世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、タイ人の若者が関心を持っている社会問題について、タイと日本の魅力を発信しているYouTuberのびーむ先生のインタビューを通じて、ご紹介します。
登録者60万人のYouTuber・びーむ先生とは?
「サワーディーカー(こんにちは)、びーむチャンネルへようこそ!」という元気な挨拶から始まる、びーむ先生のYouTubeチャンネル。日本の魅力や、タイと日本の文化の違いなどについて紹介しています。チャンネル登録者の約60万人のうち、多くが日本に関心を持つタイ人の若者が占めているそう。
そんなびーむ先生に、タイ人の若者たちは、いまどんなことに関心があるのかを聞いてみました。
幅広い問題で「平等」求める声
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幼いころに『ドラえもん』を読んだのをきっかけに日本に興味を持ち、日本語を学んできたびーむ先生。2008年ごろに留学先の日本から、趣味の動画や、日本人向けのタイ語学習動画を配信し始めました。
そしてタイに戻ってからは、タイ人向けに日本語学習動画の配信をスタート。すると、日本に関心を持つ多くのタイ人から注目を集めるようになり、現在は日タイをつなぐ象徴的な存在になっています。
そんなびーむ先生によると、タイ人の若者の間では、以前よりも国内外の社会問題への関心が高まっているといいます。
「最近のタイ人の若者の間では、特に、『平等』という言葉がSNSでよく使われるようになりました。それは、ジェンダー、経済的格差、学校内での人権の尊重など、幅広い分野で共通のテーマとなっています」
一般的にLGBTに寛容な国として知られるタイですが、一部ではいまだにそうした人々への偏見や差別が根強いのも事実です。さらにタイは、世界でも貧富の差が激しい国のひとつです。タイの人権団体などの調査によると、経済発展を遂げて世界的な都市となったバンコクでは、人口の約20%がスラムでの生活を余儀なくされているといいます。また、学校ではいまだに厳しい校則や、教師による体罰がはびこっており、そうした現実に疑問を訴える声が広がっています。
SNSの発展で社会問題が明るみに
このような社会問題は、タイ国内でも、以前から認識されていました。ただし、びーむ先生によると、「タイでも、フェイスブックやツイッターなどのSNSが若者の間で普及し、誰かが悪いことをすると、すぐにネットで広められるようになりました。そうした動きの中で、若者たちも、おかしいことはおかしいと、声をあげやすくなったのだと思います」と語ってくれました。
日本でもこれまで、ネット上の告発によって、さまざまな社会問題が明るみになってきましたが、タイでもまったく同じことが起きています。SNSでの情報発信や情報共有は手軽にできることから、多くの若者が、社会問題の解決に向けて、積極的に行動を起こそうとしているそうです。
タイではメジャーでない「ごみ分別」
このほか、タイ人の若者の間では、環境問題に関する意識も高まっています。「特にタイの若者の間では、交通渋滞による大気汚染や、ごみ処理の問題、異常気象による洪水などの問題への懸念が高まっています」と教えてくれました。
ごみ問題については、タイではここ数年、燃えるごみ、燃えないごみの分別や、プラスチック製品のリサイクルなどの対応がようやく進んできました。一方で、一般の人々の間では、ごみの分別に関する知識は日本ほど普及していません。
びーむ先生は「幼いころにごみの分別方法や重要性について教えてもらう機会がないんです。それに、高齢者の方は、いまだにごみを川に流せば、すえて自然に還ると思っている人も多いのです」と話します。
教育レベル、住む地域で大きな違い
このようにタイで社会問題への関心が高まる中、びーむ先生は、今後は子どもたちへの教育動画の配信を強化していきたいといいます。
すでに、「日本とタイの教育制度の違い」や「日本とタイの交通の違い」など、両国の文化を対比させた動画を10本以上出しており、「お互いの文化について考え、日本の良い部分があったらタイでも取り入れられないか、考えるきっかけになれば」と話します。
そして、これからの展望としては、「タイは日本と違って、住んでいる地域によって、学校の教育レベルの差が大きく違います。いつかタイでも、誰でも平等に教育が受けられる社会になればよいと思います」という前向きなビジョンを語ってくれました。
日タイの懸け橋となっているびーむ先生の挑戦は、これからも続きます。
びーむ先生のSNS
★YouTube
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Reference:スラムの現状|ドゥアン・プラティープ財団
Image&Text:Risako Hata