世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、海洋ごみ問題の救世主になる可能性を秘めた「クラゲ型ロボット」についてご紹介します。
ドイツの研究者チームがクラゲ型ロボットを開発
年々深刻化している、海洋プラスチックごみ問題。問題解決のため、世界中でさまざまな取り組みがありますが、ドイツで、この問題解決に貢献するロボットの開発が進められています。それが、「マックス プランク インテリジェント システム研究所 (以下、MPI-IS) 」が開発した、クラゲ型ロボット「Jellyfish-Bot」です。
このクラゲ型ロボット、ほぼ手のひらサイズの大きさ。水中をふわふわと泳ぐ姿は、本物のクラゲのよう。約100mWの電力のみで動き、騒音もほとんどありません。機体には6本のアームがついており、4本のアームはプロペラとして、残り2本は物をつかむグリッパーとして機能し、毎秒6.1センチメートルの速度で移動できます。
アームは繊細な動きもできるため、魚卵のように柔らかいものを扱うことも可能です。さらにMPI-ISは、クラゲが上方向に泳ぐ際に周囲に水流を発生させ、それを利用して物体を捕捉できることに注目。その動きを取り入れて、水中に漂っていたり、底に沈んでいたりするプラスチックごみを回収できるようにしました。
「Jellyfish-Bot」は、2023年4月時点で、池での環境テストはクリアし、現在は海洋環境でも活用できるように改善中だそうです。
海洋環境や生態系を脅かす海洋プラスチックごみ
国際自然保護連合(IUCN)によると、少なくとも毎年1,400万トンものプラスチックが海に流れ込んでおり、海洋ごみ全体の8割を占めます。そしてその多くは、ポイ捨てや不適切な廃棄物の処理などが原因だといわれています。
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また海洋プラスチックごみは、環境汚染以外にも、海洋生物がエサと間違えて食べてしまったり、漁業網が絡まって傷ついたりと、さまざまな影響を及ぼしています。2020年11月には、高知県で保護されたアオウミガメが、1カ月以上もレジ袋やプラスチック容器などを排泄し続けたというニュースもありました。こうした海洋ごみによって、罪のない生き物たちが被害に遭っている現状に、ただ「かわいそう」と思うのではなく、問題に真剣に向き合い、行動する必要があります。
日本には湖の環境を守るロボットも
水中の環境を守るロボットの開発は、日本でも行われています。立命館大学の理工学部では、川村貞夫教授らによって、琵琶湖の環境保全や調査のために開発された、水中ロボット「湖虎(ココ)」が開発されました。重さ55㎏と小型・軽量ですが、深さ50メートルまで潜ることができ、廃タイヤを水底から引き上げた実績も。さらに、2本のアームやカメラ、加速度センサーもついているため、撮影や計測をしながら、ごみ拾いを行えるそうです。
川村貞夫教授らは、「湖虎」の進化系である、重さ30㎏の機体で機敏に動く「有手海(アルテミ)」や、環境と考古学の調査に役立つロボット「海剣(ミツルギ)」「海観(ミカン)」なども開発しています。
海や湖などの環境保全を目的としたロボットの開発は、これからますます増えていくでしょう。こうしたロボット開発に注目しつつ、普段の生活でプラスチック製品の使用を控えたり、積極的にごみ拾いを行ったりなど、できることを見つけて取り組んでいきたいですね。
Reference:Marine plastic pollution|IUCN
Text:Yuki Tsuruda