Steenz Breaking News

アフリカで深刻化する密猟問題。野生動物を守るために放射性物質の活用も【Steenz Breaking News】

アフリカで深刻化する密猟問題。野生動物を守るために放射性物質の活用も【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカで密猟者に起きている超法規的殺人と、密猟を防ぐための取り組みについて紹介します。

世界で最も儲かる違法ビジネスのひとつは野生動物!?

アフリカで野生動物の密猟は大きな問題となっています。2025年に発表されたICUNのレッドリストによると哺乳類や鳥類含む約1万8千種の動物が絶滅のおそれが高いとみなされており、被害の大きい東アフリカのケニアとタンザニアでは2013年に野生生物保護法が、ウガンダでは2014年に国家野生動物政策が制定されるなど、アフリカ諸国の政府は密猟に関する取り締まりを強化してきました。

さまざまな野生動物が、装飾品や薬、食料、ペットなど多様な目的のために高額で取引されており、そのうちの多くは国際犯罪組織が関わっています。国連は世界の違法な取引のうち、野生動物は年間1兆円〜3.3兆円と、薬物と武器に次ぐ収益性の高い犯罪であるとしています。

レンジャーによる密猟者の殺害も課題に

アフリカ諸国の政府としても、野生動物を観察するサファリツアーなどの観光業から多額の利益を得ていることから、国立公園では野生動物の保護を専門とするレンジャーを雇っています。2024年、ウガンダ野生動物局(UWA)は、国内の主要な国立公園に不法に入った2,145人を逮捕し起訴しました。加えて、10,190種類の野生動物および野生動物製品と30,578の密猟の道具を回収しました。

しかし、密猟者の取り締まりが厳しくなると同時に、レンジャーによる密猟者への超法規的殺人が問題となっています。超法規的殺人とは、政府当局による、軍事および警察活動以外の、司法または法的手続きを踏まない殺人のこと。つまり、レンジャーが国立公園で発見した密猟者を逮捕するのではなく、殺してしまうケースが多発しているのです。

2022年5月には、国立公園で銃撃戦が起き、レンジャーと密猟者合わせて26人が死亡しました。その他にも、ウガンダ国内の国立公園でレンジャーによる密猟者の殺人事件が絶えません。

密猟者は銃を持っている場合もあるため、逮捕が困難となっています。しかし、中には、国際的な犯罪組織に売るのではなく、銃で武装をしておらず、槍や罠で野生動物を狩って、自分たちで食べたり、ローカルのマーケットで売ったりすることを目的とするハンターもいます。加えて、レンジャーによる密猟者の超法規的殺人を野生動物による攻撃だと証拠隠滅しているという報道もあり、さらなる調査が求められています。

動物に放射線物質を注入?

そんな中、南アフリカでの密猟者を取り締まる新たな取り組みが話題になっています。

世界のサイのほとんどが南アフリカに生息していると言われています。一方で、密猟によって最も打撃を受けた国でもあり、2013年から2017年の間に毎年1,000匹以上のサイが殺されています。これは15時間に1頭が殺されているという計算になり、絶滅危惧種に指定されている種もあります。

近年の密猟者はサイを見つけると、銃などを使って動きを抑制し、その後、斧やチェーンソーなどを用いて顔の半分を切り落とし、角を取るのです。

 

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中国医学では、サイのツノが発熱や痛み、リウマチなどを治療するために使用され、また、ベトナムではパーティードラッグとして使用されているといいます。闇市場では1kgあたり800万円以上という超高額で売買されているため、国際的な犯罪組織の注目が集まるビジネスなのです。

こうしたサイの密猟を防ぐために始まったのが、なんと、ツノに放射線物質を注入するという取り組みです。サイにとっては無害とのことですが、世界中の空港や国境検問所に設置されている既存の放射線探知機を通じて、サイのツノを追跡可能にするのです。さらに、南アフリカでは放射性物質の所持は国家に対する犯罪であり、密猟者は厳しい罰則を与えられます。

放射性物質の注入は5年に1回であり、動物の負担も少ないと考えられています。

他にも野営動物を保護する動きとしては以前、Steenz Breaking Newsで取り上げた、ジンバブエで野生動物を守る、女性だけのレンジャー部隊「アカシンガ」といった取り組みもあります。

密猟は現地の人にとって多額の収益を得る機会であり、国際犯罪組織は若者を中心に密猟者として雇っているケースもあります。そして、密猟への取り締まりが強化されるとともに、密猟をしている国際犯罪組織も密輸するために使用する方法や貿易ルート、隠蔽技術も進化してきました。一方で、野生動物保護に取り組むNGOとレンジャーが連携して密猟を防ぐ成功例も増えているとのこと。今後も、彼らの活動に注目です。

References:
【2025更新】レッドリストとは? |WWFジャパン
Unesco「World Heritage and Biodiversity」
CTPH「07 Jun The Pandemic Poachers」
MONITOR「Are local rangers killing in conservation’s name?」
SAVE THE RHINO「Poaching statistics」
IUCN「FACTS AND FICTION:THE RHINO HORN TRADE」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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