
「気になる10代名鑑」の1111人目は、浅井柊香さん(16)。フィリピンで目にした貧困問題の現状に衝撃を受け、グローバルユース国連大使として2024年11月まで活動していました。貧困の正しい知識を伝えていきたいと話す浅井さんに、大使として訪れた、印象的な出会いや将来の展望を伺いました。
浅井柊香を知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「SNSでの発信や学校での発表などを通じて、世界や日本の貧困問題についての知識を広める活動をしています。
また、20254年11月まで、1年の任期でグローバルユース国連大使として活動もして。カンボジアで戦争や平和について、フィリピンで環境問題を学んできました。
あとは、ちょうど戦後80年の節目に戦争による貧困についても知りたいと思ったので、核兵器廃絶を訴える高校生1万人署名活動に参加しました」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「中学3年生の語学研修で行ったフィリピンで、体調を崩したわたしは車で病院に行くことになったのですが……そこで見た光景が衝撃で。
狭い路地の奥に多く立つ簡素な家や、ストリートチルドレンが水を売っている姿など、日本では見たことのない過酷な環境で生きている子どもたちがいることを知って、何かしたいと思うようになりました。
そこから、日本に帰って、グローバルユース国連大使へ参加することに。もともと、国連に対して漠然とした憧れがあったことも理由のひとつです。
専門家や各国の若者と議論したり、現地視察をしたりする中で特に印象的だったのは、カンボジアでトゥールスレン虐殺博物館で、骨の展示を見たことです。こうした経験が土台となり、個人でも発信や啓発活動を本格的に始めるようになっていきました」

Q3. 活動する中で、印象的だった出会いは?
「大使として訪れたカンボジアの貧困地域で出会った、同年代の少女との対話が印象に残っています。
『電気を借りるときは隣の家へ行き、夜は火を灯して勉強する』と生活の状況を話してくれたのですが、あまりに軽いノリで話しているのにびっくりして。また、『親は都心部に出稼ぎに行っているから、1ヶ月後に帰ってくる思う』と教えてくれて、スマホも当然ないので、お母さんとの口約束を信じるしかないという現状が衝撃でした。
本人は楽しい生活をしていると言っていたのですが、どうにかしてあげられないものかと考えるきっかけになりました。それと同時に、貧困はつらくて苦しいものだというのははたから見た感覚で、本人たちは毎日楽しく生活していることもある、と知ることができた経験でした」
Q4. 活動を通して、実現したいビジョンは?
「貧困に関する正しい知識と理解が社会全体に浸透し、支援の輪が国内外問わず自然に広がる未来をつくることです。
『正しい』というのは、例えば、貧困と聞いて、途上国を思い浮かべると思うんですけど、実際日本のような先進国にも相対的貧困はあるということです。小学生に授業をするにあたって、海外ばかりの話だと身近に感じられないかなと思い、調べてみると、日本の相対的貧困の割合が意外と高いことに気づいて。
あとは、前から子ども食堂の活動にも興味があったのですが、『子ども食堂=ひとり親家庭、貧しい子どもしか行かない』という偏見があるなと思っていて。
こうした間違った認識や偏見をなくすためにも、この目で見たり聞いたりしたものを発信していきたいです。
国連大使の活動中には貧困デーに『貧困に対してできること』という動画を作成しました。ネットだと思い込みや間違い情報もたくさんあります。だからこそ、自分自身で見たものを信じて、伝え続けたいです」

Q5. 将来の展望は?
「これといった夢はまだ定まっていないのですが、選択肢のひとつとして外交官になりたいです。
日本国内の政治家は日本しか変えられないですが、外交官は世界で仕事をします。世界中に問題がある中で、最前線で他の国と交渉していきたいですね。
カンボジアなど現地の高校生たちと話したときに感じた価値観の違いを忘れずに、世界各国の人々と対話を通じて、特に貧困や人権問題などの解決に貢献したいと考えています。
直近だと、英語の勉強を頑張りつつ政策提言に挑戦したいと思っています。SNS発信も、実は少しお休みしているのですが、これから再開するつもりなので、引き続き情報発信も頑張りたいですね」

浅井柊香のプロフィール
年齢:16歳
出身地:神奈川県綾瀬市
所属:自修館中等教育学校
趣味:野球観戦
特技:卓球
大切にしている言葉:継続は力なり
Photo:Nanako Araie
Text:Haru Ninagawa






