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10 人にひとりの子どもが「肥満」。世界の最新栄養状況【Steenz Breaking News】

10 人にひとりの子どもが「肥満」。世界の最新栄養状況【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、世界の栄養状況に関するユニセフの最新レポートをご紹介します。

生まれた場所に左右される子どもと食事の環境

日本は自給率が低いと言われがちですが、さまざまな食べものを育てたり、獲ったりすることができ、それを調理し、食べることが一般の家庭にも普及しています。

しかし、世界ではさまざまな理由で自給できなかったり、急速な食習慣の変化によって、子どもの栄養状況が悪くなっているという報告が、2025年9月にUNICEF(UNICEF:国際連合児童基金)からされました。今日は、この報告を見ていきましょう。

「栄養状況が悪い」と肥満になる! 世界の子どもの現状とは?

「子どもの栄養報告書2025 ~利益優先の食環境が子どもたちに与える悪影響」と題したこの報告によると、栄養不良の形態として今年、肥満が低体重を上回ったのだそう。2000年以降の世界では、5歳から19歳までの低体重の割合は約13%から9.2%に低下しています。

一方で、肥満の割合は3%から9.4%に増加しているのだそう。サハラ以南のアフリカや南アジアを除く世界のすべての地域で、低体重率より肥満率が高い状況にあることが報告されました。「栄養状態が悪い」という言葉からは、痩せた状態を思い浮かべる人も多いはず。一体、どういった状態なのでしょうか。

エルビルの難民キャンプ内にある商店の前で、陳列されているポテトチップスの袋を見つめる男の子(イラク、2024年3月5日撮影) © UNICEF/UNI621620/Rai – Highway Child

この背景には、伝統的な食生活から、安価で高カロリーな輸入食品中心の食生活への変化があります。

特に深刻なのは太平洋の島々の国で、ニウエやクック諸島、ナウルなどでは5歳から19歳までの3割を超える子どもが肥満であるとされています。こうした小さな島国では食物の生産ができず、その大半を輸入に頼らざるを得ません。

バニにあるカフェで、ファストフードのデジタル広告を見る10代の若者たち(ドミニカ共和国、2023年6月19日撮影) © UNICEF/UNI512396/Schear – Highway Child

そのため、砂糖や精製されたでんぷん、塩分、不健康な脂肪、添加物を多く含む「超加工食品」やファストフードしか手に入らない状況になっているのです。そこに食品・飲料業界によるデジタルマーケティングの強力な影響があると報告されています。

肥満が引き起こすリスクとは?

子どものうちから肥満になってしまうと、インスリン抵抗性や高血圧のリスクが高まります。将来的には2型糖尿病や心血管疾患、特定のがんなど、深刻な病気にかかる可能性も高まります。

そして、これは子ども自身だけの問題でもありません。ペルーでは肥満関連の健康問題による損失が2,100億米ドルを超えると試算されているのだそう。さらに2035年までの肥満と過体重による世界全体の経済的損失は、年間4兆米ドルを超えるとも予測されています。

ミクロネシア連邦ポンペイの食料品店で買い物をする人々(クロネシア連邦ポンペイ、2023年8月22日撮影)© UNICEF/UNI522018/San Diego – Highway Child

また、栄養状態が悪いのは貧困国だけの問題ではありません。高所得国であるチリやアメリカ合衆国、アラブ首長国連邦でも、5歳から19歳まで肥満率が2割以上と高い水準にあると指摘されています。

深刻な栄養状況の悪化。対策は?

イダルゴ州にある青少年保健センターで、過体重を予防するためのプログラムに参加する若者たち(メキシコ、2024年11月19日撮影) © UNICEF/UNI690720/Luna

メキシコでは10代の子ども・若者の肥満の割合が高く、砂糖入り飲料や超加工食品が子どもの1日の摂取カロリーの40%を占めていることがわかっています。それを問題視した政府は、公立学校において超加工食品および塩分、糖分、脂肪分の多い食品の販売と配布を禁止しました。この措置により、3,400万人以上の子どもの食環境は改善に向かっているのだそう。

ユニセフは、子どもが栄養価の高い食事を取ることができるように、食品表示や販促の規制や、学校で食品業界による販促を行わないようにすること、また、貧困家庭が栄養価の高い食事を入手しやすくなるようにすることなどを、政府、市民社会、パートナーに求めています。

よりよい食環境を整えるために

日本では家庭での食育の他に、小学校から高校に至るまでに、家庭科の授業があり、健康的な食事に関する知識を知ることができます。そうした知識を生かして、正しい食習慣を身に着けることは、社会的にも意義があると言えるのでしょう。

楽しくおいしい食事を取ることは、心に豊かさをもたらしますが、それが体に悪いものとなってしまっては本末転倒。正しい知識と一定の制限によって、子どもたちの健康が守られていくことが期待されます。

Reference:
UNICEF Feeding Profit:How food environments are failing children.

Text:Itsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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