世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、楽器不足の解消につながる「楽器寄付ふるさと納税」についてご紹介します。
知っていますか?学校で楽器が足りない問題
近年、教育機関や施設では、慢性的な楽器不足が問題になっています。吹奏楽部の活動に関する実態調査(2020年12月23日)によると、学校が所有している楽器を使う人は、全体の68.4%にとどまっています。残りの30%以上は、自ら楽器を調達しており、そのうちの21.1%は、自費で新品の楽器を購入しているというのが実態。
楽器の種類や、新品か中古かにもよりますが、安いとはいえない値段のものばかりです。そのため、借りられなくて購入することになった場合、予想外の出費となり、家計への負担も増えてしまいます。
そのような問題に対するアクションのひとつが、「楽器ふるさと納税」です。これは、ふるさと納税の仕組みを活用して、自治体を通じて、学校などに楽器を寄附すると、その査定額分の税金控除を受けることができるという制度です。
「楽器寄付ふるさと納税」とは
「楽器寄付ふるさと納税」は、域企画事業や地域メディア事業を展開する株式会社パシュートと、ネット型リユース事業や楽器の査定事業を行う株式会社マーケットエンタープライズ、そして三重県いなべ市によって、2018年にスタートしました。
そしてこの度、東京都の自治体としては初の参加となる調布市が、「楽器寄付ふるさと納税」に参加すると発表しました。調布市は、教育機関の楽器不足の解消や、子どもたちが楽器に親しみ、演奏したい楽器を思い切り練習できる環境を実現するために参加を決めたそうです。
もし楽器を寄付したいとなった場合、寄付ができるかを確認するため、2回ほど査定され、問題がなければ、査定額分の控除を受けられます。さらに、寄付先も自分で選ぶことができ、団体や自治体によっては、楽器の寄付贈呈式や音楽イベントへ招待してもらえることもあるそうです。
楽器の種類はトランペットやバイオリン、ドラムなど、さまざまです。2023年7月時点で20の自治体が参加しており、これまでの寄付の申込件数は1,600件以上、寄付された楽器の累計査定額も1,750万円を超えました。
眠っていた楽器を、必要としている人のもとへつなぐ……この「楽器寄付ふるさと納税」は、楽器不足問題の解消以外にも、これまで金銭的な理由で楽器に触れることのできなかった人への機会づくりにもなるでしょう。
【お知らせ】
本日、15:40より寄附楽器贈呈式が茨城県 #行方市 北浦中学校で行われます!#楽器寄附ふるさと納税 を通して全国の皆様より行方市に寄附いただいた楽器が生徒に贈呈されます。YouTubeにてオンラインで生中継しますので、ぜひ↓よりご覧ください♪https://t.co/MTcbIAuy38 pic.twitter.com/Bn4WGtSNKA
— 楽器寄附ふるさと納税【公式】 (@gakki_kifu) November 6, 2020
楽器の再活用アクションは他にも!
「楽器ふるさと納税」以外にも、楽器を再活用する動きはあります。楽器や音響機器の販売および教室事業などを手がける、株式会社ヤマハミュージックジャパン(以下:ヤマハ)は、楽器買い取りサービス「音バトン」を展開しています。
2022年11月から始まったこの取り組みは、演奏しなくなったヤマハ製の楽器を買い取り、調整やメンテナンスを施して再活用する、「資源の循環的活用」を目的としたサービスです。対象の楽器は、ヤマハ製のピッコロやトロンボーンなどの管楽器、ギター、ベースであり、北海道や東京、大阪、福岡など、全国の14店舗で実施しています。
楽器というのは、使われずに眠っていることも多いもの。それを必要としている人へつなぐサービスは、楽器不足に悩む教育機関や施設の問題を解消したり、楽器に触れる人を増やす機会につながったりと、多様なメリットを生み出します。これからも、誰かの「譲りたい」と「譲ってほしい」をつなぐ人や環境に優しいサービスが、楽器に限らず増えるとうれしいですね。
Text:Yuki Tsuruda