
「気になる10代名鑑」の1045人目は、佐藤千夏さん(18)。武蔵野美術大学でアートマネジメントを学びながら、高校時代から日本画を描き続けています。自身の記憶をテーマに作品を生み出す佐藤さんに、日本画を始めたきっかけや大切にしているスタンスである「考えること」について聞いてみました。
佐藤千夏を知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「武蔵野美術大学でアートマネジメントの勉強をしながら、日本画を描いています。
なぜアートマネジメントを学んでいるかというと、自分自身、作品を作る側でもあるからこそ、一生懸命芸術に向き合っているひとの想いがどうしたら社会に届くのかを考えてみたいと思ったから。
日本画は、出身校である都立総合芸術高校で専攻していました。わたしから日本画を取ったら何も残らないんじゃないかと思うくらい、いまでも大事な存在です。
個人的な創作活動では、個展や作品の販売などの活動よりも、『自分で考え、何かを生み出せる状態』に価値を感じていて。まずは自分がどう考えるか、何を感じているのかを大切に、絵を描き続けています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「小さいころから絵を描くのは好きで、ずっと趣味のひとつでした。本気で美術の道に進もうと意識し始めたのは中学生のとき。最初は『他にやりたいことが特にないし……』という消去法だったけれど、都立総合芸術高校の存在を知って、『こんなに魅力的な場所があるんだ』と気持ちが一気に前向きになりました。
それがきっかけで、美術を学問としてしっかり学びたいと思うようになり、中3から予備校に行き始めました。毎晩通うのは正直つらかったけど、それでも『やってよかった』と心から思える時間です。あの努力がなかったらと思うと、少し怖いくらい、いまにつながる大きな転機でした」
Q3.活動にあたってのファーストアクションは?
「最初のアクションは、『知識をとにかく増やす』ことでした。頭にあるイメージを、できるだけそのまま作品に落とし込みたいけれど、知識や実力が追いつかなくて、伝えきれないときがあるのが悔しくて。高校では、先生それぞれの得意分野を見極めて、アドバイスをもらっては改善するということを繰り返していました。
それから高校2年生のとき、素描の途中でふと気づいたんです。上手く作品にできたと思っても、それを自分で説明できなければただの偶然だし、逆にうまくいかなくても、理由を言語化できればちゃんと成長につながるんじゃないかって。いまも、いろんな技法をいろんなひとに聞いたり調べたりしながら、少しでもイメージの解像度を上げられるように、手と頭を動かすことを意識しています」
Q4. どんなことをテーマに活動をおこなっていますか?
「テーマは、自分のルーツにまつわることが多いです。外の社会からアイディアを拾ってくるというより、自分の内側から引っ張ってくる感じ。自分のことって一生考え続けてるし、毎秒アップデートされていくから、ネタ切れしないんです。特に印象的なのが、まだ字が書けなかった幼少期の記憶。映像で頭に残っているものを、忘れないうちにかたちにしたいという気持ちがあって、気づいたら作品のテーマの源になっています。
もともと渋いものが好きで、日本画に惹かれたのも自然な流れでした。写実よりも、画家のフィルターを通して見えた世界を描く発想が自分の感覚にすごくフィットしていて。だからこそ、自分自身を深掘りすることが、そのまま創作につながっています」
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Q5. 将来の展望は?
「『なんでもできるけど、何もしないおばあさん』になることです。人生の最後は、ひとりでいる時間や孤独を、思いきり楽しめるひとでいたくて。常に娯楽を求めて旅行したり、人間関係に振り回されたりして、『何かしている風』にごまかすような生き方はしたくないんです。
そのために必要なのは、いまあるもので楽しめる感性とか、自分自身を面白がれる視点だと思っていて。だからこそ、大学でも個人的にも、できる限りのインプットとアウトプットを続けています。社会の出来事に流されず、自分の頭で考えながら生きていける自由な状態を目指して、これからも『ライフワーク』として日本画を描き続けていきたいです」
佐藤千夏のプロフィール
年齢:18歳
出身地:東京都港区
所属:武蔵野美術大学
趣味:考えごと
特技:調べもの
大切にしている言葉:「一本刀土俵入」
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都立総合芸術高校 卒業制作 『弓と弦』2024.11
麻紙,墨,岩絵具,亀甲金網群鶏を社会集団に見立てて描きました。 pic.twitter.com/fivGwOnmmk
— チナツ (@kagotsurubeee) February 8, 2025
Photo:Nanako Araie
Text:Mizuki Maeda