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海外の性教育の衝撃。あえて「茨の道」を進む大学生起業家・江連千佳が10代に伝えたいこと

海外の性教育の衝撃。あえて「茨の道」を進む大学生起業家・江連千佳が10代に伝えたいこと

前回のインタビュー「『偏差値社会に反抗』大学生起業家・江連えづれ千佳がテストを白紙で出した10代を回想」では、苦悩と葛藤に満ちた中高生時代に迫った。ここからは「次の時代を生きる女性たちへ“わたし”らしくある自由を届ける」ことを目標に会社経営をする江連さんに、彼女を起業の道に導いた、10代での出会いについて、話を聞かせてもらった。

江連千佳。株式会社Essay代表取締役社長。2000年生まれ。大学在学中に起業して開発した、“ノーパンでいられる部屋着”『おかえりショーツ』が現在、大きな反響を得ている。

1. 衝撃的だったニュージーランドの性教育

有名進学校に通いながら「偏差値社会への違和感」から、テストを白紙で出すなど、葛藤していた江連さん。17歳のときに「日本以外の社会を見てみたい」と、ニュージーランドへ留学をした。そこで大きなカルチャーショックを受けたという。

「ニュージーランドの性教育の授業は、ホントすごいですよ。教室には、避妊具を装着する実習のために、男性器のリアルな模型が置いてあるし、ほかにもミレーナ、ピル…と、ひと通り道具が用意されている。それを手に取りながら、先生がどんなのを使っているかとか、『これは使ったことがある。これはない』とか…、そんな赤裸々な会話が飛び交っているんです。

性交渉や体のこと以外にも、セクシュアルマイノリティの話をする時間もたくさんありました。『あなたはレズビアン』『あなたはゲイ』と…さまざまなセクシュアリティの書かれたカードが配られて、先生の質問に対して、当事者の気持ちになって考えるんです。そういう授業がとても衝撃的で」

また、学校の外でも驚きの連続だったという。

「現地の友達と映画館で待ち合わせしたら、女性をふたりを連れてきて『私のお母さんたち!』って紹介してくれたんです。彼女の両親は、レズビアンのカップルだったんです。

他にも、当時のニュージーランドの女性首相が、在職中に産休を取得したんですけど、社会はとても寛容的で。きっと日本だったら、バッシングを受けるんだろうなって思いました。自然とそう考えてしまうような環境で育ったことが悲しくなったし、日本って、全然完璧な国じゃないということを痛感しました」

2. 親の期待に背いても貫いた、学びへの想い

日本に帰国すると、いよいよ受験期に。その頃には合格を狙える学力を得ていたため、周囲からは「東大に行くべき」というプレッシャーがあったという。しかし江連さんは、「ジェンダーの問題の解決策を思考できる大学に行きたい」という思いを抱えていた。家族や学校からの強い説得もあったが、決め手となったのは、ふたつの言葉だった。

「社会学者・苅谷剛彦先生の『大学に入るということは、膨大な図書館にある本の中の1冊の次の1ページをつくることだよ』という言葉を聞いて、私は『それならジェンダーという学問の新しい1ページをつくりたい』と思ったんです。

それともうひとつ、通っていた心療内科の先生からの言葉が、背中を押してくれました。『君が行こうとしているのは茨の道。周囲が良いという道のほうが楽だけど、君は、茨の道を進む覚悟はあるの?』

そう聞かれたとき、単純ですけど『あ、覚悟すればいいのか』って気付いたんです。茨の道でもいいから、自分の生きたいように生きたい。自分の人生、自分に責任があるから、覚悟しちゃえば、他人にとやかく言われる筋合いはないんだって」

高校時代に与えられたこれらの言葉には、その後、起業をして、休学を決断する際にも支えられたと話す。さらに最近では、江連さんの活動にこれまであまり口出しをしてこなかった父親からも、心強い言葉をかけてもらったという。

「事業について、大勢の前でプレゼンする機会があったんです。会社を経営するうえで大切になる賞金も懸かっている中で、『自分が思っていることを言べきか、万人受けすることを言うべきか』と迷ってしまったんです。すると父から『思ったことを言えないんだったら、休学した意味がないだろう』って。『起業を心配していたパパも、私の生き方を応援してくれているんだ』って思って、とても嬉しかった。その言葉のおかげで、納得のいくスピーチができました」

3.「10代から婦人科に行きたまえ!」

そんな江連さんは、現在21歳。自身も2年前までは10代だった。最後に、改めて10代に伝えたいことを聞いてみると『そんなに年も変わらないので、偉そうなことは言えませんが…』としながら、こんなメッセージを残してくれた。

「『10代から婦人科に行きたまえ!』ですかね。体の相談って、家族や友達にもしづらいし、抱え込みがちですよね。でも、『10代だから大丈夫』なんてことはまったくないんです。私自身、高校時代から子宮内膜症、子宮腺筋症などになって、治療をしてきました。今の貴重な時間に、自分がやりたいことに集中するためにも、少しでも不安があったら気軽に婦人科に行ってほしいです。

あと、体だけじゃなく、心についても同じで、病院に行くことの抵抗をなくしてほしいなと思います。他の先進国では、信頼できるカウンセラーを持つのは当たり前のこと。わたしもずっと通ってるのですが、臨床心理士のカウンセリングはマジでオススメです。家族にも言えないことや恋愛の話、日常の愚痴、なんでも聞いてくれます。守秘義務があるから、安心して話せますし」

そして最後に、いまを生きる10代を分析し、こんな言葉も。

「私たちZ世代は、社会に貢献したいっていう意識が総じて高いと思います。人に優しくしたいし、社会をより良く変えたい。でも、自分が満たされていないと、他の誰かや社会を幸せになんか、絶対にできない。だって、自分も社会の一部なんだから。

だから、この記事を読んでくださった10代の方々には、まずは自分の体や心を良い状態にしてあげたうえで、人生の選択や挑戦をしてほしいと感じます」

今後は「大学で学んでいるデータサイエンスを大学院で極めて、そこで発見した社会課題に対する解決策をビジネスの形で提示したい」と展望を語る江連さん。「次の時代を生きる女性たちへ“わたし”らしくある自由を届ける」彼女の表現は、まだ始まったばかりだ。

★「おかえりショーツ」公式サイト

Photo:Aoi
Text:Ayuka Moriya
Edit:Takeshi Koh

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Ayuka Moriya

エディター

1999年生まれ、秋田県出身。東京外国語大学 国際社会学部在学時よりライター・エディターとして主にインタビュー記事の執筆、ディレクションに携わる。Steenzでは、2021年ローンチ当初より「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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