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カンボジアが世界に先駆けてデジタル通貨を導入!日本のスタートアップ企業の技術を活用

カンボジアが世界に先駆けてデジタル通貨を導入!日本のスタートアップ企業の技術を活用

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、カンボジア政府が導入した「デジタル通貨」についてお届けします。

カンボジアではデジタル通貨がスタート

 

 

世界でキャッシュレス決済が進む中、各国政府が主導してデジタル決済を推進する動きがあるのをご存じですか?

なかでも、世界に先駆けて、中央銀行が発行するデジタル通貨決済を導入したのが、東南アジアの小国、カンボジアです。実は、このデジタル決済システムには、日本のスタートアップ企業の技術が使われているんです。

使われているのは日本の技術

カンボジア国立銀行(中央銀行)は、2020年10月にスマートフォンを使った小口決済システム「バコン」を導入しました。世界で中銀デジタル通貨を導入したのは、パナマに次いで、カンボジアが2か国目です。

この決済システムには、日本のスタートアップ、ソラミツ(東京都渋谷)が開発したブロックチェーン(分散型台帳)技術が使われています。この技術によって、送金手数料は無料で、従来の電子決済より速く、より安全に支払うことができるようになりました。

この「ソラミツ」は、過去に日本で電子マネー「Edy(エディ)」の立ち上げに携わった宮沢和正さんが社長を務めており、カンボジア中銀から直々にシステムの開発を依頼されたということです。

なぜ、カンボジアでデジタル通貨?

そもそも、なぜカンボジアで中銀デジタル通貨が導入されたのでしょうか。
発展途上のカンボジアでは、金融システムがまだ先進国のように整備されていません。

世界銀行の統計によると、カンボジアで銀行口座を保有しているのは約2割にとどまっており、金融サービスを適切に受けられない人々が大半を占めています。

その一方で、国民のスマートフォンの保有率は21年6月時点で120%を超えており、デジタル環境は比較的整備されています。中銀は、将来的に銀行口座がなくても使えるデジタル通貨を普及させることで、国民の金融サービスへのアクセス環境を改善させる狙いがあるのです。

さらに、新型コロナの感染拡大を受けて、現地では現金を使わない非接触型の決済方法が好まれるようになりました。カンボジアに住む現地女性(40代)は、「いまは現金ではなく、決済アプリを使って買い物をしたり、公共料金を支払ったりしています」と話します。

普及にはまだまだ時間がかかりそう

一方で、バコンには課題も残っています。バコンは現在、既に国内の30行以上で導入されており、銀行間の決済システムにも組み込まれています。これによる間接的なバコンの利用者は、2022年3月時点で、カンボジア人口の約半数にあたる790万人に達しています。

その反面、街中の店舗などでバコンを使うリテールユーザーは約20万人(21年10月時点)と、人口の1%程度にとどまっています。バコンが利用できる店舗も約5000店舗で、市中で利用できる場所は依然として少ないのが現状です。

中銀が本来目指している「銀行口座がなくても金融サービスが誰でも利用できる」ような環境にはまだなっていません。

ただ、平均年齢が若く、IT環境が急速なスピードで整いつつあるカンボジアでは、今後、大きく金融サービスの環境が改善される可能性に期待が高まっています。

カンボジア総合研究所の鈴木博チーフエコノミストは、「カンボジアはこれまで、賃金の安さから、労働集約型産業で発展を遂げてきましたが、さらなる国の発展に向けて、IT産業の振興を本格的に進めようとしています。先進国と比較して、規制などの面でしがらみが少ないカンボジアのような途上国では、最新の技術やインフラを一気に取り入れて先進国を追い越していく「リープフロッグ(カエル飛び)現象」が起きる例があります。バコンはその好例になるでしょう」と期待感を示しています。

Text&Image(Main):Risako Hata

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Risako Hata

ライター

タイ在住のジャーナリスト。共同通信系メディアにて5年のタイ駐在を経て独立。現在は、アジアの経済や人道問題、SDGsに関連する記事を執筆。

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