
「気になる10代名鑑」の1079人目は、嬉々さん(18)。お芝居を通じて、痛みを抱えるひとに寄り添える役者を目指し、日々稽古に励んでいます。「役という当事者から感じて得ることが、すごく大事」と話す嬉々さんに、お芝居を始めたきっかけや将来の展望を聞いてみました。
嬉々を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「職業役者を目指して、お芝居に力を入れています。そのために、いまは高校卒業後は養成所に入り、稽古に励む毎日です。
演じるなかで出会う、誰にも頼れないようなひとりぼっちの役を起点に、社会や世界、人間についてよく考えることもあって。お芝居の中のその子たちと同じような痛みを抱えている誰かが、明日も頑張ってみようと思ってもらえるような演技ができたらと、日々活動しています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「昔から想像力が豊かでしたね。お人形遊びが好きで、自作のストーリーを1人で何役も演じていました。自分で自分を柱に縛りつけて、『助けて〜!』と言ってみたり。(笑)
小学2年生のとき、母が『地元のミュージカル団体に入ったら?』と提案してくれて。それが、お芝居の世界に入るきっかけになりました。
実は幼い頃から、ひとりで遊ぶのは好きだけど、何かに挑戦してみようと思ったことがなく、内気で受け身な性格で。人前での発表やスピーチは苦手でした……。
でも、お芝居のなかの役だと誰かと対話がしやすい気がしていて。思い返すと、お芝居がわたしにとって、ひとつのコミュニケーションツールになっているのかなと感じます」
Q3. 活動する中で、印象的だった出会いは?
「高校の演劇大会での、ある少女役との出会いです。
彼女はつらい過去を持っていて、自分の心を解放せず世界への恨みを募らせている、という役で。お話はもちろんフィクションなのですが、現実社会にも通ずる部分があって。『この役みたいな子が、現実にわたしの周りにもいるのかもしれないな』と考えたときに、授業やニュースから学ぶだけでなく、演じることでその子が持っている悩みや問題から得られるものは、すごく大きいなと感じました。
その子を演じてから、ずっとその子がわたしのなかに住みついている感覚があって。その子は、雨のなか持っている傘をささずに、ずぶ濡れになっているような子なんです。わたしも、それまでは考えたことがなかったけれど、雨が好きだなとか雨に濡れたいなとか思えるようになりました」
Q4. 活動を通して、実現したいビジョンは?
「わたしは、頭が特別いいわけでもなく特別有名なわけでもないけれど、自分のお芝居や自分が関わる作品を通して、困っている当事者の思いを伝える役目を担えたらいいなと思っています。お芝居や演劇映画には、そういう力があると感じていて。
いままで観たなかで、『笑いの怪物』という作品が1番印象に残っています。人付き合いが苦手な主人公が出てくるのですが、そういう弱い立場にいる人に出会うことって、現実ではなかなかありません。役としてその当事者の立場に立ち、現実を知って、その役を自分ごととして考えられたらいいなと思っています」
Q5. 将来の展望は?
「直近では、10月に舞台に出演します。声をかけてもらい出ることになった舞台なので、まだ内容は分からないのですが、9月からの稽古を頑張ります。
わたし『嬉々にしかできないこと』と言われると、やっぱりお芝居なのかなと思っていて。自分にも内気で受け身な部分があるからこそ、不器用で弱い立場にあるひとに思いを馳せることができると思うんです。自分とそういう役を重ね合わせて考えていきたいなと。
そうすることで、間接的ではあるけれど、社会の問題や困っているひとたちの声を、届けられる役者になりたいです」
嬉々のプロフィール
年齢:18歳
出身地:神奈川県鎌倉市
趣味:写真撮影、手芸、古着集め、言葉探し
特技:手芸
大切にしている言葉:笑顔、のびしろ
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Photo:Nanako Araie
Text:Haru Ninagawa