Steenz Breaking News

カキの殻が建物内の温度上昇を防ぐ。殻のごみ削減にもつながる「Cool Roof France」の白い塗料【Steenz Breaking News】

カキの殻が建物内の温度上昇を防ぐ。殻のごみ削減にもつながる「Cool Roof France」の白い塗料【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、室内の気温上昇を防ぐために、世界で行われているさまざまな取り組みについてご紹介します。

世界中で猛威を振るう気候変動。ヨーロッパでは熱波による影響も

近年は、気候変動が原因とみられる異常気象が頻発しています。2023年4月に世界気象機関(WMO)が公開した『2022年 地球気候の現状に関するWMO報告書』によると、干ばつや洪水、熱波が世界的に影響を与えており、それによる損失額も増加傾向にあるとのこと。

なかでもヨーロッパは、2022年の夏期に、これまで経験したことのないほどの熱波に襲われました。猛暑が原因の死亡者数も例年より増加し、超過死者数は、スペインやドイツ、イギリス、フランス、ポルトガルを合わせて、15,000人を超えています。一部の地域では、高温だけではなく、異常な空気の乾燥も感じられたそうです。

この熱波による被害は2023年も続いており、ヨーロッパ各地で40℃以上を観測。暑さが原因で、体調が悪くなって担架で運ばれる人や気絶する人も出ています。まさに生死にも関わる、熱波による気温上昇。この影響を和らげるために、フランスではとある海洋生物の殻が注目されています。

フランスでカキの殻を使った塗料が建物内の温度を下げると話題に

フランスの商業施設や工業用建築物の屋根は、暗めの色で塗られていることが多く、そのために熱が籠りやすく、室内の気温上昇に悩まされてきました。この悩みを解決へと導いたのが、「Cool Roof France(以下:CRF)」が開発した、白色の塗料です。

 

この投稿をInstagramで見る

 

James Stewart(@james_stew)がシェアした投稿


実はこの塗料の原料の一部は、廃棄されたカキの殻。フランスでは年間13万トンのカキ殻が廃棄されています。CRFはその問題に注目し、通常の塗料に含まれているカルシウムの替わりに、廃棄されたカキの殻の外側を混ぜることを思いついたのです。

この白色の塗料を塗ることによって、太陽の光を90%反射し、建物内の温度を、なんと6℃も下げることが可能に。エアコンの使用量を減らすことにもつながり、エネルギー消費の削減にもなります。またCRFは、利益の10%を、暑さに苦しむ地域の人々を助けるためのプロジェクト資金として使用しています。

インドの学校では伝統的な建築技術によって室内の気温上昇を防ぐ

室内の気温上昇を防ぐ工夫はインドでも。タール砂漠に位置する「ジャイサルメール」は、真夏になると、気温が約50度にも達する過酷な地域として知られています。そのため建築物には、古くから暑さを和らげる工夫が施されてきました。

「ラジクマリ・ラトナヴァティ女子校」も、そのうちのひとつです。


この学校は、貧困層出身の女性と少女の識字率向上や生きる力を養うために、アメリカの建築家によって設計されました。建設には、ジャイサルメールの伝統的な建築技術や材料が多数使われています。

例えば、校舎を建設する材料として選ばれた砂岩は、地元の職人によって手切りされ、町のほかの建物にも使われているもの。外からの熱を遮断してくれるため、暑い地域には最適な素材です。その他にも、天井を高くして窓を設置することによって、熱を放出しやすくし、内壁には日本でも馴染みの深い「漆喰」が塗られています。こうした工夫によって、室内の温度を、屋外よりも11℃から17℃ほど低くできるそうです。

世界中で問題になっている、気温上昇や異常気象。それに対して、伝統的なものから近代的なものまで、さまざまな技術を使って改善しようと努力しています。このような取り組みは、今後ますます増えていくでしょう。しかし一方で、「技術が発展していくから、何もしなくてよい」と思うのではなく、「問題解決のために、わたしたちにも、少しずつでもできることはないか」と考えることも忘れないようにしたいですね。

Reference:
A Conversation with the New York Architect- Diana Kellogg, Who’s Designed an Oval-Shaped Sandstone Girl’s School Amid the Thar Desert|SURFACES REPORTER
Meet the company using discarded oyster shells to cut energy costs and keep France’s buildings cool|euronews
8月下旬になっても暑い北半球欧米も熱波で記録的高温に|ウェザーニュース
世界気象機関(WMO)年次報告書:気候変動は進行し続けている(2023年4月21日付 WMO プレスリリース・日本語訳)|国際連合広報センター

Text:Yuki Tsuruda

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

View More