「気になる10代名鑑」の506人目は、加藤海凪さん(18)。1年前に「SAFEID」というプロジェクトを起こし、知的障がいを持つ人のファッション改革に挑戦しています。身体的・知的ハンディキャップを抱える人々に「普通に服を買って、普通におしゃれをして、普通にお出かけする」ことを叶えたいと話す加藤さんに、活動を始めたきっかけや今後の目標について伺いました。
加藤海凪を知る5つの質問
Q1. いま、どんなことに力を入れていますか?
「『SAFEID』というプロジェクトを立ち上げて、障がいを持っている人々のファッション革命をめざし、アイテムの選択肢が少なかったり、ファッションへの感覚が高まりにくい現状を変えていく活動をしています。具体的には、機能性が担保され、かつおしゃれに見えるファッションアイテムの開発をしています。
いま開発中のスタイ(よだれかけ)は、ファッションアイテムとしても違和感のないような、つけ襟のようなデザインが特徴です。知的障がいをもつ人の中には、上手に食べることができずこぼしてしまうことや、唾液が出やすいことがあります。このアイテムは、汚れが取れやすい素材を使い、機能性を担保しつつ、おしゃれさもキープしているんです」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「わたしは小さいときからファッションが好きで、自分で服を選ぶ楽しさを感じていたんですが、ウィリアムズ症候群という知的障がいをもつ弟は、いつも母が選んだ服を着ていました。知的障がいを持つほとんどの人は、たとえファッションに興味があったとしても、猫背や身長、なで肩、感覚過敏などといった身体的な特徴と、服の前後・表裏を正しく判断することができないといった知的機能の遅れなどが原因で、自分でコーデを決めるのが難しいんです。
それに、母が弟に服を選ぶときも、デザイン性より、サイズ感や着脱の簡単さ、素材を優先していました。わたし自身はデザイン性やファッション性を重視して服を選べるし、それが楽しいと感じていたので、このギャップを解消できないのかと考えるようになりました」
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Q3. 活動を始めるときに、いちばん最初におこなったファーストアクションは?
「地元で行なわれていた、『スタートアップユースキャンプ』という、高校生向けの起業体験プログラムに参加しました。学校にチラシが置かれていて、当時ちょうどプロジェクトを思いたタイミングだったので、参加を決意しました。
実際にプログラムに参加したことで、起業に対する理解も深まったし、起業をめざす同世代や企業とのつながりもつくることができました。そこで出会った方は、いまもプロジェクトに対して、メンターのようにアドバイスをくださっています」
Q4. 活動をする中でつらかったこと、壁に感じたことなどがあれば教えてください。
「悩みは常に尽きませんが、いちばん難しさを感じているのは、プロジェクトの価値の伝え方です。
福祉という分野でプロジェクトを進めているので、『福祉のためにやっていて偉い』と、いわば同情的に思われることも多くて……。SAFEIDプロジェクトがめざすのは、個人のアイディアやアイデンティティが、障がいの有無とは関係なく、守られる(SAFEする)社会です。そんな社会を実現するためには、共感で終わらせるのではなく、自分ごととして考えてもらえるような伝え方をしていかなきゃいけないなと思っています」
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Q5. 今後の展望は?
「大学在学中に起業するのがひとつの目標です。そしていつか、知的障がいを持つ人が、普通におしゃれを楽しめる環境をつくって、『あのおしゃれな人、知的障がい者なんだって!』と憧れてもらえるような新たな価値を生み出したいです。
また、いまはアパレルという切り口から福祉の世界にアプローチしていますが、障がい者やその介助者を取り巻く環境には、まだまだ解決すべき課題がたくさんあります。だからこそアパレルだけじゃなく、ゆくゆくは障がいを持っている人たちの就労支援などのサポートにも取り組んでいきたいと思っています。
憧れている『ヘラルボニー』のように、わたしたちもいずれ障がいを持っている人と社会の架け橋になれるように、まずは目の前のことからチャレンジしていきます」
加藤海凪のプロフィール
年齢:18歳
所属:明治大学
出身地:愛知県名古屋市
趣味:音楽を聴くこと
大切にしている言葉:「明日、交通事故に遭わないようにしよう」(燃え殻)
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Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya