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「出稼ぎ」のつもりがロシア・ウクライナ戦争に?アフリカで広がる詐欺求人による人身売買【Steenz Breaking News】

「出稼ぎ」のつもりがロシア・ウクライナ戦争に?アフリカで広がる詐欺求人による人身売買【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカでの被害が報告されている、新たな手口での人身売買について紹介します。

「出稼ぎ」を利用した人身売買か

アフリカで「出稼ぎ」は現地で人生を変える機会として前向きに捉えられていることが多くあります。そんな中、昨今、アフリカの人々がロシアでの留学の機会や仕事の求人で応募したところ、リクルーターに騙されてロシア・ウクライナ戦争で戦わされている、という証言が多く報告されています。

同様の手口での人身売買が相次いで報道

2025年9月、ロシアで兵士として戦っているケニア人がウクライナ軍に捕まり、話題になりました。彼はケニア出身のアスリートで、スポーツエージェントを通してロシアに渡航し仕事を約束されていたと報道されています。しかし、ロシア語で書かれた契約書に署名した後、パスポートと携帯を奪われ、軍事キャンプに連れて行かれたのだそうです。ロシア軍に徴兵されたことに気づくも逃げる選択肢はなかった、と証言しており、1週間の軍事練習を経た後、戦闘地帯でウクライナ軍に助けてもらうために降伏しました。

同時期、20人以上のケニア人が人身売買の疑いのある組織から救出されました。ロシアでの仕事の求人で集められたはずが、兵士として派遣されるところだったと言い、被害者の中にはビザや宿泊施設、旅行費などのやめに最大270万円支払う契約を結んだり、22万円の保証金を支払ったりしたと報道されています。

 

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また、ウクライナのメディアによるとガーナ出身の14人の男性が、ロシアでの警備や農業の仕事を約束されていたにも関わらず、騙されてロシア軍に入隊させられていたと言います。兵士以外にも、アフリカ諸国から数百人の女性が嘘の求人で集められ、モスクワの東にある戦争で使うドローンを生産する施設で働かされて他とも報道されました。

現地では、ロシアは人員不足に対処するために外国人労働者に依存しているのではないかという見方もあります。

背景にあるのは賃金格差やメディアリテラシーの低さ

これまでの報道によると、被害に遭った人々はロシア語で書かれた入隊の契約書を意味もわからないまま署名させられたり、入隊だと気づいてもリクルーターへ多額の旅費の返済を求められ支払いきれないことから署名せざるをえなかったりすると言います。

2025年10月、ケニアの現地メディアがロシアから帰国できたごくわずかなケニア人に取材した内容によると、被害者はロシアに到着するなりロシア語で書かれた契約書に署名し入隊するか、リクルーターが負担した多額のお金を返済する選択肢しかまかったと言います。最終的に被害者は100万円以上を支払うことに決め、ケニアに戻ってくることができたそうです。

被害者が絶えない理由のひとつとして考えられるのは、アフリカにおけるメディアリテラシーの低さです。求人の募集はソーシャルメディア上でインフルエンサーなどによって広められていることがあると言います。

これ以上被害者を増やさないためにも、政府からの警告やソーシャルメディアでの偽の求人募集の規制が求められることでしょう。同時に、背景にある賃金格差や失業率の高さ、教育格差などの構造的な課題にもどう向き合うのか、アフリカ諸国の対応が注目されています。

References:
Euronews「Kenyan athlete captured in Ukraine claims he was tricked into signing a contract with Russian army」
MILITARNYI「14 Ghanaian Men Tricked into Military Service for Russia」
BBC「Police break up ring trafficking Kenyans to fight for Russia in Ukraine」
Citizen Digital「Revealed: How Kenyans are getting tricked into joining the Russian military」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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