
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、世界で増加している電子機器廃棄物の再利用についてご紹介します。
増加傾向にある電子機器廃棄物の量
スマートフォンやパソコンなど、いまやわたしたちの生活に欠かせない存在となっている電子機器。しかし、普及するということは、その分、電子機器廃棄物(E-waste)の量も増えているということです。
E-wasteとは、その名の通り、廃棄された電子機器のこと。国際連合のレポート『The Global E-waste Monitor 2024』によると、2022年に発生した電気・電子機器廃棄物の総量は6,200万トンだったそうです。これは、長さ25メートルのトラック155万台が満杯になる量。その多さに驚きますが、実はこの中から正式に回収・リサイクルされたのは約22%だといいます。廃棄物量の半分にも満たない数字に、衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。
E-wasteは年々増加しており、2022年の総量は2010年の約2倍に達していたとのこと。増えた理由としては、世界人口の増加によって電子機器の利用が増加したことに加え、所得の増加、工業化、都市化などが挙げられます。
E-wasteから硬貨を作る?
増加傾向にあるE-waste。これをなんとか活用できないかと前向きに考える国や企業もあります。そのひとつが、カナダ王立造幣局です。オンタリオ州オタワとマニトバ州ウィニペグに施設がある国営企業であり、貨幣の製造や貨幣制度の管理などをおこなっています。
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2025年1月15日、カナダ王立造幣局は、E-wasteから金、銀、銅などの金属を抽出し、硬貨製造に活用する可能性があると発表しました。そしてこの計画には、「エニム・テクノロジーズ社」がパートナーとして参加します。同社は、E-wasteから貴金属や鉱物を抽出し、再利用を促す仕組みづくりを専門にしている企業です。
現在は、両社で協力することによりお互いに利益をもたらす分野を模索中であり、一案として硬貨製造のアイデアが出ているとのこと。E-wasteから硬貨を作る案が実現すれば、廃棄物の削減はもちろん、国民のサステナブルに対する意識向上も期待できるかもしれません。
E-wasteから取り出した金属を使用するメリットとは
例えば、自然環境を破壊せずに貴金属材料を得られること。これまでの金属採掘は、露天掘りという方法で地表を削ったり、化学物質を使用したりと、自然環境への負担が大きく、問題視されていました。しかし、E-wasteから金属を抽出することにより、こうした環境負荷の大きい作業は不要になります。加えて、従来の採掘作業よりエネルギー消費量を80%、二酸化炭素排出量を最大70%削減できるともいわれています。
ちなみに、携帯電話100万台をリサイクルすると、銅を約15,875kg、銀を約350kg、金を約34kg回収できるそうです。さらに、エニム・テクノロジーズ社が開発した方法を活用すると、有害な副産物を出さずに金属の分離・精製をおこなえます。より環境に優しい方法で、硬貨を製造できるのです。
E-wasteの活用は硬貨だけではない
エニム・テクノロジーズ社とカナダ王立造幣局の計画は実現するのか、今後の動きにも注目していきたいですね。また、E-wasteの再利用は世界各国で広がっており、2024年には英国王立造幣局が、E-wasteから金を回収する工場を開設しています。こちらの工場は年間最大4,000トンの廃棄物を処理でき、回収した金は同局の高級ジュエリーコレクション「886」に使用しています。興味のある方は、こちらも調べてみてください。
Reference:
2024年版電子廃棄物モニター – 電子廃棄物は記録された電子廃棄物リサイクルの5倍の速さで増加:国連|国連訓練調査研究所(UNITAR)
電子廃棄物のリサイクルを促進する7つの方法|世界経済フォーラム
Enim Technologies and the Royal Canadian Mint Explore the Integration of Eco‑responsible Metals Extracted From Electronic Waste in the Mint’s Operations|Royal Canadian Mint
Our Company|Royal Canadian Mint
New Factory Extracting Gold from E-Waste Unveiled by The Royal Mint|The Royal Mint
UK Royal Mint Launches Facility to Extract Gold from E-Waste in South Wales|MINEX Forum
Text:Yuki Tsuruda