
フランスでは、10月後半に「諸聖人の日休み(Vacances de la Toussaint)」というものがあり、1〜2週間ほどの休暇があります。ただ、休暇明けには試験が多く控えていたので、旅行に行く余裕もなく「家で過ごすか……」と思っていたところ、友人が「実家へ帰省するから一緒に来て、勉強会でもしよう」と誘ってくれました。
友人の実家はフランス北部・ノルマンディー地方のカーン(Caen)という街。パリから電車で約3時間です。
くつろぎのプロ

今回は友達のご家族(お父さん・お母さん・妹さん)と、1週間同じ家で生活させてもらいました。わたしは海外に行く際、ホームステイをよくしていて、誰かのお家で日常を共にするのがたまらなく好きです。何日間か衣食住をともにしているうちに、その家庭の朝のルーティーンとか、ソファーで食後にうたた寝したりとか、そんな彼らがいつもやっている何気ないことをちょっとずつ真似っこします。すると、ホームステイをするたびに、新しい家族ができたような気持ちになるんです。
パリではひとり暮らしをしているので、久しぶりの家族の温もりにほっこりしました。
フランス流の夜の楽しみ方

友達の家にお邪魔したのはちょうどハロウィンの時期だったので、家族みんなで仮装をすることになりました。友人からはだいぶ攻めた仮装を勧められたのですが、勇気が出ず、無難にハリーポッター風の仮装にしました。
そのあとは友人の親戚の家を回りつつ、途中のカフェバーで一杯。家に戻ってホラー映画を観ながら、フランスの名物(?)ファストフード「タコス(TACOS)」を食べました。タコスといってもわたしたちがイメージするメキシコのタコスとは全く違って、フライドポテトとチキンと大量のチーズをサラダラップで包んだ、夜遅くに食べるには、なんともギルティな一品です。

その夜はホームステイさせてもらっている友達とその友達と、そのまた友達まで集まり、ダラダラと10人くらいで映画を観続けながら雑魚寝をしました。
魅惑の?!シンハラ文字

冒頭で「休暇明けに試験がある」と書きましたが、このバカンス中の大きな課題が、シンハラ文字を全部覚えることでした。今学期履修している言語のひとつ、スリランカで話される言語です。
シンハラ語の最大の魅力は、なんと言っても文字。初めてスリランカへ行ったとき、ホームステイ先のお父さんが読んでいた新聞が、丸っこくて、くねくねしていて、まるで“音が視覚化されたような”シンハラ文字でびっしりと埋め尽くされていて──そのあまりの魅惑っぷりに、わたしは大量の新聞を日本に持ち帰ってしまったほどです。
バカンス期間中は、毎日20文字ずつのんびり覚えていきました。最初はただの“かわいい模様”にしか見えなかった文字が、ひとつひとつの音と一致して、意味を持ちはじめていく。その瞬間がとても楽しくてワクワクします。とは言っても、新しい文字を覚えるのはなかなかタフで小学生の漢字練習帳のように何度もノートに書いて地道に覚えていきます。
ちなみにこの丸みを帯びた独特の書体は、かつて椰子(ヤシ)の葉に文字を書いていた名残だと言われています。葉が割れてしまわないように、直線よりも曲線が多い書体になったのだそうです。
今日の言語
シンハラ語
国・地域:スリランカ(アジア)
話者数:約1550万人

シンハラ語には、象の種類を細かく呼び分ける語彙があります。
牙がある象、オスの象、メスの象はすべて別の単語で、それぞれ使い分けています。
全部日本語に翻訳したらただの「象」ですが、象をここまで細かく言い分けることができるシンハラ語は、まさにスリランカでの生活や象を大切にする文化が投影されています。
象(総称)අලියා(アリヤー)
牙のあるオスදළයා(ダラヤー)
メスの象 ඇතිනී/ඇතින්න(エティニー/エティンナ)
子象 ඇත්පැටියා (エトゥ・ペティヤー) /口語では අලි පැටියා (アリ・ペティヤー)
巴山未麗(Mirei)のプロフィール
東京都出身。フランス・パリの言語大学に留学中の大学4年生。言語がとにかく大好きで、留学先の大学ではウォロフ語を専攻する他、ビスマラ語、マラガシ語、シンハラ語なども学んでいる。






