世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、タイ産フルーツのブランド化に挑む日本人、渡邊健一さんについて。SNSの投稿をきっかけに新たな一歩を踏み出し、挑戦を続ける渡邊さんの活動をご紹介します。
タイのフルーツをブランド化する日本人
みなさんは、南国タイの果物といえば、何を思い浮かべますか? マンゴー、パイナップル、ドラゴンフルーツ……おいしい果物が目白押しのタイですが、現地では、流通している果物が、どこでつくられているものなのか、あまり知られていません。
そうしたなかで、果物を特産化して適正価格で販売し、農家さんの利益還元に取り組んでいる日本人がいます。
おいしいフルーツを求めて、タイ国内を巡る
タイで日本の政府系機関の職員として働いていた渡邊健一さん(大阪出身、30歳)は今年8月、仕事を辞め、現地で果物販売の事業を本格的に開始しました。
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起業のきっかけは、個人のインスタグラム「Nobithailand(ノビタイランド)」でタイ産果物の魅力を発信していたところ、「Nobiさんが教えてくれる果物はおいしい」と言ってくれるフォロワーが増えたこと。
タイ産果物の魅力にハマり、それを伝えることに意義を感じた渡邊さんは、グーグルマップにタイ語で「パイナップル 畑」などと入力、検索して、タイ中の果物農園を直接訪問するようになりました。
タイ人農家のみなさんは、外国人の突然の訪問に驚きながらも、快く果物を食べさせてくれました。そうしているうちに渡邊さんは、同じ果物でも、農園や育つ土地環境によって味に違いがあることに気づいたそうです。
「例えば、東北部サケオ県のマンゴーは、プリンのような滑らかな口当たりなんです。土地の環境や育て方によって、こんなに味の違いがはっきりわかるんだなと感動して、ますますタイ産の果物にのめりこんでいきました」
「果物の産地を知らない」のが当たり前⁉
一方で、タイ国内では、果物の産地を気にするひとはあまりおらず、せっかくおいしい果物を栽培している農園があっても、あまり認知されていません。どれだけおいしくても、豊作の際には単価が下げられてしまい、農家が利益を得にくい環境にあることを知りました。
「日本なら、リンゴなら青森、モモなら山梨と、地域や農園ごとに、果物がブランド化されている。農家がこだわり抜いてつくった果物なら、付加価値がついて、高値で販売することもできる。そうした文化がタイにはなかったのです」
そうした現状を知るなか、渡邊さんにある転機が訪れました。今年の2月に起きた、ロシアによるウクライナ侵攻です。
「ウクライナの戦場の様子に衝撃を受けて。自分はめっちゃ恵まれているなと。いまやろうと思えばやりたいことができる状況で、やらない手はないなと感じました」
起業を決意した渡邊さんは、翌3月には勤務先に退職の意向を伝えました。その後もインスタグラムを通じて果物の魅力を発信し続け、Nobithailandのフォロワー数は、瞬く間に1万人超に。タイの人気ユーチューバーから声がかかり、動画に出演するなど、タイ人からの認知も拡大しました。
渡邊さんとタイフルーツのこれからに注目!
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渡邊さんの今後の目標は、契約した農家の果物をブランド化していくことです。例えば、タンクのような形をしたパイナップルには「ゴールデンタンク」と名付けることで、「〇〇産のパイナップルといえば、ゴールデンタンクだよね、と覚えてもらいやすくなる」といいます。
「将来は、付加価値のある果物なら、現在の市場価格の2倍以上でも買ってもらえるようにしていきたい。タイの方が、マンゴーなら〇〇農園、パイナップルなら〇〇農園が好きだ、と普通に話すような文化をつくりたいんです」
渡邊さんは果物販売のほか、日本人旅行者を対象に、タイで農業体験ができるツアーなども展開しています。農家さんとの触れ合いを通じ、タイ産果物の魅力を、これからもアピールしていくのでしょう。
渡邊さんのアカウント「Nobithailand」はこちら
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Image:渡邊さん提供
Text:Risako Hata