世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、日本の多くの地域で書店が減少しているという問題と、それに対する取り組みについてご紹介します。
日本の456市町村には書店がない
日本国内には、全部で1741の市区町村がありますが、出版文化産業振興財団によると、その中に1軒も書店がないという市町村が456も存在するそうです(2022年12月8日時点)。これはつまり、日本のすべての地域のうち、約3割では、書店に気軽に足を運んで直接本を選ぶ楽しさや、本との偶然の出合いを味わう機会などが失われているということ。
そしてこれは、子どもたちの読書機会の損失に直結するでしょう。
この背景には、人口減少による売り上げの低下、さらにはスマートフォンの普及、娯楽の数や種類の増加などによる活字離れ、本離れなどにより、書店の経営が難しくなったことがあります。この15年間で、書店数が約4割も減少しているといわれています。こうした書店減少という現状の問題と向き合い、地域振興にも取り組むプロジェクトが各地域で始まっています。
岩手県西和賀町に「ふるさとブックオフ」1号店がオープン
そうしたプロジェクトのひとつとして、2023年8月2日、岩手県西和賀町に「ふるさとブックオフ 西和賀町湯本屋内プール店」が誕生しました。これは、中古書籍などの販売を手掛ける「BOOKOFF」を展開するブックオフコーポレーション株式会社と、岩手県の西和賀町によって、書籍やリユースを通じた地域振興などを目的とした全国初となるプロジェクトによって生まれたもの。なんと西和賀町では、約16年ぶりの書店なんだそうです。
店内には、廃校で使われていた本棚を設置し、3,000冊もの書籍が、100円から300円で購入できます。ジャンルも幅広く、文芸書や文庫、児童書、絵本、さらにはコミックから洋書まで、一般的な書店と同じように幅広いラインナップを取り揃えています。運営は、屋内プール場に店舗があるということから西和賀町の水泳協会が行い、本の補充はブックオフの担当者が行っています。
実際に書店を利用した子どもたちも「怖い本が好きだから、こういう本があるのも嬉しい」や「思ったより種類が多くて嬉しい」といった感想を話していたそう。この「ふるさとブックオフ」という取り組みによって、地域振興や本に触れる機会の地域格差の解消がどのように進められていくのか、これからも注目していきたいですね。
青森県には自治体が運営する書店も
青森県八戸市には、全国初となる自治体運営の「八戸ブックセンター」が、2016年12月よりスタートしています。「本のまち八戸」を推進する中心拠点として建設され、「本を読む人を増やす」「本を書く人を増やす」「本でまちを盛り上げる」の3つを基本方針としています。
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また、民間書店ではなかなか取り扱いにくい海外文学や人文・社会科学、自然科学、芸術などの専門書や学術書を中心に置いているところも特徴です。他の書籍より売れにくい分野ではありますが、必要としている人がいることも事実。そのうえ、売れにくいからといって、市場の原理に任せていると、こうした本に出合う機会もどんどんなくなってしまいますよね。
そういった理由から、自治体の運営である八戸ブックセンターが扱うことによって、「専門書や学術書は八戸ブックセンターで、小説やコミックなどは他の書店で購入する」といった流れをつくりだし、「民間書店と共に、本の力で八戸を盛り上げる」という状態をつくっているのです。
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その他にも八戸ブックセンターでは、教育機関や文化施設から講師を招き本にまつわる話を聞ける場を設けたり、小説やエッセイなど「書く活動」を行っている人向けの「カンヅメブース」を設置したりと、多様な取り組みを行っています。
ひとりひとりが自分に合った方法で読書の機会を得られるように
活字離れや娯楽の多様化など、さまざまな理由から、減少傾向にある日本の書店。なかには読書習慣があったとしても、簡単に書店に行けない理由があり、ネットで注文したり電子書籍を活用したりする人もいるでしょう。
もちろん、ネットでの注文や電子書籍の活用も現代には必要なもの。しかし、だからといって書店がなくなってしまうのは、やはり失われるものが大きいですよね。ひとりひとりが自分に合った方法を選べるように、選択肢は多いほうがいいはず。この先、わたしたちの住んでいる場所やふるさとから、書店がなくならないようにするためにも、こうした取り組みは広がってほしいですね。
Text:Yuki Tsuruda