
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、ヒートアイランド現象についてご紹介します。
都市化にともない深刻化するヒートアイランド現象
近年、さまざまな場所で進む都市化。より便利に住みやすくなっていくのは、嬉しいことです。しかしその一方で、都市化が進むにつれ「ヒートアイランド現象」が深刻化し問題になっています。
ヒートアイランド現象とは、都市の気温が周辺地域より高くなる現象のこと。この様子を地図で視覚化したとき、島のような形状をしていたためこのような名前がつけられました。このまま深刻化すると、熱中症などの健康被害や生物の生態系変化などが懸念されています。
車の色がヒートアイランド現象に関係?
現在、ヒートアイランド現象はさまざまな研究や実験がおこなわれています。例えば、学術誌『City and Environment Interactions』には、暗い色の車は周辺の気温を最大3.8℃上昇させる可能性がある、といった内容の実験結果が掲載されました。
この実験では、野外に5時間以上放置した黒と白の車を、アスファルトの駐車場に設置し、車周辺の気温差を午後1時40分から午後2時12分まで測定。最も気温差が大きかったのは黒い車の上部分(中央〜バックドアガラス部分)で、最大約3.8℃上昇したとのこと。一方、白い車の周囲の気温差は小さいことから、「車両の色が周囲の気温に大きな影響を与える可能性がある」ということがわかりました。
また、道路が広範囲に広がり建物が密集している地域では、駐車車両が地表の熱特性を大きく変化させることも明らかになっているそうです。これらの内容から、車の色を考慮したり特定の場所では駐車を制限したりすることにより、ヒートアイランド現象を緩和できる可能性があると述べています。
各都市の気温上昇対策
ここからは、各都市が気温上昇に対してどのような対策をおこなっているのかを見ていきましょう。
スペイン・バルセロナでは、熱波の際に学校や図書館などの公共施設を開館し、「気候シェルター」として住民に涼しい空間を提供しています。気候シェルター専用のネットワークも存在し、約400ものシェルターの場所や種類、特徴などを確認できるそうです。
続いてオランダ・ブレダ市では、庭園を造ったり、コンクリートを芝生や木々に置き換えたりすることにより、都市の緑化を進めています。現在は、市内の60%を緑地が占めているそうです。
その他にもコロンビアでは、「Green Roofs」という持続可能な環境の創造に貢献できるイニシアチブに参画。屋根を緑化し、気温の低下や二酸化炭素の吸収、大気の浄化などを目指す取り組みがおこなわれています。
ヒートアイランド現象は日本でも起きている
今回は世界の事例を中心に紹介しましたが、日本でもヒートアイランド現象は起きています。『国土交通白書2022』によると、1927年から2021年の約100年の間に、都市化の影響が少ない地域では、気温が約1.6度上昇。これに対して東京ではなんと約3.3度も上昇しているそうです。人々の暮らしを快適にするために、整備が進められるのはとてもありがたいことです。しかし、「都市化による影響」についても忘れないようにしたいですね。
Reference:
ヒートアイランド現象の「知識・解説」|気象庁
The underestimated impact of parked cars in urban warming.|City and Environment Interactions
Car colours and climate change: How your car’s paint job worsens the urban heat island effect|euronews
Climate Shelters Network|Barcelona for Climate
Green Roofs|Sustainable Columbia
コラム 都市化の進展とヒートアイランド現象|国土交通白書2022
Text:Yuki Tsuruda