宇宙……想像するだけで身震いするような得体の知れない広大な世界に、知恵と技術で挑んできたのが、日本の宇宙機関「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」。今回はそのお膝元である「JAXA筑波宇宙センター」を、宇宙好き大学生・阿部舞哉さん(19)にレポートしてもらいました。
今回の舞台は茨城県・つくば市
みなさん、こんにちは! 阿部舞哉です。将来、月で人々が暮らす世界を目指して、日々勉強している大学生です。最近では、日本中の宇宙好きをつなぐコミュニティの代表や、夏にアメリカで行われる人工衛星の大会に向けた開発に取り組んでいます。
今回、僕が訪れたのは、ロケット・人工衛星の研究開発や国際宇宙ステーションとの交信を行っている「JAXA筑波宇宙センター」です! ここは、まさに日本の宇宙開発の拠点となっている施設。宇宙に携わる僕にとっては、最も憧れている場所のひとつでもあります。
今回は研究施設ではなく、これまでのJAXAの活躍が一望できる展示館「スペースドーム」などにお邪魔してきました。
最初に待ち受けていたのは……
まず、目に飛び込んできたのは、オレンジ色の大きな影。そうです、宇宙好きなら誰もが知っている、JAXAが開発した「H-Ⅱロケット」!
このロケットは、「通信や放送、気象等の日々の生活には欠かせない人工衛星」を打ち上げるために、1990年代ごろまで使用されていました。例えば、毎日の天気予報で見る日本地図。その撮影をしている気象衛星「ひまわり」も、このロケットで打ち上げられたんです。
そしてこのH-Ⅱロケットは、初の完全国産ロケットで、日本の宇宙先進国の仲間入りに大きな貢献をした機体なのです! 宇宙開発というと、「海外のほうがすごいんでしょ……」と思われがちですが、このロケットや国際宇宙ステーションでの活躍によって、宇宙開発分野において、日本は大きなリードを誇っている国であると言えるのです。
このH-Ⅱロケットは、1994年の運用開始から8号機まで、合計8つの機体が完成し、7機がそれぞれ人工衛星を乗せて打ち上げられました。
では残りの1機はどこに行ったのかというと……僕が、今回の筑波宇宙センター訪問で最も驚いたとも言えるポイントが、ここにあります。
そう、この展示されているロケットが、元々打ち上げられるはずの本物だったのです! これを知ったとき、思わず飛び上がらずにはいられませんでした (飛び上がっても、ロケットは持ちあがるほど軽くありませんでしたが……)。
ものづくりを学んでいるひとりの学生として、細かい構造までしっかり見てから、次の展示へ進みます。
宇宙に行きたい!人間だもの…
次に訪れたのは「広報・情報棟」です。この建物で印象的だったのは、「宇宙兄弟」と「有人宇宙開発」に関する展示でした。
漫画「宇宙兄弟」の中で描かれている施設の解説や、毛利衛さんや向井千秋さんといった、宇宙飛行士の方々のポスターが貼られていました。
日本がこれまで、フィクションとノンフィクションのジャンルで有人宇宙開発を盛り上げてきたこと、そしてそれにはJAXAの強いサポートがあったことがわかる空間となっていました。
また、施設に入ってすぐのところには記念写真の撮影スポットのほか、宇宙食の自動販売機もあって、行くだけで楽しめる訪問スポットでした!
目玉施設「スペースドーム」
最後に訪れたのは、ここ筑波宇宙センターの目玉施設である「スペースドーム」です!
こちらでは、JAXAが開発してきた多くの人工衛星の実物大スケールの展示や、ロケットの模型がずらりと並んでいます。その雰囲気はまるで、人工衛星やロケットの博物館! 大きな体育館のようなつくりで、とても広々としていました。
国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟(宇宙の理科室みたいなものです)の実寸大レプリカ、地球や月を回る人工衛星の予備機や試験モデルが展示されています。
それぞれが自分の思っていた何倍も大きかったり、小さかったりと、宇宙に旅立っていったものたちの、実際のスケールに触れることができました。いままでは想像の範疇に過ぎなかった宇宙開発でしたが、どのようなものをどのくらいの大きさでつくればいいのかを、五感で感じ取ることができて、より宇宙開発を自分ごととして捉えられるようになったと思います。
屋外にあった「H-Ⅱロケット」と同様、ここには実際に宇宙で使用されることが想定された人工衛星など、語るべき展示がたくさんあります。本当にたくさんありすぎて説明しきれないので、ぜひみなさんも、一度足を運んで、じっくりと見てみてください。
体験型の展示や遊び心が効いた内装など、これまで宇宙に興味を持ったことがない人でも楽しめる施設になっています!
推しの宇宙機
ところで、宇宙好きの方々とお話しているとしばしば、「推しの宇宙機」について尋ねられることがあります。そしてもちろん、僕にもイチオシの宇宙機がありまして……。
それは、12年前に親に連れられて見た、「初代はやぶさ」です。
スペースドームには、後継機の「はやぶさ2」のレプリカが展示されています。当時から科学や天文に興味を持っていましたが、そのとき、ひとつの実物大の宇宙に触れたことが、宇宙開発に身を投じるきっかけになったのかな、と思うことがあります。
この記事を読んでくださっているみなさんのなかには、もちろん宇宙に興味をもっていない人もいるでしょう。しかし、興味のあるなしに関わらず、みなさんに伝えたいのは、「実物大」に触れることの大切さです。今回の訪問を通して、実際のスケール感に触れてはじめてわかることが、僕はたくさんありました。
例えば本のなかや授業中など、本当にふとしたところに、きっかけは無限に存在していると思います。そうして、少しでも興味があるかもしれない、と思ったときには、ぜひ本物に触れてみてください。きっと、本物を見てはじめて感じる刺激が、みなさんにとって、大きな一歩になると思います。
長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました!
JAXA筑波宇宙センター 概要
Photo&Text: Maya Abe