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オリンピック後の変化は?スケボーと社会の共生のために活動するスケーター・岩澤史文のビジョン

オリンピック後の変化は?スケボーと社会の共生のために活動するスケーター・岩澤史文のビジョン

前回のインタビューでは、スケートボードとの出会いや、10代のころの話を聞かせてくれた、プロスケーターの岩澤史文しもん(SHIMON)さん(24)。続く第2回では、東南アジアでスケボーを広げるプロジェクト『SkateAid』のことや、現在のスケボーシーンについて、聞いてみました。

「学校に居場所がなかった」プロスケーター・岩澤史文の10代はスケボーに救われた
「学校に居場所がなかった」プロスケーター・岩澤史文の10代はスケボーに救われた
インタビュー連載「あの人に聞く、“私の10代”」。今回お話を聞いたのは、プロスケーター、動画クリエイターとして活躍する岩澤史文しもん(SHIMON)さん。 21万人の登録者数を抱えるYouTubeチャンネル『MDAska […]
https://steenz.jp/9072/

スケボー=不良なの?ストリートカルチャーと社会が共生するために

ー東京オリンピックの影響で、スケボーの注目度がグッと上がりましたよね。それによって何か変化は感じていますか?

「スケートパークにもどんどん人が増えてますし、シーンが盛り上がってきているのは間違いないと思います。とはいえ、僕のまわりのスケーターにプラスなことがあったかって聞かれると、そこまでではないのかなって思います。

逆に、スケボーに関する規制が厳しくなってきて、昔ほど自由にできなくなったりもするんですよね

ー以前はスケボーを持っているだけで、職務質問されてしまうこともあったそうですが、現状はどうですか?

「どうしてもスケボーというと“不良”みたいなイメージを持たれがちな部分があるんですよね。でもその点で言うと、前よりは少し、警察も優しくなったかな。『オリンピック見てたよ』って言ってくれたり。

少しずつですけど、スケボーに対するイメージはプラスになってるのかもしれません。とはいえ、やっぱりいまだに職質はされちゃいますけど(笑)」

ー注目度が上がって、スケーター人口が増えたぶん、マナーやルールを守らない人も出てきた、という指摘もあります。

「スケーターってクリーンなタイプもいれば、街乗りやストリートパフォーマンスをメインとする、“ザ・ストリート”みたいなタイプもいます。スケボー自体が社会のアンチテーゼとして生まれた文化っていうのもあるので。

だから、公共マナーという観点では、もちろん反感を買いやすい部分はあります。でも、それはそれで僕は面白いと思っていて。だから『ルールを守って』とはあまり言いたくなくて」

ーそれはなぜですか?

「たとえば学校で、『水筒の中身は水はいいけど、お茶はだめ』みたいな、『そのルールなんのためにあるの?』みたいなものって、たまにあるじゃないですか。たしかに黙って守っているほうが楽なんだけど、それに抗議することで、社会が面白くなることもあると思うんです。

ストリートアートのバンクシーじゃないけど、当たり前を壊す非常識な存在も必要だと僕は思っていて。だからこそ、ルールどうこうじゃなくて、『もしここでスケボーしたら、誰の迷惑になるかな』とか『どういう問題が起きるだろう』とかを、自分で考えて判断できるスケーターが増えればいいんじゃないかなって思います

ー社会とスケボーが共生するためにはどうすればいいと思いますか?

コミュニケーションをとることが大事だと思います。例えばスケートしているのがうるさいっていうのが問題だったら、住民とスケーターが直接話しあって『夜中やってたら迷惑だけど、昼前くらいだったらいいよね』とか、お互いの妥協点を見つければいいと思うんです。

でも日本では、そういうときに、警察が来て注意されるだけ。住民とスケーターのコミュニケーションが取れないまま終わってしまう。それじゃあ根本的な解決にはなってないんですよね

そう考えるに至ったのは、海外での生活経験や中高時代の教育も影響してるんですか?

「それもあると思います。ドイツの学校にいたときは、ディベートをよくしていたんです。でも日本に来たら、AかBか決めるときに、議論をあまりしないで、ジャンケンとか多数決で決める場面がすごく多いなって思って。

それって一見すると公平に見えるし、プロセスとしてはすごく楽なんだけど、話し合いのスキルが落ちるんじゃないかな。AかBで物事を決めるんじゃなくて、話し合って選択肢を増やすことに価値があると思うんですよね

SkateAidを通してスケボーのイメージを変える

海外での活動についても聞かせてください。そもそも世界に目を向けるようになったのはなぜですか?

「もともと中高時代の友達と、東南アジア旅行を計画していて。『そこにスケボー持ってったら面白いかも!』みたいな思いつきから、東南アジアの子どもたちにスケボーを届ける『Skate Aid』の活動がはじまりました。

学校に馴染めなかった僕がスケボーに救われたように、子どもたちにもなんらかのきっかけを与えられればと思って活動しています。それと同時に、『日本でのスケボーのイメージを変える』っていう大きな目的もあって。

スケボーと社会問題を絡めることで、スケボーに対して悪いイメージを持っている人たちの意識を変えられるかもしれないし、スケボーが秘めてるポテンシャルを、より多くの人に知ってもらえると思うんです」

ー活動をしてみて、手応えはいかがですか?

「正直なところ、海外でスケボーを広める動画がYouTubeでめっちゃ再生されるわけではないんですよ。でもスケボーに興味なかった人とか、活動をサポートしたいって言ってくれる人から連絡が来たりするから、響く人にはちゃんと響いているんだと思います」

ーSHIMONさんの今後のビジョンは?

僕のビジョンはそんなに壮大なものじゃなくて、『10人くらいの仲間たちとスケートパークを作って、毎日スケボーして楽しく過ごしたい』くらいなんです。でも日本だと、スケーターはスポンサーとの交渉力も弱いし、収入源が少ないので、スケボー一本で生きていくってすごく難しいんですよね」

岩澤さんのオリジナルアパレルブランド『SHIMON』も好調だそう。

ーその問題を解決するためにも、『スケボーのイメージを変える』ことはたしかに必要なんですね。

「だからこそ、自分たちが起こしたアクションをYouTubeで配信したり、ある程度配信力のある僕だからこそ、できることに日々励んでます。

たとえ僕ひとりだけがビジネスでめちゃくちゃ成功しても、まわりの仲間とライフスタイルが変わってしまったら楽しくないと思うんです。だから僕の居るフィールド、スケボーシーン自体の地位を上げることが、いちばん幸福度を上げることにつながるんじゃないかなと思っています

岩澤史文プロフィール

いわさわしもん●1998年生まれ。大阪府出身。ハンガリー、ドイツ、日本育ち。中央大学商学部卒。プロスケーター 。YouTuberとして『MDAskater』を運営し、スケーターのライフスタイルや東南アジアにスケボーを広めるプロジェクト『SkateAid』での活動を配信。オリジナルアパレルブランド『SHIMON』も運営している。

Photo:Goku Noguchi
Text:Yui Kato

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