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車いすの人にとってはよくても…「目の前の人に向き合う」姿勢で、障害福祉に挑む大学生【山野里紗・19歳】

車いすの人にとってはよくても…「目の前の人に向き合う」姿勢で、障害福祉に挑む大学生【山野里紗・19歳】

「気になる10代名鑑」の1270人目は、山野里紗さん(19)。障害福祉の領域で「自助具」と呼ばれるプロダクトの開発に取り組み、高校生のキャリア支援にも力を入れています。障害福祉について調べるために、実際にカナダに渡航したという山野さんに現地での気づきや、活動で大切にしていることについて聞いてみました。

山野里紗を知る5つの質問

Q1.いま、力を入れていることは?

一般社団法人MINOVA(現学生団体TOM JAPAN)の理事として、自助具と呼ばれるプロダクトを製作しています。

自助具というのは、体に不自由がある人や障害のある人が、日常生活での動作を自力でできるように補助する道具のことを指していて。納豆や豆腐のパックを片手では開けられない、弱視の人が暗がりでは白杖を使いにくいなど、既製品で対応しきれない小さな生活の困りごとって、実はたくさんあるんです。

MINOVAでは、作業療法や工学、教育など多様な分野を専攻している学生で一丸となって、製作に取り組んでいて。車いすを使って街に繰り出してみたり、目が見えない状態で歩いてみたり、実際に当事者の困りごとを把握しながらつくっています。

3Dプリンターを使ってデザインしているので、データは全世界誰でもダウンロードできるかたちにもなっていて。自分たちの手が届く範囲以上に、多くの人に自助具を使ってもらえたら嬉しいですね。

また、個人的には長崎県内の高校で、探究学習やキャリア教育の支援にも力を入れています。高校時代から探究活動をしてきた背景を活かして、『総合的な探究の時間』のサポートをおこなっていて。社会人の人たちと協働しながら、高校生が自分の進路や価値観について考えられる授業づくりを模索しています」

Q2.活動を始めたきっかけは?

祖母の家で、本来は生活を助けるバリアフリーの手すりが、車いすで通りにくくなってしまい、かえって生活を圧迫する“バリア”になってしまっていたことがありました。

それからというもの、『誰かにとっては便利なものが、別の誰かにとっては不便になるかもしれない……。』という障害福祉へのモヤモヤを抱いて調べていくうちに、カナダで障害福祉が進んでいることを知って。文科省の『トビタテ!留学JAPAN』で留学し、現地で障害福祉について調査しにいきました。

現地で聞き取りをしてみると、視覚障害のある人が『他の人にとってはカナダは過ごしやすいかもしれないけれど、自分にはそんなことはない』と話してくれて。車いすの人にとっては使いやすい環境が、視覚障害のある人にとっては危険になり得る場面もあったんです。それで、すべての人にとっての最適は簡単には成立しないという現実に気づかされましたね。

帰国後、ご縁があって、障害福祉領域で活躍する日本有数の団体『共用品推進機構』の星川安之さんに出会いました。そこでは、障がいは社会の中で作り出されるものであり、そもそも障がい自体をつくり出さないという姿勢で障害福祉に向き合っている人たちがたくさんいて。『こんなふうに障害福祉と向き合っていいんだ……!』と、かつてのわたしのモヤモヤが晴れた感覚があって、自分でもプロダクトづくりに挑戦してみることにしたんです」

 

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Q3. 活動で大切にしていることは?

当事者かどうかに関わらず、ひとりの人間として向き合うホスピタリティ精神を持つことを大切にしています。

わたしたちのプロダクトづくりに協力してくれているNeed-Knower(障がいがある人)は、自分の持つ障がいを受け入れて、社会に生かしたいと思ってくれている人たちです。一方で、特徴として捉えられるのがいやだと感じる人ももちろんいます。障がいの有無をそのまま人格に結びつけてしまうと、心の壁が生まれてしまいますよね。

だから、わたしは立場で人を見るのではなく、目の前の相手をひとりの人として知ろうとすることを大切にしています。関係性は、相手の気持ちを知ろうとするところから始まるって、純粋に信じているんです。わたしは障がいがあるわけではないけれど、障がいのある人に手を差し伸べるよりも、わたしという人間に魅力を感じてもらって、仲良くなって、いっしょにいたいだけです」

Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?

障害福祉の領域でも、キャリア教育の領域でも、共創の力で困り事を乗り越えていく環境が当たり前の社会をつくりたいです。

いまの社会には、障がいの有無や年齢、立場によって人を分けてしまう空気があると感じていて。そうした区分けは必要かもしれませんが、『自分とは違う存在なんだ』という認識を生んで、互いを知ろうとする機会を減らしてしまっているんじゃないかと思うんです。例えば、教育現場では特別支援学級というかたちを設けることで、相手のことを知る余地がなくなってしまっている現状があります。

立場による切り分けをなくしていくことで、一人ひとりが相手と向き合いやすくなって、面白い共創を生んでいきたい。その先に、社会がよりよくなっていくはずです。とても難しいことかもしれないけれど、難しいからこそどんなことができるか考えるのが楽しいんです」

Q5.将来の展望は?

プロダクトづくりや事業づくりなどやりたいことがたくさんあるので、それらを通じて、人と人が立場を越えて出会い、共に考え抜く楽しさを広げていきたいです。

MINOVAでは、自助具の開発に加えて、障がいのある人とない人がいっしょに参加できるワークショップの開催や、学生の参加者を募ってプロダクトを短期集中で製作するプログラムも立ち上げていて、団体としての活動の幅が広がっているところです。まずはそれを入り口に、障害福祉の関係人口を増やし、立場の異なる人同士がいっしょにものをつくることができる空気感を醸成していきます。

キャリア教育の領域では、生徒一人ひとりが、自分は何に取り組んできたのか、なぜ探究するのかを自分の言葉で語れる状態をつくりたいです。現場の先生たちの状況や制度とのギャップも踏まえながら、無理なく続けられるかたちを引き続き模索していきます。

何をするにも、結局はわたし自身がワクワクしてしまっているんです(笑)。今後も、わたしが面白いと感じるものに携わり、周りの人にもワクワクを広げていきたいです」

山野里紗のプロフィール

年齢:19歳
出身地:福岡県
所属:福岡女子大学国際文理学部国際教養学科、一般社団法人MINOVA
趣味:バックパッカー旅、インドカレー(ビリヤニが大好き!)
特技:眉毛を動かすこと、アイスの早食い
大切にしている言葉:Everything happens for a reason (高校の恩師からもらった言葉)

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Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami

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Taishi Murakami

ライター

ライター。2025年4月にSteenzへジョイン。慶應義塾大学2年。大学生活の傍ら「気になる10代名鑑」での記事制作を担当。スタートアップ、パブリックアフェアーズ、終活やケア領域まで多様なテーマに跨って活躍している。

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