世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、カンボジアでのモノづくりを通じて、若者の就労支援や地雷撤去を応援する日本人起業家についてお伝えします。
カンボジアヴィンテージで現地の雇用を支える日本人起業家
東南アジアのカンボジアの北西部に位置し、世界遺産のアンコールワットなど、多くの遺跡を擁する街、シェムリアップ。そんな伝統的な場所で、現地の職人を育成しながら、財布やカバンなどのレザークラフトを製作している、日本人起業家がいます。それが、今回ご紹介する、古白川真さんです。
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工房には、10代から30代のカンボジア人が4人働いています。最初はみな未経験でしたが、古白川さんは「(カンボジアの)
生きがいを失ってたどり着いたカンボジア
学生時代は音楽活動をしていたという古白川さん。高校を中退し、音楽の道で食べていこうと決意。全国ツアーを開催するほどの人気バンドで活動していましたが、トラブルの末、23歳に音楽活動を中止せざるを得なくなりました。
音楽という生きがいを失った古白川さんは、世界を放浪する旅に出たそうです。そして、さまざまな国を旅する中で、心を奪われたのが、シェムリアップの人々の優しさでした。「ズボンに穴があいたので、新しいものを買おうとマーケットに行ったんです。そうしたら、店員のおばちゃんが『縫えばまだ履けるよ』といって、無料で縫ってくれたんです」。そんな人情味あふれるシェムリアップに惚れ込んだ古白川さんは、以前から興味があった、皮製品の工房運営を始めることにしました。
「武器を食器に」というコンセプトで地雷撤去を支援
そうして、レザークラフトの販売を始めたものの、その道のりは平坦ではありませんでした。長い間共に働き、古白川さんの心の支えでもあった現地の職人が、ある日突然、交通事故で亡くなってしまいました。さらに、急激な家賃の上昇や、新型コロナウイルスの影響による売り上げ減少など、さまざまな要因が重なり、心身ともに疲弊してしまったことも……。
そうした中で、古白川さんは、
古白川さんが訪れた地雷原には、灼熱の環境下、命懸けで地雷の撤去を続ける作業員らの姿がありました。そうした危険にさらされつつも、平和のために作業を続ける人々をサポートするべく、弾丸の薬きょうを溶かし、フォークやスプーン、アクセサリーなどに変える活動を開始。商品がひとつ売れる毎に、地雷撤去隊員の1食分に変えることができる取り組みで、「FORKS FOR FALKS」「銃器を什器に、武器を食器に」をコンセプトにしています。
古白川さんは活動について、「日の目を浴びずに地道に活動を続ける地雷撤去隊員のことをもっと知ってもらい、応援してもらうきっかけになってほしい」と話します。
カンボジアの若者に「選択肢」を
シェムリアップは、コロナ禍以降、なかなか観光客が戻ってきておらず、地元経済は回復していません。「学歴もスキルも何もなかった自分でも未来を切り開くことができたのは、一生懸命取り組みたいことを見つけられる『選択肢』と、それを実践できる『環境』があったから。カンボジアの若者たちに、そうした機会を与えることができたら」と語る古白川さん。
シェムリアップでは、若者に与えられる職業機会が少ない中、職人の育成にもさらに力を入れていきたいといいます。カンボジアの工房から、世界を目指せる人材を輩出するべく、カンボジアヴィンテージを世界に広めるための古白川さんの挑戦は、これからも続きます。
Reference:独自開発の地雷除去ロボットでカンボジアの地雷除去作業員の安全を守り、作業を効率化
Text:Risako Hata