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スタンフォード進学から炎上騒動まで。20歳になった松本杏奈が爆速で10代を振り返る

スタンフォード進学から炎上騒動まで。20歳になった松本杏奈が爆速で10代を振り返る

いま、独自の立ち位置を確立している人は、どんな10代を過ごして、いまの場所に行き着いたのだろう。インタビューシリーズ「あの人に聞く、“私の10代”」。今回は、徳島県から現役で米国・スタンフォード大学に進学した松本杏奈さん。今回、松本さんが日本に帰国したタイミングで、これまでの10代の出来事や、現在でのアメリカの生活について聞いてみました。

10代のいちばんの思い出は初めて「世界を変えられた」文化祭

ー3月に20歳になったとのこと。おめでとうございます! 実感はありますか?

「ありがとうございます! 10代のうちに、Steenzの『気になる10代名鑑』に出たかったなっていうのはあるけど(笑)、20歳になった実感は、正直まだないですね。『私、20歳になったんだな』って、自分で自分を納得させる場面のほうがまだまだ多い気がする。アメリカでは、お酒を飲めるのも21歳からだし。もっと20歳っぽい行動を意図的にしないと、実感が湧かない気がしています。

でも大人になるって、わたしの中では、ひとりで目的を持って行動できることだと思っていて。小さい話だけど、ひとりでラーメンを食べに行くとか、スーパーでお菓子を好きなだけ買っていいとか。そういうのって、10代のときはちょっと勇気がいることだったけど、いまは気軽にできるようになった。自分で意思決定権を持って歩けるのが、 いちばんの大人の特権だと思うんですよね。大人って、なんでも自分で決められるじゃないですか」

ーSteenzとしても、ずっとインタビューしたいと思っていたんです!

「なかなか声がかからないぁって思っていました。だって、わたしが10代でいちばんイケている奴だと思っていたもん(笑)。アメリカでよくSteenzを見てましたけど、SNSとかで知っている子もいれば、全然知らない子もいて。記事を読んで『この子と話したい!』と思ったら、SNSをフォローしたりもしていました。

あと、Steenzの人に会ったときに伝えたかったのは、もっと全国の10代を取り上げてほしいってこと。高校時代は徳島が生活の拠点だったから、わたし以外に面白い子が日本にいることを知らなくて。いまだと、東京の知り合いが多いから、東京の10代の生活は垣間見ることはできるけど、地方の高校生ってみんな全然知らないから。どうですか?」

ー確かにそうですね。宿題にさせてください。ところで、改めて10代を振り返ってみると、いかがでしたか?

「悔いはないですね、一切。大変なことも多かったけど、マジで楽しかった。何がいちばん楽しかったかな……。いま、わたしが10代の走馬灯をつくって思い返すなら、やっぱり高校の文化祭は外せないと思う。わたしにとって文化祭が、初めて自分で世界を変えられた瞬間なんですよ」

ー世界を変えられた瞬間……ですか。

「『みんなで協力して、何かを成し遂げる』っていう経験は、間違いなくいまに生きているし、一生忘れません。文化祭ってクラスごとに屋台を出したりするじゃないですか。わたしのクラスはタピオカをつくって、黒字を出すことができたんです。ツイッターでバズるとかそういう話じゃなくて、もっとミクロな視点で世界を良い方向に変えられたっていう成功体験が、いまのわたしをつくっているんです。

だから、受験に受かった瞬間よりも、海外大学への進学をめざす仲間たちと一緒に乗り越えた経験のほうが、思い出としては強いんです。もちろん『合格』の二文字を見た瞬間はすごく嬉しかったけど……。でも合否待ちの期間に、みんなでLINE電話してゲームしたりしていた時間とか、すごい楽しかったなあって」

ー仲間の存在が大きかったんですね。それは昔から?

「それが、小さいころは、人と話すのがけっこう苦手で。まわりのことを気にして、ウジウジしているような子だったんです」

ーなんだか意外ですね。

「よく言われます。どこで変わったのかというと、たぶん中学生のとき。中学校3年生ぐらいから『自分のポテンシャルを見てみたい』というか、死ぬ前に自分の最大限を見てみたいと思ったんです。やればできるって言われても、正直やったことがないから、どこまでできるかわかんないし、やらないまま死んじゃったら、やればできる子じゃなくて、ただのできなかった人になる。だから頑張ろうと思って、中学校3年生から勉強も頑張って、そうしたら外の世界に自然と目が向いたんです」

ーかなりの方向転換ですね。

「そのほうが人生が楽しくて。ワクワクしてきたんですよ。『何にでもなれるんじゃないか』って。

でも、いろんな人の話を聞こうとしても、そのときは徳島県にいて、会いたい人たちと実際に会うチャンスがなくて……。徳島って全国で唯一、電車のない県なんですよ。いろいろな要素が重なって、田舎らしい田舎になるんですけど、それで、インターネットに沼りました。当時はネットでアメリカの大学に行った人の記事を読んでみたり、面白い人がいるなって画面を眺めていたんです」

いまだから言える。炎上騒動は空白の期間でも無駄な期間でもなかった

ーとはいえ、大変なことや苦労したことも多かったんじゃないですか?

「もちろんそれはあります。特に10代の終わりに、著書のこととか、経歴のこととかで炎上して、ありもしないことをたくさん書かれて……。本当に闇堕ち寸前でした。っていうか、ほぼしていたと思います。実際、何回かぶっ倒れたり、病院に運ばれたりしたし……。

それでもいまは、それも含めて楽しかった10代だって思うんです。だって、そのことで改めて、友だちの愛情に気づくことができたから。日本の友だちも、アメリカの友だちも。SNSでの発信を一時期やめていたのは、友達のおかげで、リアルがすごく充実していたからで、ずっと塞ぎ込んでいたわけじゃないんです」

ーそうだったんですね。

「だからネットで炎上して、メンタルブレイクしていた期間を、無駄だとは思っていないし、『空白の期間』だったなんて思っていません。『あんなに叩かれて、かわいそう』とか思われていたかもしれないけど、あんな経験を10代でできる人間なんていないし。みんなに『杏奈は長生きして』って言ってもらっていました」

ー友達の存在は大きいんですね。

「高校時代の友だちから、『お前は先生や大人からも嫌われることはあっても、友達からは嫌われないよな』って言われたことがあって(笑)。だから徳島にいたときから、メンタルブレイクしても変な方向に走らなかったのは、紛れもなく友だちのおかげだと思います」

ーそんな経験をしてまで、また発信を再開したのはなぜ?

「いまのわたしにも、発信できることがあると思うから。そりゃつらかったときは『日本にはもう帰りたくない』と思っていたけど、私は結局、日本のことが嫌いじゃないし、信じていたいんです。意外と性善説で生きているんですよ(笑)。

それに、わたしのSNSには、よく日本のいろんな若者から『今度アメリカ行くので、案内してもらえませんか?』っていう相談が来るんです。そういう子には、全力で案内してあげます。3〜4時間ぐらいキャンパスを連れ回して、面白い人がいたらつなげて。

終わった後に、『人生変わりました』って言ってくれた子もいました。いまの何者でもないわたしでも、誰かを変える経験ができるんだって思ったし、日本の若者だってまだまだできるんだっていうことを、アメリカに行って気づいちゃったんで。だから、発信できることがあるうちに発信します」

ー不安とかありませんか?

「多少はありますよ。でも、どれだけ大きな人間になっても、発信するって怖いことだと思うんです。わたしが敬愛する『X JAPAN』のYOSHIKIさんだって、どう日本と向き合おうか、すごく考えています。あ、わたし、『X JAPAN』がずっと大好きなんですよ。

たぶん10代のとき、特にスタンフォードに入学したてのころのわたしは、発信することに対して過剰なプレッシャーというか、責任を感じていた部分があって。でも肩の力を抜いて、自分が好きなことを楽しくできていればいいんだよって、スタンフォードがわたしに教えてくれたんです」

ちょっぴりビターな10代の体験も、リアルかつストレートに語ってくれた松本さん。続くインタビュー後編では、渡米から3年を経て見える景色が少しずつ変わってきたという現在の学生生活について、詳しく聞いてみました。

松本杏奈のプロフィール

2003年徳島生まれ。2021年3月に徳島文理高等学校を卒業し、9月より米国スタンフォード大学に進学。専攻はSchool of Engineering, Design Program, Physical Design + Manufacturing。柳井正財団5期生。「誰も取り残さない社会と技術と芸術を。」を理念に掲げ、コミュニケーションにおける障壁の克服をめざしている。座右の銘は「強行突破」。

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Photo:Ryo Usami
Text:Ayuka Moriya

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Ayuka Moriya

エディター

1999年生まれ、秋田県出身。東京外国語大学 国際社会学部在学時よりライター・エディターとして主にインタビュー記事の執筆、ディレクションに携わる。Steenzでは、2021年ローンチ当初より「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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