
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日はWWFジャパンによる野生動物カフェの調査についてご紹介します。
野生動物カフェに問題が?
近年、日本国内で増えつつある、野生動物と触れ合えるカフェ。ヘビやカワウソ、フクロウなど、動物園などで見ることしかできないような動物に触れたり、餌をやったりできる距離の近さが人気だそうです。
しかし、そうした野生動物カフェにおける衛生面や安全面に警鐘を鳴らす調査が、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)と、北海道大学獣医学研究院 石塚真由美教授によって報告されています。

犬カフェや猫カフェとは違った問題があると指摘する報告書『野生動物との触れ合いの現在地:野生動物を扱うアニマルカフェのリスク緊急評価―ワンヘルスの観点から野生動物との触れ合いを考える―』。内容を見ていきましょう。
野生動物と触れ合うリスク
ウシやブタ、イヌ、ネコなどの動物は古くから人に飼育され、交配や品種改良を経て家畜化されてきた歴史があります。一方で、野生動物は、そうした家畜化された動物とは異なり、触れ合うことに一定のリスクがあります。例えば、コツメカワウソやフクロウなどは肉食の動物です。鋭いつめや歯、嘴を持っているため、引っかかれたり噛まれたりすることは十分に考えられます。
今回の調査では、正しい触れ合い方と傷害のリスクについて説明を実施している施設は48%にとどまり、半数の施設が実施していないことが明らかになりました。
WWFジャパンは北海道大学と共同で、野生動物を扱うアニマルカフェ(野生動物カフェ)にどのようなリスクが潜んでいるのか探る緊急評価調査を実施しました。https://t.co/zWgZ7f7IyW
— WWFジャパン (@WWFJapan) October 4, 2025
また、感染のリスクも見過ごせません。人と動物、相互の衛生を保つために入退店時の両方で手洗いや消毒液の使用が望まれますが、退店時にそうした行動を促す施設は半数にとどまっているのだそう。
「でも、飼育されている動物は衛生的なのでは?」という疑問も湧くでしょう。本調査では、野生動物カフェで飼育されている動物から実際に菌を採取。培養し、動物が保有する菌を調べています。

そこでは、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌などが検出されています。腸管出血性大腸菌は、腎臓や血液に障害を与える溶血性尿毒症候群を引き起こすことがあるため、命に関わることがあります。退店した時はもちろん、カフェエリアで飲食する場合にも必ず手を洗う必要があると言えるでしょう。
絶滅の危機にある動物が扱われている可能性も
調査によると、絶滅の危機にある動物が扱われている店舗もあったそうです。
国際的な野生動物の生物多様性の指標である国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストは、法的な根拠はありませんが、種の保存法における「国内希少野生動植物種」を指定するときに参考にされる重要なリストです。野生動物カフェで展示されている個体のうち、IUCNレッドリストで絶滅のおそれがあるとされる種類(CR、EN、VU)の動物は31種(15%)になりました。
野生動物のペット利用について、ヤマザキ動物看護大学の学生と共同でイラストを制作しました。第一弾はコツメカワウソ🦦カワいいコツメカワウソの、カワいくない真実とは?👀
イラスト:ぬまがさワタリさん(@numagasa)
もっと詳しく知りたい方はコチラもチェック👇 https://t.co/wjKSAVnPWa pic.twitter.com/P4R1FDNFJG
— WWFジャパン (@WWFJapan) October 10, 2025
また、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」に掲載されている種類は、131分類群(1目、3属、127種)(64%)に上りました。人気のコツメカワウソや、フクロウやオウムなどの鳥類、クレステッドゲッコーなどの両生類がこうしたリストの中に入っています。
これらすべてが違法というわけではなく、国内で繁殖された個体などでは法的に取引や展示が許可されている場合もあります。しかし、個体がどこから来たのかについては不明であるとしている施設が32%、野生捕獲が3%含まれていました。流通経路が不明確なままでは、野生個体の乱獲や密輸の一因になりかねません。適切な対処が望まれます。
韓国では全面禁止に。まだある野生動物カフェの問題
韓国では、国内すべての野生動物カフェの営業を禁止とすることが2022年に決まりました。それらの施設で飼育されている動物は、数年の猶予期間の後に、政府が保護するという条件もついています。これは飼育個体が野外へ放たれた場合の影響が大きすぎるための措置です。
日本国内の野生動物カフェにおいても安全性や、本来の生息地とかけ離れた状態で飼育される動物たちの健康状態に懸念を示す声もあります。リスクを知って、適切な利用を心がけたいですね。
Reference:
WWFジャパン 『野生動物との触れ合いの現在地:野生動物を扱うアニマルカフェのリスク緊急評価―ワンヘルスの観点から野生動物との触れ合いを考える―』
WWFジャパン 韓国で「野生動物カフェ」が全面禁止に!
Text:Itsuki Tanaka






