Steenz Breaking News

ミャンマーのクーデター発生から2年…いまなお武器を持って戦う若者も【Steenz Breaking News】

ミャンマーのクーデター発生から2年…いまなお武器を持って戦う若者も【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、軍事クーデターが発生してから2年が経過するミャンマーについて、その現状をお届けします。

遠隔地では空爆や焼き討ちも

東南アジアのミャンマーで軍事クーデターが発生してから2年が経ちました。最近は、最大都市ヤンゴンなどでの大規模なデモは少なくなっていましたが、少数民族が住む遠隔地では、いまだ国軍による空爆や村の焼き討ちなど、容赦ない攻撃が続いています。そうしたなかで、ミャンマーの若者はいま何を考え、どんな暮らしを送っているのでしょうか。

1万3,700人以上が拘束中

ミャンマーでは2021年2月1日、国軍がクーデターを起こし、全権を掌握しました。民主化運動の指導者で、当時の国家顧問兼外相だったアウンサンスーチー氏や、民主派の国民民主連盟(NLD)の幹部らを拘束し、全土に非常事態を宣言しました。

その後、若者を中心としたデモ集会が相次いで開かれましたが、国軍による武力行使によって、多くの参加者が拘束され、殺害されました。デモの長期化によって経済が停滞し、生活がままならない人も増え、デモの規模は次第に縮小していきました。

ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると、1月31日までに国軍の武力行使によって死亡した市民の数は2,940人。さらに、1万3,763人が、いまだ拘束されたままになっています。

SNSも監視、秘匿性の高いアプリで連携

こうした状況で、ミャンマーの若者は民主化を諦めてしまったのでしょうか。フェイスブックのグループ「ミャンマーの今を伝える会」で共同管理人を務める在日ミャンマー人のユーさんは、「ヤンゴンでは表向きは静かに見えるが、若者は各人、民主化に向けてまだまだ抗議活動を行っている」と話します。

例えば、「SNSで情報を拡散する人」「海外から抗議活動のための資金を集める人」「単発的に行われるフラッシュモブ形式のデモをする人」といったように、それぞれに役割があり、秘匿性の高いアプリなどを通じて連携して、抗議活動を行っているそうです。

SNSに国軍批判の投稿をして拘束された女性(Chindwin News Agency提供)

活動にあたっては、危険も伴います。ユーさんは、「国軍はフェイスブックなどSNSも常に監視しています。SNSで国軍の批判をしただけで、拘束される恐れがあるのです」といいます。そのため、現在は多くのミャンマー人が、SNSでは偽のプロフィールや偽名を使用し、情報を発信しています。

外資系企業の撤退で失業者は増加

クーデター発生後、多くの国民が軍へ抗議を示すために仕事をストライキしたため、経済活動も著しく低迷しました。欧米諸国も、ミャンマーへの経済制裁として、国軍を支援する企業から投資を引き揚げました。日本企業も例外ではありません。今年の1月には、ミャンマーでビール事業を展開していたキリンホールディングスが、ミャンマー事業撤退の手続きが完了したことを発表しました。

相次ぐ外資系企業の撤退により、失業者が増加し、国内の治安は悪化しています。今年に入って、現地在住の邦人男性が刃物で襲われるという事件も起きました。

武器を持って戦う若者たち

国軍の空爆から逃げるカレン族の人々(カレン民族平和支援ネットワーク<KPSN>提供)
軍の砲撃を受けたとされるカレン族の村(カレン民族平和支援ネットワーク<KPSN>提供)

さらに悲惨な状況が続いているのが、少数民族の住むエリアです。国軍と少数民族武装勢力の間では、ミャンマー(当時のビルマ)が独立した1948年から、70年以上にもおよぶ内戦が続いています。ミャンマーが2011年に民政移管を遂げたことで、国軍と各民族との和解に向けた交渉が進んでいたところでした。

ところが、2021年2月のクーデターにより、国軍と一部の民族の対立は深まり、関係は悪化。再び激しい戦闘が始まり、国軍による空爆、村の焼き討ちなど、非人道的な行為が常態化しています。

ヤンゴンなど中心部に住む若者が、こうした少数民族武装勢力の管轄地域で戦闘の仕方を学び、武器を持って国軍と戦うという動きも見られます。こうした戦闘によって、多くの若者が亡くなっています。また、戦闘をとおして、民主派だけでなく、国軍兵士らの犠牲者も増え続けています。

私たちに何ができる?

日本でのデモの様子

こうした状況下、日本に住む私たちには何ができるのでしょうか。あるミャンマー人の若者は、「日本政府にはミャンマー国軍ではなく、民主派勢力が軍に対抗するために発足させた国民統一政府(NUG)を、ミャンマーの正式な政府として認めてほしい」として、日本国民からも日本政府に働きかけてほしいと訴えています。

在日ミャンマー人たちは民主主義の復活に向けて、さまざまな募金活動やクラウドファンディングも実施しており、金銭的な支援も受け付けています。

まずはミャンマーで何が起きているかを知り、何ができるかを、ひとりひとりが考えてみることが、ミャンマーの民主化支援につながっていくのではないでしょうか。

Image:KPSN、Chindwin News Agency、Risako Hata
Text:Risako Hata

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Risako Hata

ライター

タイ在住のジャーナリスト。共同通信系メディアにて5年のタイ駐在を経て独立。現在は、アジアの経済や人道問題、SDGsに関連する記事を執筆。

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