「気になる10代名鑑」の322人目は、冨永青志さん(19)。中学校から始めた木管楽器・オーボエを究めるべく、プロの演奏家を目指しています。進学校に通いながらも、オーボエ奏者として勝負すると決め、東京藝術大学に現役合格したという冨永さんに、音楽とどう向き合っているのか、詳しく聞いてみました。
冨永青志の活動を知る5つの質問
Q1. 自己紹介をお願いします。
「東京藝術大学の1年生で、オーボエを専門に学んでいます。将来的には、プロのオーボエ奏者を目指しています。
5歳からからピアノを習っていて、音楽にはずっと親しんできました。中学校で吹奏楽部に入って、オーボエに出会い、中学3年生のときに音楽の道に進もうと決めたんです。それで、高校では部活動ではなく、ジュニアオーケストラに入団して音楽を続けてきました」
Q2. プロになるために、意識していることは?
「量だけ練習しても、いい演奏はできないんですよ。演奏する以前に、楽譜からどれだけ理想の音楽をイメージできるかが大切だと思っています。そのためには音楽に向き合って、自分が何を考えたか、感じたのかできるだけ明確にしたい。それがなかなか難しくて、いまの課題でもあります。
音楽に向き合うとき、作曲者が考えていたことや、時代背景を知ろうとすることはもちろん意味があるけど、それだけでは足りなくて。時代も楽器も違うので、当時の作曲者が考えたことは理解しきれないし、そのまま伝えることは不可能だから……。だからこそ、いまいちばん作品に近付くことができる自分がどう感じたのか、それを表現するしかないんです」
Q3. これまでで印象的だった出来事は?
「高校3年生の夏、オーケストラの演奏会で、著名な指揮者の方が指揮してくださったんです。その演奏会では、それまで味わったことのない不思議な感覚を味わいました。自分が楽器を演奏しているという感覚がなくなって、そこにあるべき音楽が自然と流れていくような、現実離れした感覚で。そのときは多分、僕だけでなく、他の団員も、もしかするとお客さんもそう感じていたと思います。
この経験を通して、やっぱり音楽はその場を非現実的な空間にする力を持っていると改めて認識して。その非現実的な世界を作り出すのが理想。演奏家として、理想の在り方を身をもって体感した出来事でした」
Q4. 音楽を続けられる原動力は?
「自分に満足しないことです。足りないことはわかっているので、ひたすらやるだけですね。たぶん、いまの自分に満足するということはないです。プロになっても、引退してからもそうだと思います。レベルが高くなるにつれ、悩みのレベルも高くなっていくと思うので。
藝大という環境も大きくて。まわりもみんなストイックですし、常にお互いの演奏を聴き合うので、一切気が抜けなくて。手を抜くとすぐにわかっちゃいますから(笑)」
Q5. 将来の展望は?
「まず在学中に、ヨーロッパに留学したいと思っています。日本でできる限りヨーロッパの感覚を身に着けたうえで、現地の人と対等に交流したいです。日本で学びきれないことを学びたいと思っています。
将来的にはオーケストラに入団して、プレイヤーとして活動すること。まだどの楽団に入りたいかは決まっていません。土地との相性もあるし、楽団ごとの音色の違いもあるので、これからいろんなことを知ってから、どこのオーケストラを志望するかを決めるつもりです」
冨永青志のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都杉並区
所属:東京藝術大学
冨永青志のSNS
https://www.instagram.com/tominaga_seiji/
Photo:Eri Miura
Text:Minori Abe