
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカで問題となっている、肥満における状況について紹介します。
アフリカの主食だらけのローカル食が肥満の原因に?
世界で問題となっている肥満の増加。肥満問題の解決を目指す「世界肥満連盟」は、肥満はアフリカとアジアの低・中所得国で急激に増加していると言います。
アフリカにおいて、原因のひとつとして考えられるのは、まずは食習慣です。筆者が住んでいるウガンダでもよく見られる日常ですが、ウガンダ人が家やローカルレストランで食べる食事では、主食3種類に豆や肉のスープといったメニューが多く見られます。野菜は全く入っていないか、トマトペーストとして入っているだけ、ということも。現地の学校には日本の家庭科のような授業がないそうで、トレーニングやスポーツをしている人でなければ栄養に関する基礎的な知識もない、というのが現状だと言います。

たとえ栄養の知識があっても、とくに東アフリカでは「食事は楽しむよりお腹を満たすもの」という意識が強く、食事の中でお腹を満たせて安く済ませられる主食の割合が大きいのだそうです。気候変動により雑穀や豆類が減少し、輸入品の小麦粉や加工品などの消費が高まったのではないか、という指摘もあります。
また、スーパーマーケットのお惣菜売り場からストリートフード、さらには病院の売店に並ぶ食べものや飲みものですら、あまり健康的とは言えません。パンやサモサ、ソーセージ、チキンパイ、クッキー、マフィンなど、偏ったラインナップであることもしょっちゅうです。飲みもの売り場にはソーダとジュース、水、アルコールしか売られていないことがほとんどで、日本で見られるような多様な種類の健康的なお茶などは見かけません。

一方、都市部では、大手ファストフード店の食事などが豊かさの象徴となっています。筆者が住む首都のカンパラには多くのレストランが存在しますが、富裕層のウガンダ人にとっては、チキンやハンバーガー、ポテトなどが人気です。
アフリカではなぜ女性が肥満になりやすい?
そんな中、先述の「世界肥満連盟」の2025年の調査『世界肥満地図2025』によると、現在、アフリカの男性の25%、女性の40%がが肥満もしくは太り過ぎの状態にあるそうです。さらにその割合は、2030年までに、男性は26%、女性は45%にまで増加すると予想されています。世界の他の地域では男性の方が多いか、男女差がない場合が多い中で、アフリカにおいて、なぜ女性の方が肥満になる確率が高いのでしょうか。

ひとつめの理由として考えられるのは、アフリカのライフスタイルです。アフリカでは多くの地域で仕事や家事は性別によって分業されています。多くの女性が家庭で家事や育児、介護に多くの時間を費やしているため、男性より運動する機会が少ないのだそうです。

HIVの治療薬も、原因のひとつだと考えられています。WHOによると2024年の新規HIV感染者の50%はアフリカ地域にいます。さらに、HIV/AIDSの撲滅を目指す機関「国連合同エイズ計画(UNAIDS)」の調査によると、西アフリカと中央アフリカの数カ国において、20〜29歳のHIV感染者は男性よりも女性の方が5〜9倍高いという結果になったそうです。HIVの感染の進行を抑えるための抗レトロウイルス療法は体重増加のリスクが上がるという研究結果が発表されています。実際に、成人のHIV感染率が世界で4番目に高い南アフリカでは、すでに女性の2/3が肥満もしくは過体重です。
肥満の認識にも課題
では、現地では肥満をどのように捉えているのでしょうか。アフリカの一部の地域では、肥満やふくよかさを豊かさや健康の象徴とする考えが残っているようです。グローバル化とともに、特定の体型を美の基準とする風潮は減ってきていますが、筆者の住むウガンダでも「太り過ぎは良くないけれど、痩せているのは病気のリスクがあるように思える」という声を聞いたり、「適正体重」という言葉や概念を知らない人が多くいたりするのが現状のようです。
世界での肥満の原因としてファストフードやインスタント食品の普及がよく理由として挙げられる中、アフリカの女性の肥満率にはアフリカならではの理由もあることがわかりました。また、アフリカの多くの地域では、健康に関する教育や公共保健政策が行き届いていないことも課題のひとつです。今後、アフリカ諸国が国民の健康にどのようにアプローチしていくか、注目していきたいです。
References:
The Guardian「Nearly half of women in Africa will be obese or overweight by 2030 – study」
World Health Organization「Data on the size of the HIV epidemic」
UNAIDS「Young women more affected by HIV than young men in western and central Africa」
GLOBAL NOTE「世界のHIV感染率 国別ランキング・推移」
Text:Hao Kanayama






