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サハラ砂漠の端から届く手紙が失業者の収入源になる「Postcards from Timbuktu」【Steenz Breaking News】

サハラ砂漠の端から届く手紙が失業者の収入源になる「Postcards from Timbuktu」【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、マリ共和国で行われている手紙を活用した失業者支援についてご紹介します。(Photos from instagram of 「Postcards from Timbuktu」

政治や社会情勢の悪化により危険レベル3~4に引き上げられたマリ共和国

現在、西アフリカのマリ共和国では、政治や社会情勢の不安定な状態が続いています。2023年7月時点、渡航中止や退避勧告を意味する危険レベル3〜4となり、イスラム過激派組織によるテロや誘拐が頻発しています。

これまでは比較的、治安が安定しているといわれていた首都以外の南部地域でも、2023年に入ってから、検問への襲撃事件や誘拐事件が複数発生しています。今後も、政府関係者や治安関係者を狙った攻撃が続くと予想されており、場合によっては一般人が巻き込まれる危険性もあるでしょう。

こうした政治や社会情勢の悪化は、さまざまな場所や人に影響を及ぼしています。その影響を受けている地域のひとつが、危険レベル4に指定されている「トンブクトゥ」です。

トンブクトゥが受けている被害


ニジェール川湾曲部に位置する街・トンブクトゥは、かつて塩と金の交易で栄え、帝国として繁栄した時代には、イスラム世界の学術の中心地でもありました。当時は学校やモスクなど、多くのイスラム施設が建設され、現存しているものもあります。1988年には「黄金の都市」として、世界遺産に登録されました。

しかしトンブクトゥは、これまでに2度も「危機遺産リスト」に掲載されており、2012年には、砂漠の砂によるモスクの侵食や、武装集団による遺跡の占領や破壊などが原因で、再登録対象になっています。治安情勢の悪化が、このような面にも影響しているのです。

さらに、治安悪化の影響は、観光業にも及んでいます。高い危険レベルの指定により、観光ができる状態ではなくなり、観光ガイドをはじめとする多くの観光業従事者が、失業に追い込まれました。

そして現在、職を失い生活に困窮する人々をサポートするために、「Postcards from Timbuktu」というユニークな支援が行われています。

「Postcards from Timbuktu」とは

「Postcards from Timbuktu(トンブクトゥからのポストカード)」とは、現地にいなくてもトンブクトゥから手紙を送ることができ、加えて失業者の支援になる取り組みです。

利用したい人は、専門のWEBサイトからポストカードを10ドルで購入し、書いてほしいメッセージと送り先の住所を入力したら、あとは届くのを待ちます。手紙は世界各地に送れますが、郵便システムが不安定なため、1か月以上かかる場合もあるようです。

ポストカードは、現地の学生がデザインしたものや、モスクの写真を使用したものなど、さまざまな種類があり、オーダーしたメッセージは、失業した観光ガイドの人が、代筆をしてくれます。言語も、イタリア語、フランス語、英語、スウェーデン語、オランダ語、ドイツ語、アラビア語に対応しています。

また、失業者への仕事につながるだけではなく、学生がデザインしたポストカードを選ぶことで、その収益が学生の所属する教室に寄付されることになっています。

「Postcards from Timbuktu」は、アクションとしては小さいものですが、失業者や学生への支援になります。そして受け取る側も、その手紙からトンブクトゥをほんの少し感じることができるでしょう。このような取り組みが行われていることを知り、治安情勢の原因や悪化によって起こるさまざまな問題について、考えてみるものいいかもしれません。

Reference:
マリの危険情報【一部地域の危険レベル引き上げ】|外務省
マリ テロ・誘拐情勢|外務省
世界史用語解説 授業と学習のヒント|世界史の窓
第 44 回世界遺産委員会拡大会合 (2021 年 オンライン/中国 福州)審議調査研究事業報告書|文化庁
Postcards from Timbuktu|Philintheblank.net

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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