最近はファミレスやホテルの受付など、日常生活でもロボットを見かけること、増えていませんか? ロボット技術が進む中、お台場にある日本科学未来館で開催されている「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」では、約90種、130点の日本中の最新ロボットが集結。これは最先端技術を通して、わたしたち人間との未来をじっくり考えることのできる展示です。
今回は、過去、Steenzに登場し、サイボーグ化された植物「Cybotanic」の開発などを行うRick Shinmiさん(18)が、本展をレポート! 夏休み限定のロボット操縦イベントも先行体験してくれました。
ロボットが当たり前になる未来には、どんな世界が広がっているんだろう?
はじめまして。Rick Shinmiです。高校生のとき、植物の生体電位からシンセサイザーをコントロールすることで、テクノと人間を共演させるという開発をおこなっていました。最近は、政治哲学に興味を持って、個人が所属する政府を自由に選択・変更することができる権利を主張した「Panarchy」という1880年の論文を日本語訳しました。ぜひ見てみてください。
今回、僕が訪れたのは、日本科学未来館で開催されている、特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」です。
個人的には、若干ではありますが、自分の開発にロボティクスが関わっていたり、マトリックスやブレードランナーなどのSF作品を見て育ってきたこともあったりするので、ものすごくワクワクしながら参加しました。どんな技術に触れられるのか、自分の開発にはどんな刺激があるか。
「問い」をベースに構成された展示
最新のロボットに関する技術や活用を紹介する展示が最初から来ると思っていたのですが、会場に入って飛び込んできたのは、「ロボットって、なんだ?」という問い。
自分が普段何気なく口にして、あたかも定義を理解しているかのように使っていた「ロボット」という言葉。「あ、ロボットって、わかってるつもりでちゃんと理解できてなかったな」とモヤモヤしながら進みます。
本田技研工業の「ASIMO」など、ロボットの歩みを学びながら、次のエリアに入ると、大きく掲げられているのは「きみってなんだ? にんげんって、なんだ?」という問い。
これまた哲学的な問いだな……と思いながら、「分身ロボット」という、人体と同期させて動くロボットの展示コーナーに入ると、またまた問いかけが。「分身ロボットはきみの一部? どこまでがきみのからだ?」と、掲げられています。
こんなふうに、ただ展示されているものを鑑賞するという受動的な体験ではなく、「見る人に問いを提示して、展示されているロボットからその答えを考える」という構成になっていて、今まで参加したどの展覧会よりも、自分の頭で考えることが求められる展示方法になっていました。「理系」「文系」という言葉で分断されがちなテーマが、うまく融合しているのが美しい!
ビビッときた3つのロボット
会場では、展示されているロボットを眺めるだけではなく、実際に触って体験することができるロボットもあります。以下は僕が体験した中でも、ぜひみなさんに体験してほしい3つです。
ネコミミ型カチューシャ「|necomimi《ネコミミ》」(ニューロスカイ)
「人間のココロとカラダを拡張する」というコンセプトのネコミミ型カチューシャ。人間の脳波を取って、集中しているか、リラックスしているかによって、ネコミミが上下するというツールです。
ネコミミという、人類がどのように進化しようと、(おそらく)身につけることは決してない器官を付けることによって、今まで他人に伝わらなかった情報も伝えられるというアプローチに、かわいらしさ&かっこよさを感じました。
僕が作っている「植物で演奏されるシンセサイザー」も、従来植物が持っていなかった、人間とのコミュニケーションという機能を拡張して、今まで植物が伝えることのできなかった情報も伝えようという試みなので、それに通じるものを感じました。
動作拡大型スーツ「|SKELETONICS《スケルトニクス》」(ロボットライド)
スケルトニクスは人間が装着できる「動作拡大型スーツ」です。このスーツを着て体を動かすと、その動きがそのままロボットに伝わって、通常ではできないダイナミックな腕と足の動きが実現できるんです。
8月1日から体験イベントが始まるとのことですが、今回は特別に先行体験できるということで、いざ操縦! 個人的に『アツい!』と思ったポイントは、指の可動以外には電気を一切使わず、いくつもの機構をうま~く組み合わせて動くようになっているところ。これなら、ロボットの重量に関わる防水処理をしなくて済むので、災害現場での活用も期待できます。
どれだけ技術が発達したとしても、最新技術だけにこだわらない、温故知新的な発想が素敵だと思いました。また、このゾーンに貼られていた「どこまでがロボット? どこまでが人間?」という問いが印象的だったのも覚えています。
故人がクローンとして蘇る「オルツ・デジタルクローン」
「個人の考えや価値観を、AI技術で再現したデジタルクローン」というコンセプトで生み出された作品。ニーチェと茂木健一郎のデジタルクローンが会話しているのですが、その様子を鑑賞するだけでなく、質問を投げかけて参加することもできるんです。
故人も含めた人間のクローンを精巧に再現することができる反面、悪用されたり、人格が毀損されたりする危険性、そして、死んだ人格を現実に戻していいのかという倫理的問題など、さまざまな問題を考えさせられる設計になっていました。
ほかにも、多種多様な新しいロボットを、ただ鑑賞するだけなく、触れ合うことができました。
デジタルクローンのような倫理的問題は、本来じっくり時間をかけて考えるべきこと。ですが、そんなにゆっくり考えている時間もなく、ロボットと人間が共存する世界は、確実に実現しようとしています。
そんないまだからこそ、体験する価値を改めて感じさせてくれる展覧会でした。
きみとロボット 概要
Text&Photo: Rick Shinmi