
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、「日本自然保護大賞2025」についてご紹介します。
自然保護を表彰する「日本自然保護大賞2025」とは?
2014年から始まり11年目を迎えた「日本自然保護大賞」。1951年に創立された、日本で最も歴史のある自然保護団体「日本自然保護協会」による表彰の取り組みです。2025年10月17日、今年度の受賞者が発表されました。
日本自然保護協会は、日本中が開発に沸き立っていた1950年代から尾瀬や屋久島、白神山地などの重要性を指摘し、地域の団体と連携し、地道で継続的な保護活動を続けてきました。そんな団体が表彰する取り組みは、地域にとって、象徴となるような自然を守っているものばかり。受賞した取り組みを、部門ごとに見ていきましょう。
保護実践部門は多様な仲間で兵庫県の湿地を守る取り組みが大賞
兵庫県三田市にある皿池湿原における「皿池湿原の守り人の活動~地域の宝を守って、次世代へ繋ぐ~」は、実績をあげている活動に贈られる保護実践部門の大賞を受賞しました。
1990年代に開発の波にさらされた皿池湿原でしたが、調査によりハッチョウトンボ、ヒメタイコウチなどの湿原特有の昆虫が発見され、保全されることになりました。里山にある湿地は、定期的な樹木の伐採や草刈りなど里山としての管理がなされなければ、樹木が生え森林化していってしまいます。

そこで、2017年から三田市が事務局となり、「兵庫県立 人と自然の博物館」などの専門機関や、市民及び企業等からなるボランティア組織「皿池湿原の守り人」が発足。さまざまな主体が継続的な保全活動を行っていることが評価され、大賞の受賞となりました。
教育普及部門では地域に開いた環境教育が受賞
愛媛県今治市にある東芝ライテック株式会社今治事業所の「地域連携による希少種保護活動から環境教育」は、教育普及で実績をあげている活動に贈られる教育普及部門の大賞を受賞しました。
東芝グループは、国内外の約60拠点で生物多様性保全活動を推進する方針を打ち出しており、今治事業所もその拠点のひとつ。2010年に構内の樹木調査から取り組みをはじめ、社内活動の啓発のほか、地域社会の活動にも参画するようになりました。

2015年からは、近隣の今治市の織田ヶ浜にて、希少植物であるウンランやハマビシなどを含む海浜の生態系保全活動をおこなっています。地域の小学生の授業の一環として、希少動植物の調査観察やビーチクリーン活動なども実施し、延べ1,500名以上の参加者と活動してきた点が評価されました。
子ども・学生部門は高校生の生物多様性を守る水田づくりが受賞
愛知県立佐屋高等学校は、普通科の他に、農業科、家庭科がある高校です。農業科の稲作専攻生の生徒が多く所属する科学部では、授業ではできない水田の生物や環境についてフォーカスし、ドジョウやナゴヤダルマガエルの保全活動に取り組んでいます。2019年からの継続的な活動が評価され「水田環境の保全、生物多様性を守るための高校生の取組」が子ども・学生部門の大賞を受賞しました。

2025年には、実際にドジョウの生息数が増加するなど保全活動の実績を上げています。その上で、外来種対策を実施したり、大学や外部研究者と連携して研究レベルを上げ、地域の子どもへの啓発活動も実施したりするなど、総合的な活動が行われている点が評価されました。
地道な活動が評価される自然保護活動

いずれの大賞も、草刈りや清掃活動、調査など地道な活動を長年行ってきたことが評価されています。小さなことからコツコツとは言いますが、それを長年継続させるのは大変なこと。自然保護には、継続させる仕組みを作り上げ、関わる人が変わっても活動が続いていくことが大切と言えるでしょう。
Reference:
公益財団法人 日本自然保護協会:日本自然保護大賞
Text:Itsuki Tanaka






