世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、SGDs推進の裏側にある、「地球にやさしい」「環境に配慮された」商品がどのようにつくられているかについて、ご紹介します。
SDGs推進のスローガンのもと、変わる自動車産業
「SDGs」という言葉は、メディアなどの後押しもあり、一般的にも浸透してきました。ここで掲げられた目標を達成するためには、わたしたち消費者が消費行動を改めるだけでなく、製造する企業にも責任が求められるようになってきました。ファッション業界や自動車産業がサプライチェーンを透明化することが必須になっている中、「環境に優しい」とうたう商品も幅広く販売されています。
例えばEUは、2035年までに欧州域内で、二酸化炭素を排出する乗用車と小型商用車の販売を禁止することで合意しました。これによって電気自動車の生産が加速化することになり、多くの自動車メーカーがその流れに乗って、EVなど、環境配慮型の自動車の生産に取り組んでいます。
「環境に優しい製品」はどこからきてる?
電気自動車のバッテリーには、約11キロのコバルトが使用されています。コバルトは、わたしたちの生活に欠かせないスマホやノートパソコンにも使用されており、需要が高まっています。このコバルトは、アフリカのコンゴ民主共和国で多く生産されており、世界の生産量の約6割を占めているともいわれています。
しかし、このコンゴ民主共和国をめぐって、多くの問題が発生しています。現在、コンゴ民主共和国にある19の鉱山のうち、15を中国の企業が運営しています。
コバルトに関するビジネスは大きくなるばかりですが、その一方で現地の人の選択肢を奪っています。まず、鉱山開発のための環境は大きく変化し、市民の生活に根ざした川の水は汚染されました。その影響で、飲料水を確保できないほか、汚染水による病気の蔓延も確認されています。また、かつては漁業が盛んだったコンゴですが、魚が少なくなったことでその継続が危ぶまれていたり、土地の乾燥が進んだことによって農業が成り立たなくなったりなど、コバルト産業へのシフトの裏で、さまざまな問題が見えています。さらに鉱山労働者は、鉱山の中の空気や埃によって、肺に関連する病気を訴えるようになりました。
加えて人権問題も、国際的に批判されています。環境の変化によって職業の選択肢が減り、必然的に鉱山関連の仕事が増えたことによって、その賃金は低くなっています。多くの鉱山関連で働く人が、1日2ドル以下で暮らしていると言われています。これは国際的に定められた貧困レベル以下であり、学費を賄えない家庭が増え、それに伴い子どもたちが働くことを余儀なくされる児童労働も問題視されています。
国際人権団体は、自動車産業だけでなく、情報端末を生産するアメリカのテック企業をはじめとした、グローバル企業にも、この問題を提訴しています。しかし、鉱山の運営権を中国が多く握っていることで、複雑なサプライチェーンの透明化が困難となっています。
持続可能な社会をつくるコスト
先進国の間でSDGsやESGという言葉が広がり、地球市民として環境に優しい購買行動が求められる中、コンゴ民主共和国では、それを支えるための搾取が起きています。同国ではベルギーから独立する前の60年以上前から、資源を搾取されてきたという過去がありますが、現在も、グローバルビジネスという新しい形態での搾取や略奪が起こっているといえるでしょう。彼らは豊かな資源をもちながら、豊かになっていないというのが現状なのです。
はたして、わたしたちが購入している「環境に良い製品」は、いったいどこからきているのでしょうか。
Reference:
MRIC「鉱物資源マテリアルフロー」
UNDP「貧困を示す事実と数字」
DW「Cobalt Rush – The Shadow Side of Going Green」
Text:Hao Kanayama