世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、廃棄される漁網からつくられたウエディングドレスについてご紹介します。
廃棄漁網をリサイクルした素材でウエディングドレスをつくる
海洋ゴミというと、ペットボトルなどの生活ごみがパッと頭に浮かびますが、見過ごせないのが漁業ごみ。環境省の調査によると、日本の海岸に漂着している海洋プラスチックごみのうち、漁網・ロープといった漁業ごみは、全体の約3割を占めているそう。そんな漁業ごみの問題を改善するアクションはさまざまなものがあり、バッグやベルトなど、いろいろなアイテムに生まれ変わっています。
そして、今回紹介するのは、釣りやテニスなどのスポーツ用品事業を展開するグローブライド株式会社がおこなっている取り組み。「『BE EARTH-FRIENDLY』-漁網アップサイクル産学連携プロジェクト」と題されたこの取り組みでは今回、日本最大のファッション専門教育機関「文化学園」と連携し、ウエディングドレスへと生まれ変わらせました。
素材は、廃棄漁網をリサイクルしてできた撥水加工のナイロン素材を使用。ウエディングドレスのデザインは、2022年9月1日に行われた「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023 S/S」の「漁網から作られたアパレルアイテムのコンテスト」にて、優勝した学生の作品がベースとなっています。
廃棄漁網の処理問題
これまで漁網は、漁などで使われて、その寿命がくると、廃プラスチックとして海外へ輸出されたり、国内で埋め立てたりしていました。
しかし、2017年に中国が廃プラスチックの輸入を規制したことをきっかけに、アジアの国々も続々と廃プラスチックの輸入規制を導入。また国内で埋め立てるにしても容易ではなく、次第に行き場を失っていきました。捨てるのが困難となると、意図的に海に捨ててしまう悪質な漁業従事者も増えてしまいます。
グローブライド株式会社は、この状態に危機感をもった「北海道ぎょれん」と協力し、漁網からナイロン素材を製造する「漁網アップサイクルプロジェクト」に取り組んでいます。
地球環境への思いも込められたウエディングドレス
今回、生み出されたウエディングドレスは、前後の長さが異なるデザインが印象的な一着。ふんわりと何層も重ねられた特徴的なプリーツは、「山があるから谷があるように地球にあるものの存在意味」や「お互いがお互いを必要とすること」を表現しており、制作者の思いやこだわりが詰まっています。
デザインをした、文化服装学院アパレル技術科の髙田綾さんは、「一生に一度しかない大切なときに着られるウェディングドレスは、日常着とは違って誰もが思いを込めて選びます。その素材がリサイクルでできていることに何の抵抗もなくなるくらい、リサイクルが浸透してほしい」という思いを込めたそう。
世界的に、環境や人に優しい社会をめざす動きが強まっている現代。リサイクルやアップサイクルが当たり前になる社会も、そう遠いことではないのかも知れません。
Reference:海洋ごみをめぐる最近の動向
Image:PRTIMES
Text:Yuki Tsuruta