世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、ウガンダが古着の輸入禁止計画を発表したというニュースについてご紹介します。
30円で売買されるあなたの古着
東アフリカには、欧米諸国や中国、そして日本から、膨大な量の古着が送られており、特にウガンダの古着市場は、その中でも巨大なビジネスを生んでいます。ウガンダ最大のマーケット、オウィノマーケットでは、こういった洋服が30円から販売されており、安い服を求めて買い物する客と古着業者であふれかえっています。
一方で、安価に販売される服には、「寄付された服」も多く混ざっています。あまりにも大量の服が寄付されるため、貰い手が見つからず、市場に回って売買の対象になっているのです。実際に、サハラ以南のアフリカでは、寄付された洋服の3分の1が、新たに販売されているといわれています。
ウガンダで販売されている古着の多くには、ほつれや穴があり、それらがいかに「いらなくなった服」であるかに気づかされます。以前は、アフリカのファッションというと、「キテンゲ」と言われるカラフルな布を購入して、テイラーに仕立ててもらうオーダーメイドが主流でしたが、古着の産業の発展に伴い、50分の1ほどの安価で購入できる古着を好む人が増えています。
古着の輸入を禁止した本当の理由
こういった安価な古着が出回ることによって、地元の繊維産業は苦しい状況に置かれています。そんな声に応えるように、ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領は、9月1日より東アフリカ諸国への古着の輸入を禁止しました。表向きは「地元繊維産業の発展のため」という理由からですが、ウガンダ人のファッションデザイナーによると、輸入の禁止には別の背景もあるといいます。
ウガンダではインド人が経営する繊維工場が多く存在します。ウガンダにおけるインド人の歴史は長く、多くはイギリス植民地期に、同じく旧イギリス領であったインドや南アジアの人々が、労働者や商人としてアフリカに送り込まれたことから始まります。
彼らは現在に至るまで、繊維だけでなく、多様なビジネスをおこない、ウガンダでも建設会社や食品工場などを経営しており、その経済的な影響力は、政府としても無視できないほどのものなのです。純粋に「地元繊維産業の発展」という言葉の背景には、こうしたインド人周辺の経済的、政治的な状況が、今回の決定に影響しているという見方もあるのです。
未来に向けてどう動く?
「最低賃金」や「労働環境」に関する法律が機能していない中で、地元の繊維産業の発展は可能なのでしょうか。確かにアフリカでは労働力のコストが抑えられるため、生産現場としては競争力は高いですが、一方で人権という視点から見ると、日給100円といった超低賃金で長時間労働せざるを得ない労働者が多く生まれてしまうことは容易に想像できます。はたして、今回の古着の輸入禁止は、ウガンダの繊維産業の発展に貢献するのでしょうか。今後もその動向を注視する必要がありそうです。
また日本でも、アフリカに衣類を寄付するキャンペーンをよく目にしますが、それは本当にアフリカの人々の役に立つアクションなのでしょうか。実際、大量の古着が流れ込むアフリカは、先進国の人々が着なくなったファストファッションの墓場となっているという側面があり、現地でも大量の洋服が処分されています。さらに上述したように、地元の産業も破壊しています。
「アフリカに住む貧しい人を助けたい」という善意からの行動であっても、それが本当に役に立っているのか、贈った先でどのようになっているかを調べたり、関心をもったりする必要があるのではないでしょうか。
Reference:
BOF「Op-Ed | The Trouble with Second-Hand Clothes」
Photo&Text:Hao Kanayama