
東京を代表するファッション団体Keio Fashion Creatorが、“未完成であること”そのものを肯定する、新しい都市感覚をテーマに東京をファッションで再解釈する新たな試み「Unraveling the paradigm of Tokyoism」。第3回は、自分のルーツと東京の「混淆」
肯定することで規範から開放される
東京に戻ってきたばかりで、まだ地元にいた数日間の余韻が心に残っている。
気分を切り替えたくて、ふらっと外に出て散歩をすることにした。歩いていると、不思議と目を引く人がいた。 豹柄の帽子を軽やかにまとい、胸元にはさりげないネックレス。落ち着いた茶系のチェックハーフパンツに、足元はテックスニーカーを合わせた、カジュアルながらもフォーマルさを感じさせるルック。メイクはニュートラルなジェンダーレス系で、その細身のシルエットが現代的な自由さを象徴している。このスタイルは、まさに青年時代特有の、既成概念にとらわれない自由な心を体現している。
彼らは、東京という街で生き抜くために、無理に自分を飾ったり、既存の枠に収まろうとはしない。その装いは、「自然体」であることの美しさを語りかけている。都会のルールや社会の規範に縛られがちな中で、このファッションは「フリーダム」を謳歌し、モラトリアムを肯定する姿勢を示している。
あの人も、かつては僕のように悩んでいた時期があったのだろうか。あるいは、僕もあの人のように、もっと自由に、自分らしく生きられるようになるのだろうか。ふと考える、僕らしさってなんだったっけ。
寄り道ばかりしていた、あの夕暮れの帰り道。駄菓子屋を見つけたら、自然と探してしまう大好きなお菓子。都会に憧れて、毎月読んでいたあの雑誌。自分が何者かなんてまだ分からない。だけど、自分が何を好きかはよく知っていた。
最初からそうだった。きっと大切なことは遠くにない。僕が抱く将来への不安や迷いも全部自分だけの大事なものだ。変わらない故郷の温もりに思いを馳せる。
かつては抑制や社会に染まることの象徴であった「スーツ」が、ここでは「色んな意味を包含するスーツの肯定」として、彼らの持つ多様な可能性を受け入れる器となる。それは、若者が抱える葛藤からの解放であり、自己をありのままに受け入れる「自己肯定」の表れだ。
僕はこれからもこの大都会で生きていく。それは変わらない。だけど、今日からは、一味違う。変化するこの街で揺れ動く心を、支えてくれる人達が居ることに気付いた。弱さを抱える自分と向き合いながら、少しずつ前向きに歩を進めていく。
忘れかけていた小さな自分が、そっと心の奥から顔を出した気がした。
都会の喧騒と故郷の温もり、既存のジェンダー観と新たな価値観、相反するものが交錯する中で、彼らは自身のスタイルを通して「都会との共生」を静かに、しかし力強く表現している。このルックが示す新しい時代の息吹を、東京のストリートから世界へと発信していく。
Keio Fashion Creator プロフィール
2002年設立の服飾学生団体。ESMOD JAPONと提携し、服作りを学びながら毎年テーマに沿ったファッションショーを企画・運営。2012年からはインターカレッジ化し、約200名の学生が衣装制作から広報までを担当。「服」を通じて思考を表現し、社会に発信することを目指している。
昨年度のショーテーマは「愛」。
12月25日に東京タワー麓のSTAR RISE TOWERで「How to Dress LOVE?」を開催し、44体のルックを発表。各デザイナーが自身のルーツをもとに、目に見えない「愛」を服で表現し、装いを通じてその形を探求した。
【関連リンク】
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