
「書評アイドル」として執筆活動しながら、モデルなど幅広く活動している20歳のわたし、小春による書評フォトエッセイ連載企画 “Steenzブックレビュー”。
今回は、「つまらない大人になりたくないって思っていた人」におすすめの1冊『書を捨てよ、町へ出よう』です。今回も、わたしと同じく以前10代名鑑に出演されていた写真家の村山莉里子さんに撮影をいただいて、「感情と風景が交差するところ」をコンセプトに、新しい本との出会いをみなさんに届けられたらと思います。
つまらない大人になりたくないって思ってたけど……
私は、つまらない大人になりたくないと思っていた。慣習に捉われないで、自由に行動できる大人になりたかった。でも、実際は自由になりたい、遠くへ行きたいと願うばかりで、何かを変える勇気を持てず、行動もできないまま。社会の常識や一般論のようなものに縛られてしまって、たとえ誰にも迷惑をかけていなくても、好き勝手に生きることは難しい。
気づけばあの頃思い描いていた“憧れの大人像”は、私の中でどんどんぼやけていっている。どうすればなりたかった大人に近づけるのだろう?
君もまた《平均化》されたいか
今回紹介する本は、そんな反抗心によりそってくれる一冊。「きみもヤクザになれる」、「ハイティーン詩集」、「不良少年入門」などの章で構成されていて、エッセイから詩まで楽しむことが出来る。私が特に好きなのは、第4章として収録されている「不良少年入門」。この章の見出しには、「家出入門」「自殺学入門」などが並んでいる。ただ「不良になれ!」と言っているわけではない。例えば、「プレイボーイにならないために」という話の中には、方言を言え、眼鏡をかけろ、ダンスをしない男になれ、という内容が論理的に説明されている。
正直言って、話がぶっ飛んでいてついていけない話もある。だからこそ、自分は規律や世間体にどれだけ縛られているのか気づかされた。
「書を捨てよ、町へ出よう」!
本の中には、《ともかく「実行」である。「虚構」の冒険などでは何もならない。逃避はますます閉塞を深めるだけである》と書かれている。必要なのは、実行する力なのだ。もちろん、他人を傷つけたり迷惑をかけたりするようなことは避けるべき。でも、自分の心に嘘をついて、ただ平均化されていくのは違う気がする。
私は、今まで本を読んで色んな人や世界を知ってきたつもりだったけれど、結局、実行はしていなかった。ちょっと勇気は必要だけど、外に出て色んな景色を知っていくことがまだまだ私には必要だ。
私は、もう来年には社会人になる。最初にこの本を読んだ中学生の時より、今は「書を捨てよ、町へ出よう」という言葉を受け止められている気がする。
今回紹介した本
『書を捨てよ、町へ出よう』/寺山 修司 著/角川文庫(KADOKAWA)