を深めて、外へと飛び出していきます。ベラの視点を通して、あらゆる偏見や常識を超えて世界を学んでいく物語は、わたしの中で早くも『2024年ベスト級』といえるほど、驚きと感動をくれました。

世界でも「ヨルゴス・ランティモス監督の最高傑作」と評され、これまでの作品よりも壮麗で、観たことのない世界が、あなたの感性を拡大させること間違いなし。来年のアカデミー賞はこの作品なくして語れないでしょう。

この冬はランティモス沼に溺れてみては…?

監督で選ぶ、というのも、運命の映画との出会い方のひとつ。ヨルゴス・ランティモス監督作は、独創的すぎる設定と強烈なメッセージ性、絵画のように美しい構図と色彩、そして奇妙で狂気的なストーリーの、絶妙なバランスが唯一無二の世界観を紡ぎ出していて、一度観たら沼にハマること間違いナシでしょう。そして、観終わった後はみんなで語り合いたくなる、余韻の深い作品ばかりです。

映画好きを虜にする鬼才の世界に、少しでも興味をもっていただけたらうれしいです。

DIZのプロフィール

映画アクティビスト。ひとりでも多くの人に映画の素晴らしさを伝えるために、フリーランスで活動している。体験型の映画イベントを主催したり、配信サービスのSNS企画・編集やコピーライティング、さまざまな作品の評論を寄稿したりと、枠にとらわれずに活動している。
Twitter:@DIZfilms Instagram:@diz2049

Text:DIZ

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