世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日はアフリカ大陸で最もアルコール摂取量が多い国、ウガンダの現状をお伝えします。
ウガンダに見られるのは、豊かさではなく貧しさによるアルコールの大量摂取
筆者が以前、ウガンダを訪れたときに驚いたのは、多くの人が、昼間から夜まで、ずっとアルコールを飲み続けていて、中には路上に寝転んでいたり、明らかにアルコール中毒らしき人がたくさんいたということ。
実際、調査データを見ても、世界のアルコール摂取量の平均は年間約6リットルですが、ウガンダでは約12リットル、特に男性においては約20リットルと非常に多くなっています。わたしたちの一般的な感覚では、お酒というのは、嗜好品として、ある程度の経済的な余裕のうえに楽しまれていますが、ウガンダをはじめとしたアフリカの多くの国においては、貧困地域でのアルコール依存症が問題となっているのです。
実際に、世界保健機関(WHO)によれば、貧困層は裕福な人々よりもアルコールの健康被害や社会的被害が大きいとされています。
アルコール依存の背景にあるさまざまな社会問題
12-18歳の若者を対象にウガンダで行われた調査では、アルコール摂取者の多くは、社会的または健康的に弱い立場にあることがわかりました。この調査では、HIV陽性の若者の半数が既にアルコールを摂取していることが判明しており、貧困状態で、ストレスの多い環境にいることが、若者のアルコール摂取につながっているのです。
また、孤児が多いことも、飲酒の割合の高くなる原因だと指摘されています。孤児というは、当然、親や家族の監視が不足するため、低年齢でもアルコールにアクセスしやすいのです。
また、アルコール中毒者の多くが、セックスワークへの従事者であったり、虐待の被害者や、精神病をもつ人であることも明らかになりました。実際にウガンダの保健省によると、同国の精神患者の約10%がアルコール中毒者であると報告されています。
誰もが手に入れられる密造酒
社会的に弱い立場にいる人がアルコール依存に陥りやすい要因には、「密造酒」の存在があります。密造酒とは、不法に製造されたアルコール飲料で、ウガンダでは多くの家庭や村で製造されています。不法に製造しているため、課税を逃れ、そのぶん安く販売されています。そして、未成年者やアルコール摂取を避けるべきである妊婦や運転手なども、障壁なく購入できてしまうことが問題になっています。
ウガンダで多くの人がアルコール依存症になった原因には、低所得層をターゲットに販売されていた、25ml程度の蒸留酒が挙げられます。アルコール度数40-45%の強いお酒であるにもかかわらず、わずか10-30円と、非常に安価で販売されていました。
しかし、あまりにも手ごろに入手できることから、2019年に販売が禁止されました。ウガンダ議会はアルコールの販売と管理に関して法的な枠組みの強化を進めていますが、規制をかいくぐった別のアルコールの製造が生まれるだけで、状況は依然として変わっていません。
密造酒をつくるしか、生きていく道がない
密造酒を製造する人の多くも、貧困に苦しんでいると考えられています。多くの密造酒は、政府の監視が行き届きにくい村やスラムの一角で製造されており、その地域の唯一の現金収入であることがほとんどです。密造酒の多くは、バナナやキャッサバから製造されており、農家が農業よりも多くの現金を得られる方法として密造酒の製造を行っています。また、密造酒の製造は、少ない資金で行えることから、貧困層の人でも簡単に始められるビジネスなのです。
アフリカでアルコール依存症が生まやすい構造にも対策を
国連保健機関によると、世界中で年間約300万人が、アルコールが原因で死亡しており、この数は世界全体の死者数の5.3%に相当します。ウガンダの路上ではアルコールによって倒れている人や依存症の人を毎日のように見かけますが、特に有効な対策はとっておらず、アルコールをめぐる問題は深刻化していくのみです。
政府がアルコールに関する規制を徹底していくとともに、世界全体としても、アフリカにおけるアルコール依存の背景にあるさまざまな社会問題に、対処していく必要があるでしょう。
Reference:
「2023年世界保健統計:SDGs、持続可能な開発目標に向けた健康のモニタリング」
SPRINGER LINK「The Intersection of Alcohol Use, Gender Based Violence and HIV: Empirical Findings among Disadvantaged Service-Seeking Youth in Kampala, Uganda」
New Vision「Uganda tops Africa in alcohol consumption – WHO report」
Text:Hao Kanayama