「気になる10代名鑑」の447人目は、ニナさん(17)。訪日・在留外国人のベジタリアンに向けた、原材料に動物性のものが含まれていないか確認ができるアプリ『Glabel Japan』を開発しています。個人の活動としても、農産業・漁業に関わる人々を訪ねるオーラルヒストリーにも取り組んでいるというニナさんの活動の原点や、今後の展望についてお聞きしました。
ニナを知る5つの質問
Q1. いま取り組んでいる活動について教えてください。
「『NPO団体 Repainters』の共同創設者として、訪日・在留外国人ベジタリアンに向けたサービスを開発しています。
日本の食材は、原材料の確認が難しいことや、原材料が日本語でしか書かれていないという課題に注目し、『Glabel Japan』というアプリをリリースしました。食品表示の原材料をスキャンすると、登録された情報をもとに、ユーザーが食べられる食材かどうかをAIが判断するシステムになっています。
またそれとは別に、伝統的な農産業や畜産業に関わる人々に話を聞きにいく、オーラルヒストリーにも取り組んでいます。文字からはわからない口調や方言から、その人が歩んできた人生が伝わってくるので、お話を聞くのがとても楽しいです」
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Q2. 活動をはじめたきっかけは?
「北海道の『佐々木ファーム』や、福島県の『無の会』など、いくつかのファームを訪れた経験が大きいです。そこで、食というものが、人間の倫理観や価値観、信念や信仰と密接に関わっていることを知ったんです。
それに加えて、小学校3年生から6年生まで、タイに住んでいたことも影響していると思います。タイに行く前は、勉強でも習いごとでも、競争心をすごく持っていたんです。でも、国民の口癖が“ マイペンライ ไม่เป็นไร(何も問題ない) ”であるタイのゆったりとした雰囲気に触れ、穏やかでリラックスしたマインドを得られました。そこから、いろいろなことに目を向けられるようになったんです」
Q3. 印象的だった体験を教えてください。
「アプリをリリースする前に実施した、ユーザーヒアリングです。訪日外国人のベジタリアンの方、50名ほどにお話を聞いたんですけど、そのなかに『信仰のためにもともとお肉を食べていなくて、その宗教の信仰をやめたあとも、動物の権利の観点から動物性のものを消費することに疑問を感じて、ベジタリアン生活を続けている』という方がいました。
“食事”という、日常でなにげなく繰り返されることについて、ものすごく深く考えながら生活している人がいることに驚きを感じて。わたしも、日常のいろいろな出来事にもっと意識的になろうと考えました」
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Q4. 自分の活動に影響を与えたものを教えてください
「カミュの『ペスト』です。繰り返される不条理を通して、登場人物たちがさまざまなことに無関心になっているところが、コロナ渦の自分の境遇と似ていて、夢中になって読みました。そして、共感を通してさまざまな不条理に立ち向かおうとする姿勢に、とても感動したんです。
この『共感や連帯を通して社会のさまざまな不条理に立ち向かう』という姿勢は、わたしの活動の信念にもなっているんです」
Q5. 今後の展望は?
「フードテックを通じて、戦争や感染症、自然災害などによる影響が最少化された食糧システムを実現したいです。最近は細胞農業という細胞から野菜や肉を生産する技術に注目しています。日本ではそういったフードテックに対しての法整備が十分ではないので、政策立案にも興味があります。
それだけじゃなくて、その過程で失われてしまうかもしれない食文化を守る活動も行っていこうと考えています。先端技術と伝統文化の豊かさが共存している社会になってほしいので、最新技術ばかりに注目するのではなく、伝統文化のいい部分を守る活動もしたいです」
ニナのプロフィール
年齢:17歳
出身地:アメリカ合衆国メリーランド州
所属:NPO団体 Repainters、日本細胞農業協会
趣味:ダンスのステージをプロデュースすること、非日常感のある場所に飛び込むこと、水泳、シンクロ、登山、カメラ、絵や立体作品を創作すること
特技:文学の分析
大切にしている言葉:「理解することは道徳だ」、「人間のなかには軽蔑すべきものよりも賛美するもののほうが多くあるということを、ただそうであるとだけというために 」(カミュの小説『ペスト』の一説)
ニナのSNS
★note
Photo:Eri Miura
Text:Kanon Yoshizumi