世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日はベルギーで開発された「ヘアマット」についてご紹介します。
水質汚染を改善するヘアマットが爆誕
美容院などでカットされる大量の髪の毛。その行き先を知っていますか?
最近では、医療用ウィッグ作成のための髪の毛の寄付「ヘアドネーション」を行う人も増えていますよ。しかし、多くの髪の毛は、集められた後、事業系一般廃棄物として処分されることがほとんどです。
そんな捨てられる髪の毛を使って、水質汚染を改善する方法を見出したのが、ベルギーの非営利団体 Dung Dungです。非営利団体 Dung Dungでは、ベルギー国内の美容室から出た髪の毛を回収し、特殊なマシンに入れます。これで、廃棄されるはずの髪の毛が、四角形に整形された「ヘアマット」へと生まれ変わります。
このヘアマットは、排水溝などに設置され、川に流れ出る前の、水中の油や炭化水素を吸収します。また、洪水などによる水質汚染や、タンカーの事故などによって流出した石油の除去などにも効果があるのだそう。
1kgの髪の毛で、なんと7Lから8Lもの炭化水素が吸収できるというから、驚きですよね。またヘアマットは化学物質を使用せず、髪の毛のみでできているので、劣化などによって一部が水に流れてしまっても、環境への影響が少ないというのもポイントです。
日本からもヘアマット作成に協力できる!
このヘアマットの取り組みは、ベルギーのみならず、世界中に広がっています。日本では、米国の環境活動団体「Matter of Trust」の日本パートナーである「マターオブトラストジャパン」が、このヘアマットづくりを行っています。
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ヘアドネーションでは、通常31cm以上の髪の毛が必要とされているのですが、ヘアマットは、2.5cm〜10cmの髪の毛と10cm以上の髪の毛の二種類からつくられるため、髪を長く伸ばすのが難しい男性や子どもの短い髪の毛でもOK。
「マターオブトラストジャパン」では、髪の毛の寄付はもちろん、ヘアマットを作成するボランティアも募集しているそう。マットの製作工程を実際に目にしたり、自分の手で体験することで、髪の毛のリサイクルの可能性を感じられるかもしれませんね。
捨てるなんてもったいない!髪の毛の使い道は他にもたくさん
廃棄されるはずの髪の毛の使い道、実は他にもあるんです。
例えば、ロンドンのバイオマニュファクチャリング企業「Biohm」では、髪の毛を使用したシート素材や、3Dオブジェクトの代用品を製造しています。なんと、髪の毛から建築廃材が生み出されるのだそう。
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またシンガポールにある大学の研究チームは2022年、髪の毛から抽出したケラチンを使用して、水耕栽培用基材を開発。野菜などに栄養や水分を与えるスポンジ部分に、このケラチンが使用されています。ケラチンには生物分解性があり、分解後は栄養となって植物に吸収されます。もしかしたら、都市型農業に髪の毛が使われるかもしれません。
今後、わたしたちの髪の毛が、どのように環境問題や農業に役立つのか、楽しみですね。
Reference:
euronews.green「Circular economy: Human hair recycled to clean waterways in Belgium」
科学技術新興機構「美容院で集められた髪の毛からケラチン抽出、野菜を育てる水耕栽培用機材に使用 シンガポール」
Text:Tommy