いま独自の立ち位置を確立している人は、どんな10代を過ごし、いまの場所の行き着いたのだろう。インタビューシリーズ「あの人に聞く、“私の10代”」。今回のゲストは、ロックバンド「Cody・Lee(李)」のギタリスト、力毅さん。
唯一無二のファッションセンスで、音楽業界でも一目置かれる洋服好きとして知られています。今回は2月1日にリリースされた、高校3年間への想いを綴った新曲『1096』にちなんで、高校時代の思い出を中心に、ファッションへ興味を持ったきっかけなども聞いてみました。
消化不良だった高校の軽音楽部を経て、音大へ進学
ーさっそくですが、音楽はいつから始められたんですか?
「高校の軽音楽部からです。小学生から中学生までは、水泳、サッカー、バスケと、それぞれ打ち込んできて。いまの自分から想像つかないと思うんですが、“ザ・運動少年”だったんですよ。風の抵抗をなるべく受けないようにしたくて、ずっと1mmの坊主でしたし(笑)」
ー全然イメージが湧かないです!そこからどうやってギタリストの道へ?
「ちょうど中学3年生の終わりに、JUDY AND MARYの解散ライブの映像を見て、『バンドってなんか面白そうだな〜』って気持ちが湧いてきて。そんな安易な理由から、軽音学部がある高校を基準に、志望校を選びました」
ースポーツを続けようと思わなかったんですか?
「中学3年間のバスケ部がかなりハードだったので、もういいかなという気持ちもあって。でも、結果的にはさらにハードでした(笑)。いざ入ってみたらバスケ部以上にストイックな部活で、オリジナル曲しか発表しちゃいけないし、曲を書かないとライブに出させてもらえない……。結果的に同期は、僕含めてふたりしかいなくなっちゃったんです」
ーだいぶハードな軽音学部だったんですね。
「大会に出場しても、先輩か後輩と組むしかなくて、1年弱しか活動ができないんで、高1から同じメンバーで組んでる人たちに敵わなくて……。あんまり達成感を得られなかった悔しさがずっとあって、音大に進んで、もっと専門的に音楽を学ぶことにしました」
ーそこから大学に進学して、ボーカル/ギターの高橋響さんと出会うんですよね。
「学校の中でも違う学科の音楽好きたちが、当時カフェテリアによく集まっていて。ちょうど20歳になる前ぐらいに、『賞金が出るオーディションがあるらしいから出てみようぜ』って感じで、そのときたまたまバンドを組んでなかった僕と響と何人かで出場することになったんです。それが、いまのバンドの始まりです」
ープロの道に進むのに、迷いとかはありませんでした?
「そもそも音大へ進んだのは、ただ悔しかったからもうちょっとやりたいってことだけだったと思います。それに、バンドを始めてからも、仕事にしたいとは考えなかったです。
ただ、大変な3年間だったけど、演奏していてお客さんの拳が自然と挙がったり、出番が終わったときに会場がざわついたり、そういう経験を通して、初めて続けたいものに出会えたって思ったんです。だから、それを自分の中で大事にしよう、と」
着たい服にたまたまスカートが合うってだけ
ー力毅さんといえば、そのユニセックスなスタイルで、ファッション通として知られていますよね。そのスタイルが確立されたのはいつですか?
「大学に入ってから、アパレルショップでバイトを始めるんですが、それまではまったくファッションには興味がなくて。運動少年だったから、基本ジャージで過ごしていて。中学生のとき、パーカーの存在を知らなくて、友達が着ているのを見たとき、めちゃくちゃかっこいいじゃんって衝撃を受けた記憶があります(笑)。
バイト先の店長が古着好きで、店に置いてある軍モノのこととか、いろいろ教えてもらったのが、ファッションに興味をもち始めたきっかけですね」
ーパーカーがファッションへの目覚めなんですね(笑)。そこから、ファッションのどんなところに興味をもったんですか?
「自分という存在はひとりしかいないのに、ファッションを通すと、自分のなかでいろんなギャップを楽しめるところですかね。アパレルショップでバイトしているときも、好き勝手に着て楽しんでいて、スカートで接客してました。特に深い意味はなくて、いつもただ着たいと思った服を着ていて、そのときの最善の組み合わせがスカートだったから履いているってだけなんです。
あと、服の歴史を読み解いていくと、自分がやっている音楽との繋がりが見えてきて。そこから、服の意味や歴史を、いろんなところに紐付けていくのが好きになりました。やっぱり、そういうのを知ってて着てるほうが似合うんですよね。
そんな感じで服好きを続けた結果、いまでは、クローゼットはいろんなジャンルの服が1500着くらい収まっています」
「概念弾き」に込めた卒業へのメッセージ
ー2月1日にはシングル「1096」がリリースされました。この曲はどんな経緯で制作されたんですか?
「響が高校生のときにつくった曲をリアレンジする形で始まったので、デモを最初に渡されたときは、高校生らしいフレッシュなサウンドに寄せて作ってみたんです。
その後、1年くらい寝かして、いざリリースするとなったとき、『どうやら、若々しさがメインじゃなさそうだな』って感じて。というのも、その間に僕らは学生から社会人になったんです。それで曲に込める想いが少し変わって、もっとストレートにぶつけるほうがいいんじゃないかなって、バージョンアップさせたんです」
ーギターパートでこだわったところを教えてください。
「最後のアルペジオのギターフレーズは、前回のアルバムの『愛してますっ!』という曲のある部分の逆再生を入れています。この『1096』を高校3年間としてみたとき、曲をリバースして最後から聴くと、『その3年間を愛していたことを思い出してほしい』っていう意味を込めていて。
あとは、細かいところなんですけど、わざと弦落ち(弦が指板から落ちること)させて弾いてる箇所があって。でも弦って、ナットとくっついているから、外れても元の位置に戻ってくるんですよ。これは『たとえ道を外しても、また元に戻れるよ』っていう意図なんです。
こういう意図やメッセージを、実際の奏法として形にするっていう『概念弾き』というものを、今回もたくさん散りばめています。この概念弾き、個人的に前々から提唱してるんですが、なかなか広まらないんですよね(笑)」
ーそれでは最後に、いまの10代に向けてメッセージをお願いします。
「よく思うのが、SNSは見過ぎないほうがいいだろうなってことですね。自分の情報量の許容範囲がわからないまま見続けていると、気づいたらキャパオーバーしちゃってるっていう人が多いんじゃないかな。ギターだって、せっかく自分に自信があるのに、ひとたびうまい人のプレーを見たら、やる気を無くしちゃう、みたいな。「自分ってヘタだな……」って思っても、それはこの情報社会のせいなんで、気にしなくていいです。
僕も、音大に行くって決めたときに、あんまり下調べしなかったんですよ。それがかえってよかったんじゃないかなって、いまではすごい思います」
Cody・Lee(李)2023年初のシングル「1096」
高校時代の3年間=(1096日間)への想いをタイトルに込め、「自分の高校時代は『俺たちの青春、最高!』って感じじゃなかった。でも、このどうしようもない3年間を曲にして記憶しておきたかった」という高橋響さんの想いから、18歳の冬につくられたという楽曲です。
また、2023年5月からは、メジャーデビュー1周年を記念した全国ワンマンツアー「Cody・Lee(李)Major Debut 1st Anniversary こnにちはせいかつ。TOUR」が開催。5月25日の東京・EX THEATER ROPPONGIを皮切りに、全国11か所を訪れる、過去最大規模のツアーとなります。詳細は以下のHPをチェック。
力毅のSNS
Photo:Goku Noguchi
Text:Atsuko Arahata