Teen's Snapshots

巨大な1円玉を手掛ける美大生の裏の顔は…お笑い芸人。日常の違和感をひろい上げ、豊かな世界にしたい【渡邉楽・19歳】

巨大な1円玉を手掛ける美大生の裏の顔は…お笑い芸人。日常の違和感をひろい上げ、豊かな世界にしたい【渡邉楽・19歳】

「気になる10代名鑑」の1126人目は、渡邉楽さん(19)。巨大な1円玉や「動く生肉」など、町中にユーモアあふれるアートをもたらす作品作りを手掛ける美大生です。その傍ら芸人としても活動しているという異色のバックグラウンドを持つ渡邉さんに、作品にかける思いやアートとお笑いの共通点について聞いてみました。

渡邉楽を知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?

東京藝術大学美術学部先端芸術表現科で学びながら、立体のアート作品を制作したり、パフォーマンスなどの表現活動をおこなっています。

立体作品では、直径90㎝程度ある一円玉を作って、渋谷のスクランブル交差点に設置したり、上野公園に置いてみたりとゲリラ的に配置しました。

この一円玉には、年号の記載や汚し加工など、工夫を凝らしながら念入りに作り込んでいます。ちなみに昭和43年は、一円玉が唯一発行されていない年なんですよ。

ほかにも、全長約2mの『動く生肉』を通りに出現させるなど、歩いている人の反応も含めて作品として捉えています。

大きさというのは、絶対ではなく相対的に決まるもので、ときには錯覚を起こすこともあると思っています。普段よく見ているものを巨大化させることで、自分や街が小さいのではないか?という不思議な感覚体験ができるのではないかと考えました。いまは、12月の藝大成果展に向けて新たな自主制作に取り掛かっています」

Q2. 活動を始めたきっかけは?

「お母さんが木工作家で、お父さんが元ガラス作家で。だから、家の中にある工具や素材がとても身近な存在で、なにかを作ることが日常的な遊びになってたのだと思います。

小学2年生のころには、レゴブロックでコマ撮りのアニメを自主制作していました。リビングの机にレゴの街を広げて、少しずつ動かしながら一枚一枚シャッターを切って。当時は、夢中になって遊ぶ感覚でやっていたそうです。

『これやりたい!』と口にすれば、応援してくれる家族がいる環境のなかで、ものづくりを続けていました。思いついたらまずかたちにして、反応を見てみる。家族との会話の中や日常の違和感、作品を観た人の驚いた表情や笑いが、次の作品作りに繋がっているのだと思っています

Q3. どんなことをテーマに活動をおこなっていますか?

遊ぶように作り、作るように遊ぶ。そんな感覚で作品作りをしています。

制作のテーマを特別に設けているわけではありませんが、小さなころから制作活動が身近なぼくにとって、作品と遊びの境界はとても曖昧で。日常に潜んでいる違和感や少しのズレを作品に落とし込み、『もしかして世界はこうみえるのかも』と感じさせることで鑑賞者の中にある世界が豊かになったら嬉しいです。

遊びのように自由。その一方で構造的にズレを仕込む感覚も持ち合わせながら、作品を制作していますね」

Q4. 活動をしている中で、印象的だった出来事は?

SNSで作品投稿をしていると『あ、あの作品の人だ!』と声をかけられることが増えてきました。自分を知らない人が、作品からぼくのことを認識してくれていることにとても嬉しく思います。

実は、ほかにも鑑賞者の反応を大切にするという点でお笑いに挑戦しています。昨年行われたハイスクール漫才2024では、『19秒芝生舐め』として出場し、優勝することができました。新聞社の方や、テレビ局、芸人さんなど、普段なら接点のない方々と接する機会が多くなったのは嬉しかったです。

作品作りとお笑い、どちらにも共通していることは『自分も楽しく、周りも楽しくあるように設計する』ということ。驚きや、笑いといった感情の動きをどう起こすかを考えてかたちにしていく時間が、ぼくにとってのいちばん面白い瞬間です

Q5. 将来の展望は?

軸にある思いである『自分が楽しくて、まわりの人もハッピーになれる作品づくり』をこれからも続けていきたいです。

社会を変えたいなどの大きなビジョンよりも、作品を観た人が『なんかちょっと世界の見え方がかわったかも』と感じてくれたらいちばん嬉しいかなと思います。ぼくのなかでは、アートもお笑いも、空気を変えるための表現のひとつです。混ぜたり分けたりしながら、そのときやりたいことにいちばん合った表現方法を選んで活動しています。

まずは、いま目の前にある藝大成果展に向けて作品をづくりに励んでいきたいです。そして、アーティストや芸人といった肩書では言い表せない『渡邉楽』という存在になれたら最高だと思っています」

渡邉楽のプロフィール

年齢:19歳
出身地:富山県高岡市
所属:東京藝術大学美術学部先端芸術表現科、早稲田大学お笑い工房LUDO
趣味:作品制作、お笑い、作字、ロックバランシング、道にある変な看板や貼り紙を見つけること
特技:ご飯を美味しそうに食べる、小さな子供たちと全力で遊べる
大切にしている言葉:面白き世をもうすこしおもしろく

渡邉楽のSNS

★Instagram

Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano

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Serina Hirano

ライター/ディレクター

10代名鑑ディレクター兼ライターとして、2024年1月にSteenzへjoin。東京と伊豆の二拠点で活動中。インタビューを中心とした記事をはじめ、学生、スタートアップ企業、まちづくりの現場まで多方面で活躍。

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