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福島産の桃がタイで人気!日本産フルーツのタイ向け輸出拡大の背景とは【Steenz Breaking News】

福島産の桃がタイで人気!日本産フルーツのタイ向け輸出拡大の背景とは【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、日本産フルーツのタイ向け輸出が拡大している理由についてご紹介します。

タイへのリンゴ輸出が7年で約3倍に

リンゴ、イチゴ、桃。タイでは近年、日本産のフルーツの人気が高まっており、日本からタイへの輸出量が増加しています。財務省貿易統計によると、2022年における日本からタイへのリンゴの輸出量は912トン。2015年の329トンから、わずか7年で2.8倍になりました。他にも、イチゴは6トンから98トン、桃は5トンから30トンへと、軒並み増加しています。首都バンコクのスーパーなどで日本産果物が売られている様子も、頻繁に見かけるようになりました。

なぜタイ向けに、日本産果物の輸出が増加しているのでしょうか。2015年から日本産果物をタイで輸入している、バンコクフードシステム社長の氏家勇祐さんに話を聞いてみました。

桃が1個2,000円だった過去

タイで日本産果物の人気が高まっている理由として、タイの経済発展に伴う購買力の拡大や、日本からタイへの流通網の発達に加え、手ごろな価格で日本産果物を購入できるようになったことが挙げられます。

日本産果物は安全性やそのおいしさから、特に日本旅行の経験があるタイ人の間で以前から人気がありました。しかし、普及のネックになっていたのが価格です。

氏家さんは「日本からアジア諸国に販売するにあたり、船での輸送はコストは抑えられますが、輸送に何週間もかかるので、新鮮な果物が届けられませんでした。空輸はコストが高く、さらに農家さんから複数の中間業者を通す必要があるため、海外の店頭に届くころには、桃1個が2,000円程になってしまうのです」と説明します。

こうした状況を受け、流通業者は価格を下げるためにコストの見直しを進めていきました。

例えば氏家さんが経営するバンコクフードシステムは、窒素ガスなどを充填させた「CAコンテナ」を使って、果物の輸送を試みています。このコンテナは、温度だけでなく、酸素と二酸化炭素濃度を調整し、青果物の貯蔵期間を延長させることができます。 これによって時間のかかる海上輸送でも、果物の鮮度を保持することができるようになったのです。同時に、コストも空輸の10分の1程度に抑えられます。

このCAコンテナで、試験的に日本産の柿をタイに輸送したところ、それまで1個あたり800円したものを、280円に値を下げることができました。その結果、2週間分の在庫が、わずか1日で完売してしまったそうです。

福島産の桃のPR動画が280万回超再生

タイでは、桃も人気がある日本産果物のひとつです。市場に出回るその多くを福島産が占めています。福島県によると、昨シーズンの日本からタイに輸出された桃の全体のうち、福島の桃が約7割を占めました。

その理由として氏家さんは、「原発事故の後、風評被害により福島県産品の国内消費量が落ち込んでいた中、タイが比較的早く福島県産品の安全性を認め、規制を緩和したのです。弊社のバンコクフードシステムでも、タイの小売店で福島県産品を販売・拡販することで復興のお手伝いができないかという想いのもと、2016年より弊社が窓口となり、福島県との取り組みがスタートしました」と話します。

まずは、タイの日系量販店や現地資本のスーパー、タイ人をターゲットとした日本産食品のECサイトなどで販売を開始しました。福島県の内堀雅雄知事も、バンコクを訪れてトップセールスをするなど、PRを強化していきました。

今年8月には、タイの「母の日」に向けた、販売プロモーションを実施。店頭では「母の日特別セット」が用意され、来店促進策として、県産桃の魅力をPRする動画を制作し、SNSで配信したところ、280万回以上(2023年9月21日時点)再生されるなど、多くの注目を集めたそうです。

「ドンキ」を通じた販売拡大も

一方で、タイの果物の主要な輸入先は中国で、オーストラリアや韓国などからも、多くの果物を輸入しています。今後、こうした国々と日本が競争するためには、どういった対応が求められているのでしょうか。

日本貿易振興機構(JETRO)が2022年7月に発表した報告書の中で、日本産果物の販促に向けて、「タイの消費者はブランド志向が強いので、消費者にブランドを認知してもらうことが非常に重要である」「日本の食品・飲料はタイで既に人気があるため、そのチャネルを活用して果物の売上を増やす 」ことが有効だと指摘しています。

今後の販売形態としては、総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」のアジア業態店舗(DON DON DONKI)がタイなどで出店を加速しており、同チェーンの食料品売り場で日本産果物の取り扱い拡大が見込まれています。日本産のおいしい果物が、ますます海外で広がっていきそうです。

Reference:
東南アジアにおける日本産青果物に関する市場調査
財務省貿易統計

Image:Risako Hata、バンコクフードシステム
Text:Risako Hata

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Risako Hata

ライター

タイ在住のジャーナリスト。共同通信系メディアにて5年のタイ駐在を経て独立。現在は、アジアの経済や人道問題、SDGsに関連する記事を執筆。

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