Steenz Breaking News

バンコクのスラム出身ラッパー、Eleven Finger。逮捕されてもなお、貧困や政権批判のメッセージを発信し続ける理由は?【Steenz Breaking News】

バンコクのスラム出身ラッパー、Eleven Finger。逮捕されてもなお、貧困や政権批判のメッセージを発信し続ける理由は?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、タイのスラム出身のラッパー、Elevenfingerさんについて、ご紹介します。

社会問題に鋭く切り込む、スラム出身のラッパー

ElevenfingerさんのInstagramより参照

タイの首都・バンコクにある国内最大のスラムで生まれ、近年、国内外で注目が集まっている、タイ人ラッパーのElevenfingerさん(21)。貧困問題や、軍事政権への抗議に関するメッセージを、ラップを通じて発信しています。軍事政権による言論弾圧が続いているタイで、逮捕されるリスクも高い中、なぜこうしたメッセージを伝え続けているのでしょうか。

地元スラムのリアルを伝える歌詞の数々

 

 

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「人生で知っているのは貧困だけ」「息子には学校を卒業して、スーツを着てネクタイを締め、エアコンの効いた部屋でビールを飲んでほしい」

Elevenfingerさんのラップの歌詞は、スラムでの貧しい暮らしがベースとなっていて、貧困脱却への切実な思いが伝わってくる内容となっています。

Elevenfingerさんが生まれ育ったクロントーイスラムは、約10万人が住むといわれている、バンコク最大のスラムです。バイクタクシーの運転手や清掃員、露天商など、貧困層の人々が、密集したプレハブ小屋で暮らしています。

スラムの人々は、バンコクの経済発展に欠かせない役割を担っているのに、人々は見下され、無視されている。ここの暮らしの大変さを知ってほしい」―Elevenfingerさんはそんな思いから、ラップを始めるようになったそうです。

ラッパー活動の傍らで抗議デモにも参加

 

 

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Elevenfingerさんのラップは、スラム内で支持されるだけでなく、YouTubeに音楽を投稿してからは、国内でも注目を集めるようになり、ファンも増えてきました。

さらにここ数年、経済発展が続く中で、貧困層の暮らしが改善されないことに抗議するため、政権批判の抗議デモにも積極的に参加するようになりました。タイでは軍事政権下で、言論弾圧がいまだ行われており、政権批判を公共の場で行った多くの若者たちが逮捕されています。Elevenfingerさんも、これまで幾度となく警察に逮捕されたといいます。

とはいえ、音楽の稼ぎだけでは生活は苦しく、パーキンソン病を患う祖母の治療費も捻出するのが厳しい状況。しかし、「ここでやめれば負けてしまうので、これからもラップとともに戦い続ける」と決意を話してくれました。

Netflixのドキュメンタリーにも出演

 

 

こうしたElevenfingerさんの取り組みは、タイ国内のみならず、海外からも関心を集めています。2020年には、NetflixでElevenfingerさんらのドキュメンタリー「School Town King」が配信され、Elevenfingerさんの存在が広く認知されるようになりました。

 

 

さらに昨年6月には、カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」から取材され、Elevenfingerさんのラップを通じた抗議活動の様子がドキュメンタリーとして放送されました。

最近では、タイやマレーシアなどで開催される音楽イベントに参加するなど、国内外で活動の幅を広げています。今後の抱負については、「今後もラップを通じて、タイが直面する問題を発信し、人々の行動変革につなげていきたい。タイの問題だけでなく、隣国ミャンマーの軍事政権下での人権侵害や、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する音楽も制作していきたい」と語ってくれました。

ElevenfingerさんのSNS

★YouTube

 

ElevenfingerHipHop Artist From Klongtoey The Biggest Slum In Thailand🇹🇭www.youtube.com

 

★Instagram

 

 

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Text:Risako Hata

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Risako Hata

ライター

タイ在住のジャーナリスト。共同通信系メディアにて5年のタイ駐在を経て独立。現在は、アジアの経済や人道問題、SDGsに関連する記事を執筆。

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