世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今回は、アフリカの紛争地域で暗躍するロシアの存在から、「戦争ビジネス」について考えます。
民間軍事会社と紛争のつながり
ニュースでよく取り上げられるロシアの民間軍事会社「ワグネル」について、知っている、あるいは耳にしたことがあるという人は多いのではないでしょうか。
改めて説明すると、ワグネルはロシア人のエフゲニー・プリゴジン氏によって創設され、ウクライナ戦争も傭兵を送り込んでいます。インターネットから月給50万円で募集された傭兵たちは約4万人とも5万人とも言われており、そのうちの半数は刑務所の囚人。刑期を短くしたり、釈放することと引き換えに雇われているというのが現状です。
戦争をおこなう国にとっては、自国民で編成される軍隊を動かすより、民間軍事会社を利用するメリットは大きいと考えられています。もしも戦闘の中で、虐殺や人権侵害を犯した場合でも、その責任があいまいになるからです。また傭兵が死亡した際も、自国の死者数には含まれないため、世論の反発を避けられます。
アフリカの紛争は金になる
そんなワグネルは、戦闘が行き詰まってきたウクライナ戦争から手を引き、今後、スーダン紛争に活動の軸を移すと報じられています。
2023年4月、軍事政権が続いたスーダンで、国軍と準軍事組織RSF(以下RSF)の間で武力衝突がはじまりました。この紛争には、ワグネルも大きく関わっているとのこと。
スーダンは、世界第10位の金産出国であり、RSFの資金源は金鉱です。スーダンでは法律上、掘り出された金は国内の精錬企業にしか販売できませんが、軍事政権は、ロシアの工場である「メロエ・ゴールド」への販売を、事実上黙認しているといわれています。
つまり、ワグネルがRSFに傭兵を送り、武器の供与や軍事訓練を提供するかわりに、金を密輸しているという構図です。スーダンからロシアに密輸された金は、すでに数10億ドル相当に上り、それがウクライナ侵攻の資金源になっているとも報じられています。
もはや、命を守ってくれるなら誰でも歓迎
ワグネルは、スーダンの他にも、アフリカ6カ国に、傭兵を派遣しているそう。リビアやマリなどといった国で激しい内戦が続く中で、ワグネルは国軍の掃討作戦に加わっているとされています。
一方で、その無差別な攻撃によって、犠牲になり、また危険にさらされている市民に対する国際的な懸念は高まっています。過激派の攻撃により避難を強いられた、疲弊した市民にとっては、「命を守ってくれるなら誰でも歓迎」であることも事実。
世界に影響を与えるアフリカとロシアの関係
このように、ロシアがアフリカへ進出する中、アフリカ各国は「ロシア寄り」な外交姿勢を示しています。
2023年2月に国連総会で行われたロシア非難の決議で、反対票を投じたのも、多くがアフリカの国でした。経済規模の大小に関係なく、国連ではすべての国が同じ投票権をもつため、ロシア派の国を増やすことを目論んでいるとも考えられます。
そんな中、ロシア外相のアフリカ歴訪も報じられています。西ヨーロッパとの関係が悪くなる中で、他の国へアプローチし、外交の足場固めをすることが目的であるとみられます。
戦争は外注する時代
現代の戦争は、無人戦闘機やドローンの開発によって、その方法も進化していますが、さらにワグネルのような民間軍事会社が暗躍することによって、その性質は刻々と変わっています。
多くのひとが平和を望みながらも、なかなか達成されない現実。その裏には必ず、戦争ビジネスとそこから利益を得る人が存在し、それによっていまも多くの市民の命が危険にさらされています。
戦争や社会問題を見るとき、誰が利益を得ているか、その構造に注目することで、国際情勢を考えるのに、役立つのではないでしょうか。