「気になる10代名鑑」の491人目は、平塚杏紗さん(18)。高校生のときから酵素に興味を持ち始め、現在はGood Life on Earthプログラムの活動として、プラスチック問題の解決のために、大学の研究室で研究を進めています。9月からアメリカの大学に進学し、さらに学びを深めるという平塚さんに、活動を始めたきっかけや将来の展望について聞いてみました。
平塚杏紗を知る5つの質問
Q1. いまいちばん力を注いでいる活動は?
「今年の3月に高校を卒業し、9月からアメリカの大学に進学します。ギャップ期間は東京大学の研究室で、酵素をプラスチック問題に応用する研究に専念しています。プラスチックを分解することができる『PETase』という酵素があるのですが、その分解スピードをもっと早めることで実用化するというのが、主な研究テーマです。
日本では、廃棄物を燃やすときに発生する「熱エネルギー」を回収して利用する『サーマルリサイクル』が大半なんです。でもこの方法だと、同時にCO2や有害物質が発生してしまうんです。だからいま、世界中で触媒を利用したリサイクル方法である『ケミカルリサイクル』が進んでいるのですが、日本でもこのケミカルリサイクルをもっと普及させたいと考えています」
Q2. そのテーマで活動を始めたきっかけは?
「高校の生物の授業で、先生から『もしも酵素になるなら何がいい?』と聞かれたことがきっかけ。『酵素といってもこんなに種類があって、動きも形も全然違うし、働きも違うんだよ』と言われたんです。そのときは、教科書に載っている3つくらいの酵素しか知らなかったけど、それ以来、酵素の動きや形を再現した動画や、論文を自分で調べるようになりました。
もしもいま、その先生の質問に答えるなら、『ATP合成酵素』という、生物のエネルギーをつくる酵素になりたいですね。一部分が回っているんですけど、たまに止まったり引っかかったりするので、なんだか応援したくなるし、見た目がかわいいんです(笑)」
Q3. 課題に対するアクションの、最初の一歩目は?
「一般財団法人トヨタ・モビリティ基金と東京大学One Earth Guardians育成機構が共同で実施している『Good Life on Earth』というプログラムに応募しました。最初は、ただ純粋に酵素への愛を表現していたんですけど、実際に酵素を扱うことができて、動きが見られるような環境にいられたら、どれだけ楽しいだろう!と思ったんです。東京大学には、酵素を研究している研究室がたくさんあるし、研究するなら最高な環境だなと思って、参加を決めました。
研究室での経験はほとんどなくて不安だったけど、同じ専門分野で活躍している先輩が協力してくれて。研究内容のビジョンを考えるときに相談にのってくださったり、実験がうまくいかないときに一緒に改善方法を考えてくれたり……。そんな先輩方に出会わせてくれた『Good Life on Earth』には、とても感謝しています」
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Q4. 自分自身に影響を与えた存在はありますか?
「いろいろな選択をしていく中で、直感的に判断するときの価値観や基準は、両親から影響を受けていると思います。
両親からは、小さいときから、よく『杏紗のいいところはマイペースなところだよ』と言ってくれるんです。まわりに置いていかれたり、ついていけなくなったりすることもあるけど、すぐに諦めて次のことに取り組むのではなく、自分のペースでもコツコツとやっているところがすごくいいよ、って言ってもらって。
ちょっと気になることがあったら深堀りするところやポジティブなところ、実験結果がうまく出なくても粘り続けるところは、成長につながる言葉をかけてくれた両親のおかげだと感じています」
Q5. 将来の夢、今後の展望は?
「まずは、いま行っている研究を実際に技術に応用するところまで進めたいです。研究室の中だけじゃなくて、実際に応用したらもっと別の課題が見つかるかもしれないと思っています。
9月からアメリカの大学に進学するのですが、大学では自分の専攻だけでなく、他の分野も学びたいと考えています。いろいろなものに触れることで、意外な応用先も見つかるかもしれないなって。
将来は、社会に直接的なインパクトが与えられるようなことがしたいです。例えば、企業で技術開発に携わるような研究をするとか。課題解決をしたり、自分の好きを原動力に動いていきたいです」
平塚杏紗のプロフィール
年齢:18歳
出身地:愛知県名古屋市
所属:Vanderbilt University、Good Life on Earth、一般社団法人HLAB
趣味:散歩
特技:ごはんをおいしく食べられる
大切にしている言葉:死ぬこと以外かすり傷
Photo:Eri Miura
Text:Chikiri Kudo