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信条“愛とパンク”のルーツ。辻愛沙子が10代でハマった「カルチャーの二大巨塔」を語る

信条“愛とパンク”のルーツ。辻愛沙子が10代でハマった「カルチャーの二大巨塔」を語る

前回のインタビューでは、中学時代に単身で飛び込んだスイスでの学びや経験について語ってくれた辻愛沙子さん(26)。

「国際情勢が友人関係に影響する環境」海外ドラマに憧れ飛び込んだスイスでの中学時代に社会派クリエイティブディレクター・辻愛沙子の原点あり
「国際情勢が友人関係に影響する環境」海外ドラマに憧れ飛び込んだスイスでの中学時代に社会派クリエイティブディレクター・辻愛沙子の原点あり
「あの人に聞く“私の10代”」。今回のゲストは、社会派クリエイティブディレクター・辻愛沙子さん(26)。 社会課題をクリエイティブの力で解決する会社「arca」を24歳で立ち上げた一方、日本テレビ「news zero」に […]
https://steenz.jp/8808/

2回目となる今回は、クリエイティブディレクターとして活躍する現在につながる、10代のころの「インプットとアウトプット」をうかがった。

辻愛沙子(つじあさこ)。1995年生まれ。慶應義塾大学在学中、インターン先に2週間で入社。その後、株式会社arcaを設立し、「社会派クリエイティブ」を掲げ「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」を軸に、広告から商品プロデュースまで手掛けている。
Twitter:@ai_1124at_Instagram:@ai1124arca

信条「愛とパンク」の原点は、AMOとミッシェル・ガン・エレファント

上品さとパンクさ……一見すると相反するこのふたつのバランスが、仕事における表現、また自らのファッションにおいても大切だと話す辻さん。代表を務める会社「arca」のステートメントにも、「愛とパンクが未来をつくる。」と掲げられているが、このキーワードとの出会いも10代にあった。

社会人になったいまも、髪色をピンクや紫にしていることが多いんですけど、これは高校時代からなんです。影響を受けたのはファッションモデルのAMOちゃん。高校時代はアメリカにいましたが、バリバリの原宿カルチャーが由来です(笑)。高い送料を払って、雑誌の『Zipper』を取り寄せて、スクラップしていました。ピアスを空けたのもそのころですね」

一度好きになると、どこまでも深くハマる性格。そう自己分析をする辻さんは、「10代のころに好きだったものは、大人になってからのアウトプットにも大きく影響している」と話す。

「好きなファッションや音楽は、10代のころからあまり変わっていません。私のルーツの二大巨頭と言えるのは、AMOちゃん、そしてロックバンドのミッシェル・ガン・エレファント。一見するとまったく別のカルチャーに思えるかもしれませんが、『上品さとパンクの融合』が、私としては共通していると思っていて。

もちろん当時は、そこに惹かれていたわけではなくて、後から整理して『自分の好きな世界観』の軸が見えてきたというか。自分のアウトプットにこの要素が出てきたのも、仕事を始めてからだと思います」

ちなみに、10代のころに触れたカルチャーの影響は、こんなところにも。

「F・スコット・フィッツジェラルドが書いた小説『華麗なるギャツビー』を、当時から繰り返し読んでいます。村上春樹さんの翻訳版も好きなのですが、原文もとても美しくて。昔の英語なので難しいのですが、辞書を片手に読むんです。arcaのステートメントの最後にある、『絶え間なく押し戻されようとも』という言葉は、『華麗なるギャツビー』から引用しているんですよ

世界から社会課題がなくなったなら、自由に絵を描きまくりたい

中学・高校時代、グローバルな環境に身を置いて、広い視野で世界を眺める一方、「ひとりの時間」も大切にし、ファッションや音楽、アートと、さまざまな文化に触れていた辻さん。「中学時代はインプットが多かったけれど、高校からはアウトプットに転じた」と話す。

中学のとき、ピアノが置いてある教室があって、その教室に『ここに住んでるの?』っていうくらいずっとこもってピアノを弾いていたんです。高校になってからは作曲もするようになって。バンドもやっていたので、アウトプットを人に見てもらう機会が増えていきました。

絵を描くのも好きで、異常な数のボールペン画を描いてました。グラフィティにハマっていたときは、寮でみんなが寝静まってから、巨大なキャンバスに夜通しスプレーアートを描いていましたね」

膨大なインプットを経たあとに湧き上がってきた、アウトプットへの情熱。それは一体、どこからきているのだろうか?

「どうしてそんな尋常じゃない数の絵を描いたのか、正直なところ、自分でもわからないんです。きっと、何かを残したかったんじゃないかな……。

絵を描いていた経験は、いまのクリエイティブに関わる仕事に通じていると思います。いまの仕事は、クライアントさんにも、周りの方たちにも恵まれて、本当にやりがいがあるんです。私は社会課題に向き合うクリエイターだという自負があるので、自分の作ったものが社会課題の解決のきっかけのひとつになることはすごく嬉しい。

でも本音を言うと、時々、仕事とは関係のない自由な絵を描きたいなと思うことがあります。だけど、今はまだ目の前に、ぶち壊さないといけない社会の課題がありすぎるくらいあるので……。もしも、差別も戦争も社会課題もない、超ピースフルな世界になったら、私はひたすら部屋にこもって、絵を描くと思います

スマホをスクロールするだけでなく、「オタクみ」のあるインプットを!

高校時代から今日に至るまで、鋭意アウトプットを続けている辻さんだが、いまの10代に対しては「インプットの重要性を改めて知ってもらいたい」と話す。

「ちょっと説教くさいかもしれないけど、10代の方たちには、スマホに流れてくるような、短時間で消化できる情報ばかりを眺めるだけじゃなくて、ひとつの物事を時間をかけてしつこく深掘るような、“オタク”みのあるインプットをしてほしいと思います。そこで得たものと、今の時代や自分たちの世代ならではの感覚を掛け合わせることで、可能性が大きく広がるはずだから」

オタクみのあるインプットの魅力とは、どんなものなのだろう。

好きな小説や映画、音楽をひとつ見つけたら、そこから芋づる式に、いろんな文化を広く深く知ることができます。たとえば『華麗なるギャツビー』だと、男性がピンクのスーツを着ているシーンがある。『男性がピンク』と気になって調べてみると、ピンクって昔は男の人の色だったそうなんです。そこから『時代ごとのジェンダーカラー』も気になって深掘りして調べているうちに、色の歴史の全体像までわかっていく。

物事の歴史には、社会情勢的な背景やビジネス的な背景などが隠れているんです。自分の好きなものを出発点にして深く掘り下げていくと、難しいことでも楽しく学べるんですよ」

さらに、将来クリエイティブな仕事をしたいと思っている10代の人にとっては、インプットがより重要になるとのこと。

「もしもクリエイティブに関わることをしていきたいのであれば、リファレンス(参考資料)を多く持っていることは、大きな武器になります。たとえば打ち合わせで『この撮影のライティングどうします?』と聞かれたときに『あの映画の、あのシーンの、あの光の入れ方をやりたいです』って言えると、共通のイメージを持ちやすくなることも多いんです。若い感性と時間があるうちに、ぜひ自分の中の引き出しを増やしてほしいなと思います」

10代のころのインプット・アウトプットを振り返り、その大切さを教えてくれた辻さん。次回は大学、仕事、そして人生について、話を聞きます。

Photo:Aoi
Text:Ayuka Moriya
Edit:Takeshi Koh

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Ayuka Moriya

エディター

1999年生まれ、秋田県出身。東京外国語大学 国際社会学部在学時よりライター・エディターとして主にインタビュー記事の執筆、ディレクションに携わる。Steenzでは、2021年ローンチ当初より「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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