自分らしくあるっていったいなんだろう。Z世代がNetflix『クィア・アイ』出演のKanさんと考えた Steenz×Tinder Japan Talk Event(前編)

リビングから電話を繋いで
Tinder Japanにて公開中のアプリを通じて出会ったカップルのストーリーを紹介する特集記事「Swipe Story」に、国際カミングアウトデー(※1)を記念したストーリーが追加されました。これをきっかけに、Tinder JapanとSteenzがタッグを組んで、「自分らしくいるためのケア習慣やジェンダー、セクシュアリティをフラットに話してみること」をテーマにオンライン対談イベントを実施しました。(前後編の前編)
Tinderではジェンダーを15種類以上の中から最大4つまで選択できるなど、ユーザーが自身のアイデンティティに応じて柔軟にプロフィールを設定をすることができます。よりLGBTQIA+コミュニティやそこに連帯を示す「アライ」の自己認識・自己表現が現状の自分を肯定しながらマッチング体験ができるよう設計されているほか、性的同意に関する啓発などもアプリやコンテンツを通じて発信されています。
また、Steenzはこれまでも、ユース世代が抱えるモヤモヤや違和感を、当事者の言葉で社会に発信してきました。今回はその延長線として、自己表現について率直に語れる場としてトークイベントを開催。クリエイターとして、またクィアやアライとしての自己表現にまつわるトークが展開されました。
ゲストには、「Swipe Story」にてご自身とパートナーとの出会いが公開され、Netflix番組『クィア・アイ in Japan!』への出演でも知られるKanさんを迎え、Steenzのユースとの対話を通して「自分を大切にすること」や「他者と関係を築くこと」について考えていきました。
Steenz世代のユースたちはクィア当事者やアライとして、またNetflix番組でKanさんを知ったというユースも参加しました。
参加者
Kanさん

Photo: Aleksandar Dragicevic
2019年にNetflixの番組『クィア・アイ in Japan!』エピソード2に出演し、イギリスでの生活や自分らしさについてSNSで発信。化粧品会社に勤務し、化粧品ブランドのマーケティング・PR業務を担当。
足浮梨ナコさん(トラックメーカー、ミュージシャン)
大学でも音楽を勉強中。Kanさんの大ファン!
Annaさん(ZINE制作者、クリエイター)
ギャップイヤー2年目。教育分野に興味あり。
Nagiさん(ギタリスト・作曲)
『クィア・アイ』はお父さんに勧められて視聴し感動…!
ポカポカできる“自分らしさ”の保ち方を知る。
今回のゲスト、Kanさんはイギリス・ロンドン在住でNetflix『クィア・アイ in Japan!』に出演し、LGBTQIA+コミュニティをはじめ、多くの人の背中をそっと押してきた存在。見た目や肩書きではなく、「その人自身」をまっすぐ見つめる姿勢と、言葉選びの丁寧さが印象的。イベント冒頭から、Kanさんの柔らかい雰囲気に場の緊張がほどけ、安心して話せる空気が生まれていきました。
Kanさんは日本で過ごす中で感じていたセクシュアリティやアイデンティティの悩みがカナダへの留学で様々なセクシュアリティ、バックグラウンドの人たちに会い話すことで感銘とワクワクを受けて帰国。カナダで見た光景と異なる日本の状況から、学校に通いながらサークル活動を設立して以来、アクティビズムや、発信活動は、10年以上行っています。
Nagi:今日はありがとうございます。早速なのですが、日本からロンドンに拠点を移して生活する中で始めた欠かせないルーティーンや、気をつけていることはありますか?
Kan:まず、太陽が大事だなと気づきました。しばらく気づかなかったんですけど、静岡県出身で大学も東京だったので生活環境は太平洋側で、太陽を浴びることができてたんですよ。でもイギリスに来てから、気持ちが沈むことが増えて最初は不思議だったのですが、最終的に太陽が関係していると知ったんです。
Nagi:なるほど。
Kan:イギリスの日照時間ってとても短いんです。東京の冬の日照時間と、ロンドンの冬の日照時間って、体感が東京の半分ぐらい。今日だと朝の8時とかに日が昇って、夜4時ぐらいには真っ暗になっちゃうんですよ。
メンタルヘルスに大きく影響があると知ってからは少しでも太陽が出てたら窓開けたり、ビタミンD取ったり、晴れてたら散歩したりしています。「ライトセラピー」という方法があって、自然光を模した光を発するライトもたまに浴びています。
なのでメンタルヘルス周りのことは日頃から意識しているかもしれないです。

Rinako:少し関連するのですが、Kanさんが自分らしさを保つために、どんなことを大切にしているかお聞きしたいです!
Kan:「自分らしさ」という捉え方は人それぞれだと思うんですけど、僕はワクワクしてる状態とか、超ハッピーっていうよりも、「あぁ、心地いいな」みたいな感情だと思っています。よく想像するのは、「お風呂入っててポカポカして気持ちいい」だとか、「自分は自分でいいんだ」みたいな。英語で「Comfortable in my own skin」というんですけど。
自分の身体に馴染んでるみたいな状態が、自分らしいなって思うので、そういう状態になれるようなルーティーンをいくつか持つことを意識的にしています。さっき話した散歩もその内のひとつだし、ジムでの運動や料理もしていて、特に餃子作りが好きです。餃子って具と皮があったら、あと包むだけで編み物っぽいじゃないですか。没頭してものができるっていうのがメディテーション(瞑想)っぽくていいなと思います。中には、少しハードルを感じることもあるけど、それを終えた時の自分が「自分のこといいな」とか「やってよかったな」と思えることならやるように心がけています。
しんどい社会でそれでも自分をケアするには
Anna:イギリスで生活する中で日本との違いはどんなことがありますか?
Kan:まず前提として、日本では現在も大切なパートナーとのこのパートナーシップが法的にカバーされてない、保障されていないっていうところが生きづらいと思います。自分のパートナー含め、将来が全く描けなかったから移住を決断しました。イギリスでは同性婚ができるという点ではよかったです。一方でイギリスではアジア人として不当な扱いをされることもあるし、僕は第二言語として英語を話すのでそこでの生きづらさはあります。
Rinako:まさに今日、東京高裁で同性婚に関する判決がでて、ショックを受けていました。(※2)

Kan:そうですよね。選択的夫婦別姓などもそうですが、そういう面以外では僕は日本の好きなところもたくさんあるし、表現において日本って自由だと思います。服も自由に着ようとか、好きな色で着ようとか。そういうところからポップカルチャーが生まれている背景もあると思います。あくまでも僕の経験なんですけど、イギリスだとメイクするのもちょっと怖いなとか、自由に服着るの怖いなとか、自分にとって、じゃあちょっとジェンダー表現しようとかも自由にしづらい面もある。ヘイトクライムとか暴力はイギリスでも起きていて、経験上身近に感じてます。(後編へ続く。)
※1 毎年10月11日で、性的指向や性自認を公表(カミングアウト)したLGBTQ+の人々を祝い、社会の理解を深め、誰もが自分らしく生きられる社会を目指す日です。1987年の大規模なワシントンマーチを記念して1988年に制定され、当事者だけでなく支援者も参加し、啓発イベントなどが行われる。
※2 解説:2025年 11月28日に東京高等裁判所は同性婚を認めない現行法の規定を「合憲」だとする判断を下した。この判決は、全国6件の同性婚訴訟のうち最後に下された他の5件がいずれも制度の問題点を指摘してきた中で、憲法の規定に沿う妥当な判決という結果になった。
Writer:kai






