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ヤングケアラーとしての経験をもとに、誰もが必要な情報にアクセスできる情報プラットフォームの制作を構想【Kaito Nanko・19歳】

ヤングケアラーとしての経験をもとに、誰もが必要な情報にアクセスできる情報プラットフォームの制作を構想【Kaito Nanko・19歳】

「気になる10代名鑑」の544人目は、Kaito Nankoさん(19)。ヤングケアラーとして生活した経験がきっかけとなり、必要な情報を届けるための情報プラットフォーム作成に取り組んでいます。「Keep Going」をモットーに、社会活動に邁進するKaitoさんの、活動の原動力や今後の展望について聞いてみました。

Kaito Nankoの活動を知る5つの質問

Q1. いま力を入れている活動は?

大学でまちづくりと福祉の両軸からウェルビーイングについて学びながら、あらゆる生活課題への社会資源に関する情報不足の解消のために、情報プラットフォーム『Infora』の開設をめざして活動しています。いま制作しているプラットフォームでは、コミュニティ紹介、テクノロジー、体験談など、日常生活に役立ち、人々を支えるさまざまな情報を提供することを考えています。

大学入学を期に東京に来たのですが、福祉やケアに携わる方や団体とのつながりも大きく広がりました。そういった方々と意見交換をしながら、自分なりにウェルビーイングなどについて発信しています」

Q2. 活動を始めたきっかけは?

「小学5年生のとき、母がALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症したんです。ALSは、全身の筋肉が徐々に動かなくなる病気で、いまはALS患者向けに、目の動きでコンピューターを動かしてコミュニケーションが取れるテクノロジーが発明されて、進歩し続けているんです。でも当時は、どの機関でもテクノロジーに関する情報提供がほとんどなく、そういった情報が入ってこなくて……。それを知ったときには、母の眼球の筋力は残ってはおらず、使えるはずだったものが使えないという悔しい体験をしたのが、『Infora』をつくるきっかけです。

それに以前は、母の介護の大変さから目を背けたいという気持ちもあったんですが、いまでは、母に何か還元するために頑張りたいというモチベーションで、課外活動をしています」

Q3. これまでの活動の中で、影響を受けたものは?

小山宙哉さんのマンガ作品『宇宙兄弟』です。高校生のときに担任の先生からすすめてもらって読みました。自分の夢や目標を見失いそうになったときに、諦めない気持ちを奮い立たせてくれる、そんな希望の物語に、元気をもらっています。

作品の中には、母と同じALS患者も登場するんです。ALSと向き合うキャラクターや、その周囲で何かできることはないかと支える人たちに、自分を重ね合わせて、自分ももっと頑張らなきゃなと思わせてくれるんです。

ちなみにALS研究の促進のために、キャラクターの名前を使った『せりか基金』が立ち上がるなど、社会にも影響を与えている作品でもあるんです

Q4. 活動のなかで、印象的な出会いはありますか?

ALS患者であり、活動家の武藤将胤さんの生き方に出会ったことは大きいです。闘病しながら『一般社団法人WITH ALS』を立ち上げ、かつ当事者として、ALSについて理解を広める活動やリソースの開発にも取り組まれている方なんです。体は動かなくなっていくけれど、自分にできること、自分だからこそできることに取り組み続け、できないことは新たな方法でできるようにし、それまでに存在していなかった選択肢までをも創っていく……。困難の中にも、未来を描き、可能性を信じて、絶対に諦めない姿勢を尊敬しています。

それから、世界の 190か国以上から次世代の若者が集まる『One Young World Summit』つながりで出会った、パラオで環境活動をしているクリスティン・ウドゥイさんに、『Keep Going』という言葉を何度もかけていただいたことも印象に残っています。

道筋を他の人にもしっかり納得いくように説明して、協力してもらって、ひとつの事業にするということは本当に大変で。自分の考えをうまく言語化できなくて立ち行かなくなったときに、武藤さんの姿勢や、ウドゥイさんの言葉を思い出して、とりあえず止まらず動き続けてみることで道が見えてきたということが何度もありました」

Q5. 今後の展望は?

まずは『Infora』をしっかり形にしたいです。誰もが自分が必要としている情報や社会資源にたどりつける社会を実現させたい。個人で進めるには限界があるので、ゆくゆくはこの事業を組織化して、進めていければと思っています。

その先のビジョンとして、どんな状況にいても、誰もが希望や感動、夢や生きがいといったその人なりの『心の煌めき』をもって生きていくことができる社会を実現させたいです」

Kaito Nankoのプロフィール

年齢:19歳
出身地:兵庫県宍粟市
所属:法政大学現代福祉学部福祉コミュニティ学科、Infora、ホーセーイノベーションクラブ、一般社団法人Sustainable Innovation Lab、一般社団法人アンカー、#SASS2023「大学生による中高生のためのSDGs / サスティナビリティアワード」、nest
趣味:読書、映画鑑賞、音楽鑑賞
特技:人を巻き込むこと
大切にしている言葉:​​​​Light Up

Kaito NankoのSNS

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★Twitter

Photo:Eri Miura
Text:Chihiro Bandome

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Chihiro Bandome

ライター

2003年生まれ、埼玉県出身。上智大学文学部新聞学科在学。自分の目で現場を見て、自分の言葉で人と話して、世界を知っていきたい。大学では、主にニュース記事の執筆を学んでいる。2023年より、ライターとして「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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