タイムリーな話題から、カルチャー、さらには社会問題まで、さまざまなテーマについて、リアルな10代の声を聞くシリーズ「10代リアルVOICE」。
今回のテーマは「2022年に読んでよかった本」。“若者の活字離れ“ともいわれますが、それでも本は私たちに新たな気づきや言葉を教えてくれるもの。そこで、2022年に読んで印象に残っている本について、5人のティーンに聞いてみました。
1. 戌宮はつねさん「曲づくりをするときにためになった一冊!」
『作曲はじめます!』/monaca:factoryほか
「私は『多摩美アイドル ∞letteパレット』の2期生メンバーとして活動していて、曲作りもしているんですが、この本がなかったら曲はつくれなかったと思っています。曲づくりについて学べるマンガで、作曲に興味がある人にとって、参考になることが多いと思います。
昨年、展示するミュージックビデオのための楽曲をつくったのですが、大学の先輩たちに褒められてとても嬉しかったです! 将来は完全セルフプロデュースのアイドルになりたいと思っているので、これからも曲づくりに励んでいきたいです」
2. しめじさん「環境が変わるたびに、読み返しているし、これからもきっと読み返すと思う」
『入社1年目の教科書』/岩瀬大輔
「『入社1年目の教科書』という本です。 初めて読んだのは高校2年生
のときで、それ以降、環境が変わるたびに読み返しています。
特に去年の夏に読み返したとき、いままでと読み取り方が違った感覚がありました。 この本には3つの原則と50のルールがまとめられていて、いままでは『これはできていて、これはできていない』というようにチェックしながら読み返す本でした。
でも今回読んだときは、『これがこの人はできていないから、自分はこの人と会話していてストレスを感じるんだ』とか、逆に『いま自分はこれができていないから、コミュニケーションエラーが起きているんだ』と、ひとつひとつのルールや原則を、実際の事例に落とし込んで読めるようになって。自分自身の成長を感じられましたし、きっとこれからも定期的に読み返していくと思います」
3. ささきなるみさん「大河ドラマを副音声付きで見ているような感覚で読める、悩みや苦しみに寄り添ってくれる一冊」
『死してなお踊れ 一遍上人伝』/栗原康
「高校の古典の先生におすすめしてもらって、いつか読もうと思っていた本です。たまたま本屋さんで見かけて手に取ったのですが、『もっと早く読めばよかった!』と思いました。この本はアナキズムの研究者が書いているだけあって、型破りな文体で全然飽きず、まるで大河ドラマを副音声付きで見ている感覚で読めるんです。
時宗自体は、日本史の授業で習いますが、実際に一遍上人がどういう経緯で、どんな信念で踊り出したのか、よくわかっていませんでした。なぜ集団で踊る必要があったのか、そもそも念仏で人はどう救われるのか、なぜ生きることが苦しいのか……など、根本的なことがこの本を読むとスッと入ってきて。
読み始めは興味本位だったのですが、読んでいくうちに、こんなに普遍的な人の悩み苦しみに寄り添ってくれるものなんだと驚きました。 現代の私たちも、苦しいときはひたすらに踊るべきなんじゃないかという気がしてきます」
4. 浅葱凜さん「アドラーは知らなかったけど、面白かった!何度も読み返すと思う」
『アドラー100の言葉』/和田秀樹
「 これは100個のアドラーの言葉と、その解説が載っている本です。アドラーといえば、対人関係の哲学が有名で、『嫌われる勇気』の源流です。私はこの本を手にするまで、アドラーに関する知識がまったくなかったけど、すごく面白く読めました。
本を手にした当時、すごく好きだった恋人に振られたところで……。『どうして合わなかったんだろう』という純粋な問いから手に取った一冊でした。特に印象に残っている言葉は、『雨が降ったら自分で濡れないように傘をさすように、他人の問題というものはその他人の問題なのだから、自分があれこれ口出しすることはない』というものです。これ以外にも、たくさん心に残っている言葉があって、きっと何度も読み返したくなると思います」
5. 秋村遊さん「自分が書いているテーマとリンクする一冊で、考えさせられる本です」
『ヨシアキは戦争で生まれ、戦争で死んだ』/面高直子
「大学で『ハーフ差別』についていろいろな資料を集めていたときに出会いました。戦後日本でたくさん生まれた、日本人女性と米兵との間に生まれた、ひとりの『混血孤児』の人生を書いたノンフィクション作品です。戦時中や戦後のことをすごく考えさせられる本でした。
私は小説家としても、大学の仲間とも、いろいろ書いているんですが、いま書いている小説の中に『ハーフ差別』というテーマがあって。この本を読んで考えたことを踏まえて、戦後といまの違いなどを考えながら執筆しています」
ジャンル問わず、さまざまなタイトルが挙げられました。自分の活動と近しい分野の本を挙げている10代が多い一方、哲学書も多く挙げられていたのが印象的でした。こうして個別に聞いてみると、「活字離れ」とひと括りにできないような気がします。
Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya